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ミッドナイト・イン・インド

「この店の扉を開くと、あの日に戻れる」

え?何がって?もちろん開いただけでは何も変わらない。ここはバーだ。少し酒の力も借りるとしよう。恥じらいをごまかすためには酒が役に立つ。最近の騒動とあいにくの雨でお客さんは一人。そう、あなただけ、今晩は。

この薄緑の液体を知っているかい?ほら、水に溶けると白濁する。少し舐めてごらん?そうだ、豊かな香りだろう。え?舌が痺れるって?笑わせるね。その痺れも味の内さ。かのピカソやゴッホが飲んでいた酒だ。あと、マリリン・マンソンも。

薬草のリキュールで、ニガヨモギ、アニス、ウイキョウ、様々なハーブとスパイスが主原料となっている。薬用酒のような香りがするのはそのためだ。その名も『アブサン』───〝不在〟を意味する。

不在

英語のabsence(アブセンス)=〝不在〟から由来したという話も。ニガヨモギの成分に幻覚作用があったため、製造中止になった記録がある。天才たちが愛した酒。彼らはこれを飲んでトリップしながら絵を描き、音楽を奏で、物語を綴った。

おっと身をのけぞらないでくれ。それは昔の話。80年代に規制緩和がされ、製造が再開された。今は危険な成分はないと言われている。だから安心してほしい。

いいかい?何事にも表と裏がある。薬だって毒の役割がある。もちろんその逆も然り。酒自体が毒にも薬にもなり得るのだから、それほど潔癖に構える必要はない。私たちは常に、薬の中に身を置き、同時に毒の中に身を置いている。少しの毒なら人間の免疫力を上げる効果さえある。

これをグラスに注ぐ。早いところはじめよう。あなたもゴッホのように〝あなたしか見えない世界〟を見ることができるかもしれないね。ん?どうした?オニキスの指輪で頭を打ったような顔をして。

さぁ、準備は整った。グラスが重なり合う音が響けば、ミッドナイト・イン・インドのはじまりだ。「今」という瞬間が、15年前のあの日に戻る。それではいいかい?

「チアーズ」

***

3月5日 PM11:00

サービス精神という概念は彼女たちにはないのであろう。日本で買ったインドの航空会社の格安チケット。キャビンアテンダントの接客の悪さに耐え抜き、デリーの空港に着いた。

「ここがインドか」

空港内にある両替所で薄っぺらの福沢諭吉を何百倍にもパンパンに膨れ上がったインドルピーに変える。そのガンジーの顔が描かれた玩具みたいな札束を握り締め、外へ出た。クラクションの音、音、音。そして見渡す限りインド人、インド人、インド人。香辛料の匂い。

「ここがインドだ」

空港からデリーの市内までは距離があり、バスかタクシーかオートリクシャーと呼ばれる自動三輪車を利用しなければならない。僕はさっそくカタコトの英語で話しかけ、リクシャーに乗ってホテル探しをすることにした。しかし、どれだけリクシャーの運転手に話かけても全然相手にしてくれない。

理由は簡単だった。モンゴリアン系丸出しの顔でバックパックを背負い、既に何人ものタクシーの運転手に群がられている奴の相手なんていくらインド式数学を自由自在に扱える彼らであろうと、面倒なのだ。

僕はリクシャーを諦め、数分前からしつこく客引きしてくる一人のタクシーの運転手に託すことにした。群がってくるタクシー運転手たちは「市内まで350ルピーで行ってやる」と口を揃えて言った。当時の物価はだいたい100ルピーあたり300円くらい。1000円ちょっとなのだけども、かなりふっかけられてることは間違いない。

「エクスペンシブ!100ルピーしか払わない」と言うと、運転手たちは「ヘイへイジャパニーズ、冗談はよしてくれよ」みたいな感じで小馬鹿にされた。

「じゃあいい」と歩き出してもずっと後を付いて来る。15分くらい値段交渉をして「100ルピーでOKだ」と言った兄ちゃんの車に乗り込んだ。乗る前に警察であろう制服のインド人に「この兄ちゃんを信用して大丈夫か?」と聞いたら、笑顔で「ノープロブレム」と答えたので安心した。

