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新世界への扉を開く

最近のお仕事。

循環型生産のサスティナブルを考えられてつくられた石川樹脂さんの『ARAS』という食器があります。ガラスと樹脂を掛け合わせた新素材を開発し、熟練の職人によるデザインを最新の3Dテクノロジーで表現したうっとりするようなプロダクト。「先進」と「伝統」、それぞれの技術が融合された〝新しい食器〟です。

そのARASのジャーナルにてテキストを書かせていただいております。様々なクリエイターにインタビューをし、その人のライフスタイルに焦点を当て、言葉と共に「ARASのある風景」を描きます。

第一回はクリエイター集団secca inc代表の上町達也さん。

第二回はフードデザイナー、R!CE FOOD DESIGNの山本理世さん。


このお仕事のおかげで月に一度金沢へ行くきっかけができました。金沢は加賀百万石の時代から「ものづくり」の街として、豊かな文化が育まれた美しい土地です。伝統工芸品、食文化、文学や芸術、愛おしい街並み。それらの醸す静かな賑わいの中で、そっと呼吸を整える。心の中の器が瑞々しいもので満たされていく感覚を覚えます。

仕事を振り返ることは、自分にとっての「心地良さ」や「楽しさ」について考えるきっかけを与えてくれます。外側の出来事から、肌の内側に入った時に文体は変化します。それは、さも当然のように。ここから先は、内側の声です。



新世界

その「場所」に足を運ぶ、ということも好きだし、やっぱり僕は「誰かの話を聴く」ことが好きみたいだ。一つのことを追求している人の言葉は淀みなく、いつだって思考がクリア。その人の言葉を聴きながら、文章として整理していく。すると今まで見えなかった世界が浮き上がってくる。

そこには僕の知らなかった景色が広がっている(あるいは、知っていたけれど輪郭をうまく掴めていなかった景色が)。その世界を眺めていると、僕の内側の緑が色濃くなっていく感覚がある。芽吹いてゆく感じ。僕はこの感覚が好きなんだ。この感覚を味わっていたい。「経済」という歯車とは関係のない場所で、僕の「書く」という営みは息づいている。

先日、とあるテキストをまとめていた。とても複雑で難解なディスカッション。オンラインで取材したものをテーマをつけて整理していく。僕はそのたった一つの記事に対して何十時間もかけて言葉を練っていた。そしてある瞬間、パズルのピースがきれいにはまったように、全てが一本の糸で繋がった。僕の全身の毛は逆立っていた。全ての毛穴が隈なく開き、肌の表面がじんじんと痺れた。新世界へ足を踏み入れた瞬間だった。

僕は目の前の「人」を通して、向こう側にある世界を見る。「人」が触媒となり、遠い所へワープする。そのトリップする感覚は快楽に近い。その新世界を文章で描いていくうちに、それは詩となり、小説となる。文章は新しい世界へと繋がる扉だ。

その扉を音楽で開く人のいれば、料理で開く人もいるだろう。写真で開く人もいれば、建築で開く人もいる。僕たちがやっていることは全て同じ。扉を開くこと。新しい世界は、生きている実感を教えてくれる。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。