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「コスパやタイパでは得られないもの」とは【#言語化れんしゅう】

「コスパやタイパでは得られないもの」について考えてみました。

無駄の中にこそヒントがあると思っています。作家の全集を読むことは時間的にも体力的にも費用対効果が悪い。でも、その一見無駄とも言える領域や運動の中に、その作家の音律や文脈を身を持って味わったり、捉えたりできるのです。要約を読んだからと言って、その本を読んだことにはならないのと同じで。全集を読まなければ獲得できない知覚や体験があります。また、コスパやタイパに染まってしまうと同じものしか生まれません。要は、誰もが同じ行為をするので、同じ結果しか生まれない。オリジナリティは無駄から生まれる。無駄の中から課題や財宝を発見できる。本当に価値のあるものは、コスパやタイパの外側にある場所に眠っているのだと思います。

嶋津(X)

これは、わたしの考える「コスパやタイパでは得られないもの」の印象。他の人はどういうことに「コスパやタイパでは得られないもの」と捉えているのかと思って、Xで問いかけてみました。

世の中では「コスパ」や「タイパ」を求める人が増えていると聞きます。効率を重きに考えると自然な流れだと思います。そこで質問です。

「コスパ」や「タイパ」では得られないものとは何でしょうか?

以下、届いたみなさんの「コスパやタイパでは得られないもの」をご紹介します。

みなさんのお答え

【1】

「無駄」の大切さ、でしょうか。 無駄や寄り道が多いほど、その人の引き出しが増える気がします。 また、作業でしかない事象であれば効率を優先する、などの使い分けも出来るようになります。

無駄、寄り道が引き出しの数となる。その引き出しや偏りがオリジナリティとなる。その感覚を獲得すれば、効率的なアプローチも精査できる。無駄を知ればこそ。いいなぁ。

【2】

人生を豊かにする色々。 水木先生の作品で、人生を味わうことをしない男は死の間際「幸せじゃなかった」とこぼす。それに妻は「あなたは幸福になる準備だけなさったのよ」と返す場面があり。 コスパタイパは、幸福になる準備や日々の雑務・情報収集を効率よくするためで人生を味わうことにはならないのでは。

人生を豊かに味わうことには、無駄や遊びや雑多な何かが必要で。それが幸福感にもつながっている。「幸せに生きるため」と考えるとまた人生の見方が変わっておもしろいですね。

【3】

魂の喜びです。 コスパタイパには「タマパ」の観点がごっそり抜けてる。「それって魂を削ってるよね?」みたいなものばかりだと感じます。

魂の喜びは、コスパ・タイパには得られない。意味や効果ばかりを追ってしまうと魂をおざなりにしてしまう。

【4】

「数であらわせないもの」「数えられないもの」「オリジナルなもの」かな。ぱっと思いつくものは、幸福・愛・ひとりの人間の生き様・こころの動き・美しさ・尊厳etc

数でははかれない、表現できない。幸福・愛・美しさ・生き様・尊厳・感情。非効率、不合理の中でオリジナルは形成されていきますもんね。

【5】

感動、心の栄養、自分の好みや自分自身を知る機会、こういったものは得られないと思います。時間をかけて身体に染み付いていく感覚や馴染んでいく喜びというのは、いずれは古い考え方になってしまうのでしょうか?

時間をかけて身体に染み込んでゆく感覚や喜び。心の栄養、感動。費用対効果だけを考えていては手に入らないもの。

【6】

試行錯誤の経験。 コスパ、ダイパは「なるべく少ない試行で正解に辿り着こう」という発想かと思うので。

試行錯誤の数は減りますよね。無駄な経験がなくなることは、「今、この瞬間」意味を感じることができない試行錯誤も消してしまう。

【7】

納得した満足度なのに得られないもの、過程までの、体験、経験、安心感。

「安心感」というのはおもしろいですね。プロセスの中で安心感までも省かれてしまう。

【8】

ゆっくり歩いたときに偶然知ることができる草花の名前。自分には必要がないと感じる存在とも自分は当然同居しているし、それらが自分にとって直接的な利益をもたらさなくても、ただ存在する他者に優しい眼差しを持つべき理由を知ることができる。これらはコスパやダイパでは得られないと思っています。

速度が出るあまりいろんなものが省かれてしまいますもんね。その省かれた内容成分の中には、価値があるものもあったりして。

【9】

コスパやタイパは、すぐに買い替え使うような物にはいいかもしれませんね。ただ経験には笑って何食わぬ顔でいても、そこに到達するまでに何度も膝をつきかけた壁に埋もれた、その後の到達って美味いんですよね。たとえ、しくじったとしても潔さも兼ね備えていて。掻き分け泳ぎ切るような感覚には必要なくて。