運転手は観光客慣れしていると見え、訛りのある英語でフレンドリーに話しかけてくる。

「インドは何回目だい?」
「どのくらい滞在するんだい?」
「どこを訪れるつもりだい?」
「日本ではどんな仕事をしてるんだい?」

少々運転が荒いのと彼がワキガであることを除けば、かなり居心地のいいタクシーだった。理由は、窮屈過ぎる機内よりいくらかマシだったということと彼のインドスマイルのおかげ。それだけではなく、その運転手の顔がバイト先の先輩の顔とソックリだったからだ。親しみを感じる。彼らインド人は少々サービス精神には欠けるがフレンドリーであることには間違いない。彼との会話は楽しかった。

「長く滞在するなら、あの場所は訪れるべきだよ」
「あの地域は物価が安いから楽しめると思うよ」
「オイラもあの町には行ってみたいんだ」

そのようなことを運転手が教えてくれてお互いに話が盛り上がっていた時に車は止まった。「ここが目的地かい?」とお金を払おうとしたら「いや違うんだ。場所が分からないからあそこの店で住所を聞いてくれ」と運転手。いや、そんなわけがない。街の中心地。東京で言えば、渋谷のスクランブル交差点みたいな場所だ。おいおい、何の冗談だ?すると、体格の大きなインド人男性2人が建物から出てきてタクシーに近づいてくる。

「……やばい」

これはあかんです。建物の中に連れて行かれたら終わりです。

「いや、目的地までちゃんと行ってくれ」
「道が分からないんだ」
「嘘つけ!ニューデリーの真ん中に連れて行ってくれたらいいんだって!」
「だから、道が分かんないんだって」

そう言っている間に肉団子のような体躯の2人はタクシーのドアに手をかけた。僕は必死にドアが開かないように内側から引っ張り「とりあえず車を出せ」と言うが「ノー、降りろ」の一点張り。すると肉団子が外から「店の中に電話があるからそれでホテルを探せ」と低い声で言う。威圧感。

「こ……殺される!」

ついに僕は「いいから早く車出せ!ここでは絶対降りない!」と声を荒げた。外から降りろと言ってる肉団子にもずっと「ノゥ!ノゥ!」と言い続けた。すると肉団子は激怒し、あんかけ肉団子みたいな顔をしてヒンディー語で運転手に捲し立てた。

何を言ってるのかは全く理解できない。阿修羅のような形相なのでキレかけているか、あるいは完全にキレているのだろう。すると運転手は静かに頷き、車を走らせた。

「おい、さっきの奴は何をしゃべっていたんだ?」と聞くと運転手は「場所を教えてくれた」と誰が聞いても分かる嘘を透き通った瞳で言った。

「よし、オーケーオーケー。僕はここで降りる」
「何言ってんだ。こんな危険な場所に下ろせる訳ないだろ。」
「ほら、あそこホテルだろ?あそこに泊まるから下ろしてくれ」
「オレは場所が分かったんだ」

適当なことを言われ、車を止めてくれなかった。そう、それが最後だった。一度騙し掛けてきたインド人を少しでも信用した僕が馬鹿だった。車内は30分前の明るい雰囲気が大昔に思えるほど重たい空気だった。二人の顔にはスマイルの「ス」の字もなかった。

車を走らせること20分。「ここだ」と降ろされた。僕はその言葉を信用し、100ルピーを払い、仲直りの意を込めて握手をして降りた。

辺りは殺伐としていた。確かニューデリーの中心であるコンノート・プレイスに連れて行けと言ったはずだ。ホテルはおろか、店一軒もない。そして歩行者は東洋人の顔をした僕一人だ。あとで分かったのだが、コンノートからかなり離れた場所に放置されたのだった。その時の僕にそんなこと分かるはずもなく。

「ここがコンノートか。結構暗いな」

自分自身を勇気付けるように一人言を呟きながら歩道に沿って歩き出した。すると暗闇に光る無数の点。それが犬だということに気付いた頃には遅かった。僕は10匹以上の野犬に囲まれていた。

ギャン!ギャン!ギャン!ギャン!


