【失敗談】移りゆく時の中で
今は、夏真っ盛り。
セミはなぜ忙しなく鳴いているのか。
程なく秋が訪れる。
鈴虫はなぜ涼しげな音を奏でるのか。
いずれも求愛活動である。
種の継承、繁殖のために一心不乱に彼らは音を奏でる。
遠くまで聴こえる音を発し、自分の存在をメスに対してアピールする。
昆虫もヒトも生き物、同じだ。
原理は何も変わらない。
我々ナンパ師も、ひたすら声を掛け、自身の存在をセミや鈴虫のごとく異性にアピールする。
やっていることは、セミや鈴虫と何ら変わらない。生き物の本能がそうさせるのだ。
そんなことを考えながら、昨日、今日と2日連続で若者で溢れかえる某ターミナル駅に降り立った。
この場所は激戦区だ。
たくさんのナンパ師が往来している。
そして、昨日、今日と私にとって最悪の結末が待っていた。
単に成果が出なかったことが、最悪なのではない。昨日、今日ともに目の前で鮮やかにこの激戦区で普段、暗躍しているであろうナンパ師の成果を見せつけられたのだ。
もう私の時代ではない。
純粋にそう感じた。
まずは昨日の話。
声掛けの瞬間は視界に入らなかったが、私の近くでこんな男性のフレーズが聞こえてきた。
「せっかく◯◯に来たんだから、このまま帰るのもったいなくない?」
立ち止まって話を聞いていた女性は「たしかに。」と頷いていた。
男性は長身で、例えるならば、キングコング西野亮廣の劣化版といった風情の男だ。
女性は見た感じ、20歳くらいだろうか。
豊満な胸を前面に押し出した大胆な肩出しファッションで、ショートパンツに流行りのエアマックスココを裸足で合わせていた。
程なく2人はホテル街に向かって歩き出した。
そして、今日の話。
駅前の壁に背を向けて立っていたとてもスタイルの良い小顔のやはり20歳くらいの女性。
いや、あの雰囲気はもしかしたら18歳くらいだろうか。ほんの少しだけ地雷系ファッションのテイストを取り入れた全身黒で統一されたコーディネート。足元も真夏にも関わらず黒のショートブーツを履き、だらしなさを微塵も感じさせない美女である。
驚くほど小顔で、スカートからスッと伸びた脚も細くキレイだ。
私自身、彼女に声を掛けようか迷っていたのだが、先に別のナンパ師がどこからともなく現れ彼女に声を掛けた。
男性は決して背は高くないが清潔感のある色白の小池徹平風の男。こちらも例に漏れず、小池徹平の劣化版…のさらに劣化版ではあった。もちろん不細工ではないのだが、イケメンかと言われたら微妙なラインである。
ひとしきり観察してみたが、程なく2人の会話は盛り上がり、やはり昨日の男女と同じくホテル街に向かって歩き出した。
2組とも全く同じ導線を辿っていた。
この後どうなるのか、とても気になった。
上手くいくのか、あるいは破綻するのか。
だから、私は…
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