乗り越える壁。それまでの失敗の経験が、達成をよりおいしい味わいにする。最高の調味料だ。

【10】

忍耐力、我慢、思考力、経験値、身体的苦痛など。

忍耐力はコスパタイパでは身につかないですよね。

【11】

朝子どもにのしかかられながら目を覚まして、子を抱きしめながらおはようを言う時の全身がほぐれるような感覚はコスパもタイパも関係ない世界で得られるモノだと思います。

おもしろい表現だなぁ。確かに、そこにはコスパタイパは存在しない。

【12】

コスパやタイパには根拠や論拠が必須になると思います。 そうすると、根拠ない系のものがどんどん得られなくなると思います。 好き嫌いの感度、根拠なき自信、大望、夢、いい年の重ね方、などなど。

コスパタイパでは根拠のないものは手に入らない。自信、夢、いい年齢の重ね方。

【13】

「偶然性の喜び」かと思います。 予期せぬ出来事は、どんなことも人生を豊かにすると考えています。

コスパ・タイパは限りなく偶然性を省いていますもんね。思いもよらない出来事がもたらす影響。

【14】

自分の答え。

コスパ・タイパは自分の答えではなく、誰かの答え(あるいは誰かと一緒の答え)でしかなくなってしまう。

【16】

街の再開発を見ていると最適解な店ばかり増えてもダメなんだなと。スナックやコクのある洋食屋が欲しい。人間も店構えもウイスキーみたいなもので長熟ならではの風味がある。そういうものに触れた時グッとくる。タイパやコスパ主義じゃ決して得られないレイヤー。僕はそっちに重きを置いています。

ある種、個性はそこで育まれるものですよね。最適解の外側と言いますか。スナックも、洋食屋も、ウィスキーも、人間も。わたしもそこに惹かれます。

【17】

これらは「本来、パフォーマンスを高めたいもの(家族や仕事…自分が生きる目的)に時間や予算を割くため」に取り入れるものだと思いますが、今やコスパタイパそのものが目的になっている印象です。その意味では、「生きる目的」そのものは、そこからは得られないのでは。

コスパ・タイパはあくまで目的を達成するための手段である。それが目的に変わってしまうと、「生きる目的」そのものを見失ってしまう。仰る通りですね。そういう意味では、生きる目的は雑多な無駄なものの中から見つけ出す必要がありそうです。

【18】

命に関わること全般かなと思います。 命に触れること、見守ること、共に過ごすことに関しては、効率は意味をなさず、一見無駄な時間こそが一番豊かで幸せで尊いものな気がします。例えば老鳥の介護なんて、いくら頑張っても体調が改善するとは限らないし、むしろ徐々に衰えていつか別れの日が来ることは分かりきっている。だけど、必ず来るその日まで、一緒にいて、見つめて、触れて、体温や息遣い、生きようとする意志を感じることは、私にとってはかけがえなく幸せな時間です。

命に関わること全般。命の営みには効率は意味をなさない。その営みの息づかい一つひとつを受け取ること、感じること、味わうことに喜びを感じる。これは、タイパやコスパでは感知できない領域ですね。

【19】

情緒や美しいと感じる心、本物を見極める眼。 それらは効率や損得を求め過ぎると損なわれる類だけど、何を得て何を捨てるかはその人が何を大切にするかによりますね。

審美眼を磨くには、「膨大な量の良いモノと良くないモノ両方を見る」という体験が必要ですもんね。実は、コスパとタイパだけでは難しい。雑多な体験の中から本質と思われるものにアプローチできる感性を育てなけばならない。わたしもそんな気がします。

【20】

「納得感」だと思います。 「これが自分や相手にとって価値あるものかどうか」は、なかなか分からなかったりします。 そんな時にこれだけ時間・お金がかかったからこれでよいのだ、と納得することができます。

時間やお金がかかった。という体験や感覚が納得感につながっている。おもしろい切り口ですね。

【21】

タイムリーにも先日息子と話した内容に通ずるテーマ。「今の世の中、政治(参加)も経済(購買行動)も口コミだけで決めて自分で判断することをしない」と言う息子。その裏にはコスパやタイパがあると私は思う。コスパやタイパを価値観の中心に置いていると、何に触れても深さと奥行きが見えないと思う。

深さと奥行き。本気で研究(知ろう)しようと思うと、コスパとタイパの概念は捨てなければいけないと思っています。どうしても一夜漬け、間に合わせの知識になってしまいがちで。