その瞬間、頭に浮かんだ言葉は「狂犬病」の三文字。狂った犬の病!しかもその数は徐々に増え、数えきれないほどの狂ったワンちゃん達にあっという間に囲まれた。

こぉぉぉぉぉれぇぇはアカンです!!!


大声を上げながらリュックを振り回して戦意を見せるのだがお構いなしに噛み付こうとしてくる狂ったワンちゃんたち。ジャレているのでないことだけは確か。変な汗がいっぱい出てくる。日本の犬より数倍ワイルドなインドの野犬。絶体絶命のピンチ!!

頭で吠え続けていた犬が僕に噛みつこうとした時、一台のリクシャーが目の前に現れ、棒を持ったインド人のオヤジが飛び出した。そのオヤジは手に持った棒で10秒もかからず犬たちを追っ払い僕に近づいて言った。

「こんなところで何をしてるんだ!?」

救世主、現る

空港で時間を合わせた時計を見ると既に一時半を過ぎていた。生暖かい風が頬に触れる。けたたましいエンジン音が鳴り響くリクシャーはなんとも言えない絶妙なバランス感覚で、ゆるやかなカーブを描いた。インド人のオヤジは笑ってる。僕は少し疲れてる。ふと、先ほどのやりとりを思い出す。

「こんなところで何をしてるんだ!?」
「いや、この辺りでホテルを探そうと思って」
「歩いて?」
「そうです。この辺りにたくさんあるはずだから」
「おい、この辺りにホテルなんてないぜ」
「え?」

オヤジは続けた。

「お前みたいなバックパックを背負ったジャパニーズがこんな時間にガイドブックを持ちながら歩いていたら殺されるぜ」
「え?」
「いいから乗れ」
「いや、歩いていきます。バイマイセルフです」
「行くって?どこ行くんだ?」
「コンノート・プレイスです」

そう答えると、オヤジは溜息をついて、その透き通る瞳で真っ直ぐにこちらを見ながらこう言った。

「ヘイジャパニー、コンノートはここからだいぶかけ離れてるぜ」

そう言われたけども、その前に一発騙されてるのもあってすぐにインド人を信用できる心境じゃなかった。「大丈夫だ」と言いながら歩き続けたが、オヤジは僕の歩く速度に合わせてリクシャーで後を追い「いいから乗れ」としつこく言った。数十メートル無視し続けてるのにまだついて来るオヤジに「僕に構うな!」と言いかけた時、前方から4、5匹の野犬がやってきて吠えはじめた。オヤジは再びリクシャーを乗り捨て、狂ったワンちゃんたちを追い払い、こちらを振り返って素敵過ぎるインドスマイルでウィンクした。

「コンノートまで」
「50ルピーだ」
「5ルピーだ」
「30ルピー」
「5ルピーだ」
「10ルピー」
「言っとくけど、5ルピーじゃないと乗らない」
「オーケー。もう何も言うな。いいから乗れ」

こうして僕はオヤジのリクシャーに乗った訳である。夜のニューデリーは似たような道ばかりでどこを通っているのか分からない。

「ヘイ、ジャパニー。どうしてこんなとこに一人でいるんだ?」
「あそこがコンノートだと思ったのさ」
「あのな、この辺はマフィアが山ほどいるんだ。お前みたいな旅行者はすぐに身ぐるみはがされるぜ」
「……」
「ホント、オレがいてよかったな」
「……コンノートまで早く」
「わかった。わかった」

バリバリバリバリバリ!

