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自分が好きな音楽を突き詰めてみたい ~「Eresia」Sakina Special Interview~

ジャズを中心に、ヒップホップの要素を絶妙にブレンドしたバンド、「Eresia(エレジア)」を
皆様は御存じだろうか。

「Eresia」
左から、Hikaru(ベース)、Hayato(ギター)、Sakina(ピアノ)、Tsukumoya(ドラムス)

Eresia「Mental Sketch」MV


最新の音楽シーンをチェックしている方は、
すでに音源などもチェックされている事だろう。
「Eresia」は2024年から音源リリースやMVの公開、そして、東京港区の話題のライヴスポット、「月見ル君想フ」への出演など、積極的に活動の幅を広げている。

「月見ル君想フ」でのライヴ映像

ジャンルに捉われず、多くのリスナーを惹きつける魅力と、さらに発展する可能性を大いに秘めた注目のバンドだ。
今回は「Eresia」のリーダーでメインソングライターである、ピアニストのSakinaにインタビュー。
彼女の音楽ルーツ、そして楽曲制作や、「Eresia」の今後の活動などについて、力強い言葉で語ってくれた。

Sakina

即興音楽との出会い

-Sakinaさんがピアノを演奏するようになった経緯、またジャズやヒップホップとの出会いを教えてください

私が幼い頃、父が車の中でよく流す曲がありました。ソロピアノによる即興演奏の名盤、
キース・ジャレットの「The Köln Concert」です。

当時の私はクラシックピアノを習っており、
楽譜通り、正しく演奏することが全てでしたが、キースの演奏を聴いて、
幼いながらも私は「即興で作られた音楽が、
何故こんなにも美しいのか」と驚き、
何度もその曲を聴くようになりました。
これが私と“即興演奏”との出会いでした。
今考えると世間知らずで恥ずかしいですが、
幼い頃に感動したキース・ジャレットが、
ジャズピアニストである事を当時の私は知らなかったのです。

そして月日は流れ、社会人になって、
クラシックピアノは正直飽きてきて…。
でも、即興演奏はやり方が分からない。
そんな葛藤を数年抱え続けて、ピアノへの熱意も下がっていましたが、転機となった音との出会いが訪れます。
ある日、たまたま入ったレストランで、ヒップホップのリズムに情緒的なピアノが交わった美しい音楽が流れており、思わず耳を奪われました。
そのピアノを弾いていたのが、21世紀を代表するジャズピアニスト、ロバート・グラスパーの演奏でした。私は、すぐ彼の音楽の虜になり、
ジャズやブラックミュージックの存在を知りました。

ロバート・グラスパーのような音が奏でられる、ジャズピアニストになりたい
そんな夢が生まれ、ジャズピアノを習い始めて、現在に至ります。

-まさに運命の出会いが訪れたのですね。
キースや、ロバート・グラスパーはもちろんですが、その他にSakinaさんが影響を受けたアーティストを教えてください

Big Yuki、Thundercat、Kassa Overall、Domi &JD beck、Knowerです。
ジャズをベースにしつつ、
ヒップホップやR&Bの要素がある、
エレクトロなサウンドが好みです。

ミュージシャンとしてのオリジナリティの追求

-柔軟な音楽嗜好を持つSakinaさんが演奏される際に心がけている事はどういった事でしょうか

技術にこだわらない事」と「音楽に酔いしれる事」です。
演奏は聴いてくれるお客様があって、
初めて成立します。
お客様が求めている音楽は何か、
ジャズを始めて7年、ライヴやセッションで演奏しながら模索してきました。
ジャズを始めた頃は「高い演奏技術こそ、より多くのリスナーを惹きつける」と考えていましたが、実際は「私が楽しそうに演奏する姿が良い」という点を評価してくれるリスナーの方が圧倒的に多かったのです。
ミュージシャンとしてのオリジナリティ。
それを追求することが、より多くのリスナーを惹きつけると今は思っています。
今の私のオリジナリティは「ゾーンに入って、音楽に酔いしれる演奏」だと思っています。
でも、これから長い人生、オリジナリティが、どう変わっていくのかが楽しみです。

-Sakinaさんは会社員として日中は勤務されているとの事ですが、ミュージシャンとの両立についての考え、また難しさなどをどのように感じられていますか

やはり時間が無い事です。
ただ不思議なことに、会社員として忙しい日こそ、ピアノの練習が捗りますし、ピアノの仕事が夜にある日こそ、日中の会社の仕事が捗ります。「限られた時間」というハンディキャップが、ポジティブに機能しているように感じています。ピアノの練習も、日中の仕事も正直終わりがありません。

「二兎追うものしか二兎を得ず」

そうやって、区切りをつける事で、
両方を楽しむことが出来ると思います。

「本当はやりたい趣味があるけど、仕事が忙しくて時間が作れない」

そう思っているあなた!一度きりの人生。
案外、やりたい事との両立が、
より仕事を楽しくするかも(笑)

コンプレックスを乗り越えて誕生した「Eresia」

-二兎追ってもいいんだ!(笑)
なんだか勇気づけられます。
それでは、「Eresia」の結成の経緯を教えていただけますか

実は私のコンプレックスでもあったのですが、バド・パウエルやチャーリー・パーカーといったビバップのアーティストには、熱狂するほど好きにはなれませんでした。
私のピアノに対して「もっとビバップを勉強した方が良い」というご指摘を、お客様やミュージシャン仲間から何度か頂いた事もあります。その貴重なご指摘に対して、私も迷いましたが、「好きという気持ちに勝るものはない、まずは自分が好きな音楽を突き詰めてみたい」という考えに至り、そんな想いで私のバンド「Eresia」を作りました。

【Eresia Spirit】
この世界はルールにあふれている。
自由を求めて入ったジャズの世界。
自由になるための不自由を味わった。
批判されてもいい。好きな音楽を作りたい。
後悔してもいい。今弾きたい音がある。
ありのままの自分でいよう。


バンドのコンセプト
“異端”を意味する《Eresia》自分達の音を突き進む先に何が見える?

