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全景千原008

答えは外側の世界にあるキラキラしたものではなく、内側の世界に光り輝くもの。自分というフィルターを通した宇宙。オリジナリティは、自分が歩んできた日々の蓄積の中で生まれる。

千原徹也のアイデアはこのようにして形になる。

自分の中から出す

千原
例えば、「次の広告、イラストレーターを起用したい」という依頼が来た時に、みんなでアイデアを出し合ったりします。すると、普通の人はイラストレーションブックを引っ張り出して、コンセプトに合いそうな人がいたら付箋を貼って「この人どうでしょう?」という提案をする。そのような探し方では、いつまで経っても他の人と違う「良いアイデア」は出てこない。本を眺めながら付箋を貼るのは誰でもできる。本業ではない営業の人だってやっていることです。デザイナーはアイデアを仕事にしているわけだから、そのような瞬間がいつ訪れても良いように日々ストックしていなきゃいけない。

「アイデアは自分の中から出せ」

プライドを持って、自分がおもしろいと思ったものを引き出さないといけない。先ほどのイラストレーターの例えでいうと僕だったら、自分の好きなイラストから発想を飛ばします。それが広告ではなくても、CDジャケットだったり、海外の美術館に飾っている絵画だったり、自分の記憶の中にある好きな絵を引き出して、そこから考える。広告のコンセプトに沿うものを探すのではなく、「自分が良い」と思ったものに照準を合わせていく。

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脱ルール

千原
ルールがあるものでも、元々はルールなんて存在していなかったんですよ。ルールはいつも後から追いかけてくる。だからルールに則って仕事をすることはその地点で可能性に限界が決まっていて、結果的には間違いです。

サッカーでも最初は〝オフサイド〟はなかったはずです。ボールを蹴っているだけではおもしろくないからラインを引いてゴールを決めた。人数を増やしたり減らしたりしていく中で11人がベストだとどこかの地点で気付いたのでしょう。「じゃあ、一番後ろのキーパーだけは手を使っていいことにしよう」とか。試行錯誤の中で、バラバラだった秩序を整理していって今のルールになった。でも、根底は〝ボールを蹴って遊ぶ〟というところがスタートのはずで。それが「楽しかった」という気持ちが何より重要ですよね。

デザインでも、色校正、撮影方法、印刷屋さんとのやりとり…それらは全て、前にやってきた人の習慣からルールのようなものが生まれました。でも、根底にあるのは「良いデザインを世の中に送り出せばいい」ということです。その過程にはルールなんて必要ない。間違える人や自分で考えることができない人がいるからルールができてくる。

嶋津
社会の潤滑油としての役割ですね。

千原
ルールに則って物事を進めること(ただ言われた通りにやること)は脳みそをオフにしていることになります。まずは、そこから脱却しなければいけない。ルール通りの工程を踏んだとしても、そこに想いや意図が明確にあれば間違いはありません。その中で自分の方法を編み出して行き、リアレンジをしていけば、もっともっと良い方法は見つかるはずです。クリエイティブの上では、「いかにルールを破り、最高の答えを導き出すか」ということが課題ですね。

千原徹也の言葉。それは「意味」を指し示すものではなく、「体験」を指し示す。説明のための言葉ではなく、記憶の中で蘇った景色がそこに現れている。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。