けたたましいエンジン音、ガソリンの匂い、インド人のスパイシーな香り。僕は今、インドにいる。はじめての海外。はじめての一人旅。きっかけは3つ年上の姉。カメラを片手に世界中を放浪する彼女に「海外に行くならどこがいい?」と聞いことがある。姉は躊躇なく「インド」と答えた。そして、こう付け加えた。「大好きになるか、大嫌いになるか、どっちか」。多くを語らないその言葉に惹かれた。きっと姉は僕に伝えた言葉を覚えていないと思う。

リュ・シファの『地球人の旅人』を読んだ。文章の間に浮き立つポエジー。アルバイトでお金を貯めた。パスポートをつくり、航空券を買った。僕は今、インドにいる。

「ヘイ、ジャパニー」
「…?」
「ヘイ、ジャパニー!」
「…ん?」
「着いたぜ、ここがコンノートだ」

手に握っていた5ルピーを渡してリクシャーから降りる。大きな建物が並ぶ。先ほどの場所とは全く異なった都会的な雰囲気。なるほどここがコンノート・プレイスか。礼を言って、歩き出そうとすると親父が後ろから声をかけた。

「ジャパニー、ホテルは取ってあるのかい?」
「いや、今から自分で探すつもりさ」
「なんてこったい!ジャパニーよく聞け、今日は3月5日。明日はシヴァラートゥリだ。ホテルなんて空いてないぜ!」
「え?何て?しヴぁらーとり?」
「フェスティバルさ!」

ガイドブックを開くと、確かに翌日はヒンドゥー教の神様シヴァの聖典のようだ。それでどこのホテルも満室なのだという。

「ヘイ、ジャパニー。もう夜中の2時だ。しょうがねぇ、オレがホテルを探してやるよ」

なんていいオヤジなんだ。僕は心から感謝した。その前に一発ボディブローを喰らっていたので、その分感動が増した。このオヤジはちゃんと僕をコンノートまで送ってくれた。それに狂ったワンちゃんたちも追っ払ってくれた。

「オヤジ、センキュー!」

再び僕はリクシャーに乗り込んだ。感動も絶望も何が原因で、そしていつ、どこからやってくるのか分からない。それが旅なんだと初日の到着3時間後に知った。オヤジはリクシャーを走らせる。

「オヤジ、お金があまりないから安いとこ探してくれよ」
「おう。だけどフェスティバルだから難しいぜ」

屈託のない笑顔でリクシャーのハンドルをきるオヤジ。車内に入る春先のインドの風がそのスピードを全身に知らせる。今頃、日本は寒いんだろうなぁ。風とたわむれながら、そんなことを考えていた時、大きな音と共に体に衝撃が走った。

ドォォォォォン!

リクシャーに何かがぶつかった。それは、紛れもなく「人」だった。オヤジがインド人を撥ねた。確かに僕はその一部始終を目にした。そして、驚いたことにリクシャーは止まることなく走り続けた。オヤジは笑顔で振り返り、僕に「アーユーオーケー?」と聞いた。

「今、轢いたよね?ちょっと!早く、戻ろうよ!」

咄嗟に出てきた日本語に、オヤジは大笑いしながら「ヤァ(YES)ヤァ(YES)」と答えた。そして続けて「ノープロブレム」と言ってインドスマイルでウィンクした。どうかしている。日本とは命の重さが違うことを知る。

オヤジはホテルを探すために尽力してくれた。7、8軒回ってくれたがどこも満室だと言われた。オヤジは親身になりながら「明日がフェスティバルだからなぁ」と自分のことのように残念がってくれた。そして気付いたら旅行会社の前にリクシャーを停めていた。

「ヘイ、ジャパニー。ここでホテルを探してもらうんだ」

日本からのエコノミー席での10時間の旅に続く、タクシー事件、野犬対決、ホテル巡りに疲れきって、僕の精神はどうにかなっていた。中に入ると、案の定高額ツアーを組ませる悪徳旅行会社の営業トークがはじまった。ぼんやりと目の前のインド人を見つめる。