「Eresia」の顔ぶれ

-Sakinaさんの想いに共鳴し、共に音楽を生み出すバンドメンバーの皆様のそれぞれの魅力を教えていただけますか

Hayato(ギター)

情緒的で熱いプレイスタイル

今回リリースした2曲のミックスとマスタリングも担当。
意思のある強い音色とソロで、
バンド全体を引っ張ってくれています。
「Eresia」のサウンドに抑揚をつける大事な存在です。

Hayato

Hikaru(ベース)

空間美を感じさせる多才なベース

早弾きが得意な彼ですが、その技術があるからこそ
ソロや音色のバリエーションが豊富なのが魅力です。
「Eresia」のサウンドに色をつける大事な存在です。

Hikaru


Tsukumoya(ドラムス)

言葉が聴こえてくるようなドラムソロ

彼と出会ってドラムソロの概念が変わりました。
物語のあるメロディアスなソロが彼の魅力です。
中性的な音色も私の曲に合っていると思います。
「Eresia」のサウンドを形にする大事な存在です。

Tsukumoya


「Mental Sketch」と「Bless Me」について

-今までリリースされた楽曲について、
各曲紹介していただけないでしょうか

Mental Sketch
美術館を散策していると、
時おり、目を奪う作品と出会います。
その時、私の心は乱れ、不安定になる。
そして、魅了される。
この感覚は何なのだろうか。
古い価値観が拡張される、痛みなのだろうか。

魅惑的な作品に出会った時の感情を描写した曲です。

Bless Me
小さい頃、私はピアニストになりたかった。
でも、大人になるにつれて、その夢を諦めた。
生活を安定させたくて、社会人になった。
でも、ピアニストになる夢を諦められなかった。
私は音楽を愛していた。
そして、社会人になってから、
ピアニストとしての道を進み始めた。
正直、周りに遅れを取ってしまったけど、
私なりに、夢に向かって歩み始めた。

その時に作った、夢に向かって進む足音を音楽にした曲です。

-レコーディングやMV収録において、印象に残っている事、難しかった点など、教えていただけませんでしょうか

コンテンポラリージャズの「Mental Sketch」、ジャズヒップホップの「Bless Me」と、あえて異なる世界観を持つ2曲を同時にレコーディング、MV収録しました。このバンドサウンドの多様性を、アピールするためでした。作曲者の私にとって「Mental Sketch」と「Bless Me」は全くの別物であり、それぞれ理想の音と映像は、“頭の中”にはありましたが、それを、音楽プロデューサー、ビデオグラファー、フォトグラファーなど、各クリエイターに伝える“言葉”は持ち合わせていませんでした。
しかし、私の拙いオリエンテーションにも関わらず、彼らは素晴らしい作品を、独自の技術とオリジナリティで仕上げてくれました。
異なる専門領域を持つクリエイター達が、
力を合わせ、1つの作品を作る。
「Mental Sketch」と「Bless Me」が、
より魅力的になっていく過程は、作曲者として非常に感動しました。支えてくれたクリエイターたちには感謝しかありません。

“心から美しいと思える曲”を作っていきたい

-今後の展望を教えてください

現在はインストバンドとして活動していますが、今後はラッパー、シンガーをゲストヴォーカルとして呼んでいきたいです。
そして、「FUJI ROCK」や「朝霧JAM」といった、フェスの出演機会を頂きたいですし、「Blue Note Place」や「WWW」、「BAROOM」といった、憧れのお店での出演機会も頂きたいです。

私自身、心から美しいと思える曲が作れた瞬間。その曲を、リスナーの方が好きになってくれた瞬間。

これが何より幸せで、この“質”と“量”を増やすために、私は音楽をやっています。「Eresia」として、より多くの方に届く作品を作って、好きになってほしい。それが私たちの今後の展望です。


-最後にリスナーへメッセージをお願いいたします

「Eresia」は結成して1年もない、
まだまだ拙いバンドです。
皆さまのお力を借りて成長していければ嬉しく思います。
今後とも応援よろしくお願いします。


インタビューを終えて

Sakinaさんが音楽創作、今後の「Eresia」の展開について、非常に明確な目標を持っていることが今回のインタビューで充分に伝わるのではないでしょうか。
その目標に向かって進んでいく行動力が頼もしいですし、確実にその目標を達成していく過程をこれから追いかけることができるのは、いちリスナーとして、とても嬉しく感じます。
今回のインタビューでお話されていた目標の達成の瞬間を見逃さない、聴き逃さないように、さらに注目していきます。皆様も是非ご注目を!

インタビュー・編集構成:Ryota Kojima

「Eresia」各種サイト

・「Eresia」Instagram


・Eresia」Youtubeチャンネル


・「Eresia」公式ホームページ

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