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坂口恭平さんのキョーラジ

坂口恭平さんのキョーラジがおもしろい。

「キョーラジ」というのは、Xのスペースで開く恭平さんのラジオ。インターネットの宇宙に漂う星の数ほどあふれているコンテンツの中でいちばんおもしろんじゃないかな。と、思わせられるくらい楽しい。内容は、おしゃべりだったり、音楽だったり、執筆だったり、スケッチだったり、ダンスだったり、対話だったり、いろいろ。「つくる」とか「表現」の延長線上にある営みをライブとして体感できる。

恭平さんの本を読んだり、Xのポストに触れたり、声を聴いたりするほどに「つくる」と「生きる」と「祝福する」ぜんぶが一つの営みだと気付かされる。境界線がない。そういう一つの“生き方”という作品。

基本的には作業中のBGMで楽しませていただいているのだけど、タイミングが合った時に何度かご一緒にお話させてもらった。恭平さんとの対話をメモしておく。

坂口恭平さんとの対話

「びびったり、緊密したり、へりくだらないためのヒントは?」と恭平さんに訊いた。すると「自分に期待しない。自分を買い被らない。かといって、自分を卑下するわけでもなく。緊張するのは、自分を大きく見ていたり、見せようとしたりするからで。大したことない、と思えばいい」と答えてくれた。

あと、「どんな人の話を聴きたいですか?」と聞いたら恭平さんはこう答えた。「特に聴きたい人はいない。ただ、目の前にいる人と話しているだけ」。このことばにはしびれたね。

また別の日、恭平さんに「信頼」と「安心」について話を聴かせてもらった。信頼することが苦手な人が多いのは、信頼を受けて育てなかったから。それは仕方がなく、親もまた信頼を受けて育ってこれなかった。だから、信頼することも、信頼を受けることも上手じゃない。ただ、人から信頼されると自分を信頼できるようになる。「だから、こちらからまず相手を信頼する」と恭平さんは言った。信頼する力は誰もが持っている。ただ、方法がわからないだけ。いい話だった。

「信頼」や「安心」が基盤となり、そこから「仕事」という経済の話になる。仕事もまた人とのコミュニケーション。お金を稼ぐことは、自分の声を通すこと。これらはぜんぶつながっていて循環している。

またまた別の日、「運」についてどう捉えているか訊いてみた。恭平さんは「物量によってもたらされるものだ」と答えてくれた。質を高めるではなく、量を生み出すことで巡り合わせの機会を増やしてゆく。そして「運とは技術である」と断言した。運が目の前にあっても見過ごしたり、見落としたりしてしまう人がいる。運をきっちり捉えるためには、そこに気付ける目や耳を持つ必要がある。恭平さんにとって、絵を描く行為は、絵画の作品性を高めるよりも、絵画を通して生まれる物語に関心があるのだ。

絵画がどのように人の手に渡るのか、絵画によってどのようなコミュニケーションが起こるのか。そのアトランダムな何かと遭遇し、そこで工夫することが「運の技術を高めること」にもつながる。これはきっと、絵画だけでなく、音楽も書籍も洋服もすべて同じ。「つくる」の先に生まれる物語にダイブすることで、運を掴める目と耳、技術を養うのである。

一度に話すのは10分くらいだけれど、毎回興味深いことばが跳ねるように返ってくる。またタイミングが合えば、お話を聴きにいきたい。

みなさんもぜひ、坂口恭平さんの「キョーラジ」、チェックしてみてください。

歌もいいんだよなぁ。


「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。