アホかと。亮太、お前はアホかと。インドに何しに来とるんやと。僕の中にいるもう一人の僕が囁く。「チャイを飲むか?」と聞かれ「要らない」と答える。ここに来た理由を話すと「明日はフェスティバルだからホテルはファイブスター(5つ星)しかない」と簡単に片付けられ、「それはそうと、どういうコースでインドを回るんだ?」と執拗に質問攻めがはじまった。男の声が遠ざかっていく。僕の頭の中に一つの疑問が浮かぶ。考えたくないこと。とても嫌な気持ちになることだ。

「オヤジはなぜ僕をここに連れてきたんだ?」

時計を見ると4時過ぎ。あと少し。あと少しだ。電車が動く時間になれば早いとこ、こんな町出よう。その想いだけが毎分毎秒膨らんで行く。そして、目の前でタージ・マハルの写真の載ったカタログを開く男に対して、呼吸を整えてからこう言った。

「いいか、聞け。何があってもツアーは組まない」

すると旅行会社の男は「お前みたいな奴はインドから出て行け!」と怒鳴った。その言葉を背に、僕はその場を後にした。


真っ暗闇の道をとぼとぼと一人歩く。ここがどこだか分からないが、あんなとこにいるよりはマシだ。遠くで野犬が吠えている。怖い。何かやわらかいものを踏んだ。2、3歩あるくと、靴の裏のやわらかいものが潰れた。くさい。これは、うんこだ。一体これは何のうんこだ?窮屈なエコノミーで10時間の旅、騙され、犬に怯えて、また騙され、挙句の果てにはうんこを踏んだ。急に泣きたくなった。僕は何のためにインドに来たのだろう?到着したほんの数時間後に「インドから出ていけ」と罵声を浴びるなんて想像もしなかった。暗闇に浮かぶ白い月が、じんわりと霞んだ。

僕は一体あと何回騙されて、騙されて、犬に怯えて、何から出てきたのか分からないうんこを踏むのだろう?まだカレーも食べてないのに、口の中が辛くなった。すると後ろから聞き覚えのあるバリバリバリバリバリという音。

「ヘイ、ジャパンニー」

さっきのオヤジだった。この男も結局は僕を騙していたんだ。僕は「向こうへ行け」と、言った。するとオヤジが「オレの友達のホテルが一部屋空いてるんだ。今取ってもらってるんだけど行かないか?」と誘った。

そして僕はもう一度騙される。

救世主の正体は詐欺師

疲れもあり、野犬の怯えもあり、うんこもあり、オヤジのリクシャーに乗るには充分過ぎる要因を持ち合わせていた。今までとは比べものにならないくらい真っ暗闇に包まれた道を、インド人を撥ねたリクシャーで走り抜ける。僕の反撃は、そのオヤジのリクシャーに靴の裏のうんこを擦りつけるくらいだった。このオヤジが向かってる先が怖かった。ひと気のない、そして明かりのない、ひどく狭い道。インドに到着したその日に命を断つかもしれない。その不安はいくら拭っても拭いきれず、むしろ許容量を超えてドバドバとあふれ出した。真っ暗闇の中、リクシャーを停めた。

「降りろ。ホテルだ」
「降りない」

怖さのあまり駄々をこねた。「降りろ、降りない」の攻防が10分続いた後、説得されて恐る恐る降りてみると、本当にホテルがあってようやく胸を撫で下ろした。そして高額なホテルの一室にサインをした。ここで闘うには疲れ過ぎていた。オヤジに100ルピー払い、明日絶対にニューデリーを出るという決意を胸に眠りに落ちた。

***

あとで旅をしている日本人に聞いて分かったことなのだが、3月5日のこの夜、どこのホテルも普通に空いていたらしい。リクシャーのオヤジとホテルマンの口裏あわせで満室にされていたのだった。そういう詐欺が主流であることを、日本で全く予習していなかったガイドブックを読んで知った。

僕は次の日から、受験生並にこの本を読み尽くすことになる。そしてデリーへのリベンジを決意する。


次回ジャイプル編 へとつづく



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