【22】

時間や手間をかけて為したものが、味わえない。

時間と手間をかけて為すことの歓び。これは、注いだものがあるからこそ味わえるものですよね。

【23】

むしろ、何か得られないもの、届かないものを諦めるレトリックやと思う。

諦めの手段、言い換えると、自分を救う手段としてコスパ・タイパを使っているのかも。

【24】

教養。

知識や情報は手に入りますが、コスパ・タイパで教養はなかなか身に付かないですね。

【25】

(わたしの)人生。 まわり道すぎて、コスパもタイパもない。でも生きていて良かったと、やっと思えるようになりました。

そう思えるのってすてきな人生ですね。意外と、一見無駄なのかも、遠回りなのかも、という経験が後々おもしろいイベントを起こしてくれることってありますもんね。

【26】

人との繋がりです。 知り合った方と語り合い繋がる嬉しさも旅先での一期一会も。

旅先での、偶然訪れる一期一会。これはタイパ、コスパを気にしていると得られないものですね。人との繋がりは、予想を超えた物語から生まれる。

【27】

情緒。遊び、無駄があるから情緒がでる。情緒が無いから「コスパ」「タイパ」は野暮に聞こえる。遊び人は無駄を持てる余裕から情緒があるし、粋な佇まいを持っている。

コスパ・タイパは情緒を省く。情緒から醸成されるもの。ある種の色気や粋な空気感。それらは遊びや無駄の種から萌芽して、育まれてゆくものですよね。あ

【28】

試行錯誤、創意工夫、手間隙かけてたどり着く作り上げる喜び。

タイパ・コスパを考えていると「ひと手間かける」という行為はなくなりますもんね。そのひと手間、創意工夫しか到達できない世界がある。そこで味わえる歓びがある。

【29】

その時は無駄だと感じた事が後々に無駄ではなく、貴重な経験になる。

その瞬間は価値や意味がわからない。それが後々利いてくる。これって長く生きていると、だんだんわかってくるものですよね。コスパやタイパはそれらを省いてします。

【30】

「過程を楽しむこと」。 たとえば、旅行。 どこでもドアがあればすぐに目的地へ着くけれど、道中のドライブやフライトも旅の醍醐味といえる。 こういう「遊び」の部分が大切だと思う。

遊び、大事ですよね。どこでもドアは便利かもしれないけれど、プロセスを省くことでドラマや募る想いを省くことになっている。一見、無駄に思えるその要素を楽しむこと。

【31】

軽い取り返しのつく範囲の事故を経験する機会。 コスパ・タイパで起きるトラブルは大事故なイメージです。 ポジティブな話で言えば、 道草を楽しむ時間。 低コストや短期間の結果を求められない裁量です。

道草の歓びが省かれてしまうのは、どこかもったいない気がします。失敗する機会も大事ですよね。

【32】

本当に価値あるもの。

本当に価値のあるものは、タイパ・コスパの外側にある。

【33】

思い出したくなるような記憶。

ある種、予想外の、意外性のある出来事。驚きや感銘は、コスパ・タイパでは訪れないかもしれませね。思い出したくなる記憶を手に入れるため、わたしたちは予想できない一歩を踏み出す。そう思うとロマンティックです。

【34】

蓄積と流れ、経緯を読む力。

タイパ・コスパには蓄積はない。流れも乏しくなるので、経緯を読んだり捉える力もない。

【35】

一生笑えるバカ話。

コスパ・タイパで無駄を省いたものは想定内の結果にしか収まらない。その枠の外に飛び出した時、はじめて想像を超えた驚きとなって、記憶に残る笑い話となる。一生笑えるバカ話をたくさん持っている人は、すてきだなぁ。想定外をたくさん経験してきた証でもあるから。

【36】

愛。

愛は、数値的なものではかることができない。だから、コスパやタイパでもはかれない。さらには育むこともできない。実は、愛は一見ムダかもしれない、不合理なものから育まれるのかもしれませんね。

【37】

思い出です。 シンデレラにとっては王子様と結婚した結果そのものよりも、その過程と結婚までの経緯そのものが貴重な思い出と体験なんだと思います。

確かに結果だけだと、大事にできないかもしれない。愛着を生むのはそのプロセスで育まれるもの。それは未来における「思い出」となってゆく。

【38】

個性 効率の行き着くところはみんな一緒。めんどくさくても楽しめるものが個性の源であり、その人自体のおもしろみになる。

同じことをしていると、みんな似たような人になる。個性を育むのは、無駄や遊びから。

【39】

遊びや余裕。 事の全てにおいて効率重視だと、回り道の面白さや予期せぬ出会いを逃してしまう。それは人生においての貴重な経験をみすみす逃しているようなもので、とても勿体ないこと。その勿体なさにも気づかないで大人になると、スッカスカの人間が出来上がるんじゃないかな。

効率化は便利だけど、大事な経験や知見をこぼれ落してしまう。

全てではないですが、このようなコメントが届きました。

ことばには、人それぞれにイメージがあり、定義がある。それらを読ませていただいていると、わたしの中でも「コスパやタイパでは得られないもの」のイメージがすくすく育っていきました。

#言語化れんしゅう

これからも皆さんのお知恵をお借りしながら試していきたいと思います。Xのスペースでは、みなさんからいただいたことばを感想を述べながら紹介させていただいております。ぜひ、お気軽にご参加ください。




「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。