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DX以前のバズワード「RPA」はどうなっているのか調べてみた

IT領域のバズワードは栄枯盛衰が激しい。AI、IoT、ブロックチェーン…。最近、勢いのあるワードと言えば、ノーコード、DXやSaaSあたりでしょうか。その中でも、一時期一斉を風靡したワードがあります。

そう、「RPA」です。このnoteでは、最近すっかり聞かなくなったRPAの現状について個人的に調べてみた結果をまとめてみました。

なお、本noteでは、RPAの具体的な運用ノウハウや導入のポイントについては解説しない事とします。あくまで、RPAの過去と現在について考察する事をテーマとします。

RPAについて馴染みのない方向けに簡単に解説すると、RPAとは、Robotic Process Automationの略語。直訳すれば、「ロボットによる業務プロセスの自動化」です。簡単にまとめると、①専門知識がなくとも、②デジタルレイバーと呼ばれる仮想労働者が、③決められた動作を繰り返し行うツールと言えるでしょう。

なお、①について補足すると、一部のツールは、コードを書く事なく利用する事が出来るため、今流行の「ノーコード」ツールの一種でもあると言えるかもしれません。

サマリー

・RPAは「幻滅期」に入り、メリデメが冷静に評価され始めている
・RPAは大手企業を中心に導入が進む一方、中小企業への普及は初期段階
・クラウド型RPAツールの登場により、中小企業への普及は加速化する可能性が高い
・SaaSの普及により、RPAでは対応出来ない業務が発生している
・SaaS間の業務連携はiPaaSが担っており、今後はRPAとiPaaSの連携もしくは棲み分けが重要となる事が予想される

RPAはなぜ流行ったのか?

業務の「自動化」により圧倒的な生産性向上を企業にもたらすという触れ込みと、SIerやITコンサルティング会社の推進により、RPAという言葉は瞬く間に市場に浸透していきました。

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「RPAの威力 ~ロボットと共に生きる働き方改革~は」2017年11月にアビームコンサルティングにより執筆された書籍。2017〜2018年はRPAに関する書籍が多数発売され、まさにRPAの「黄金時代」だったと言えます。

その背景としては、日本の労働生産性の問題があります。皆さんご存知の通り日本の労働生産性は決して高い水準にはありません。G7では最下位。OECD加盟国においても、平均以下。語弊を恐れず表現するのであれば、「先進国最低クラス」であるというのが日本の実態です。

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おまけに、日本は高齢化先進国でもあります。今後、生産年齢人口(15〜64歳)の人口は減少の一途を辿る事は間違いありません。

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以上の様に、①労働生産性の低さに対する指摘、②今後の生産年齢人口の減少という問題に対する福音として、RPAは大きく注目されました。なお、後述の通り、RPAが最も注目されたのは2018年の8月前後。いわゆる「働き方改革関連法規」が可決された年でもあります。

補足ですが、国内GDPは2050年(30年後)には全世界で7位まで下降するとPwC等から報告されています。日本は、現在時点では米国・中国に継ぎ、3位に位置していますが、その要因は、先進国の中で1億人を超えるという人口=頭数の多さにあります。今後、生産性が成長する事なく、生産年齢人口が減っていけば、国内GDPの順位が落ちていくのは必然的な流れだと考えられます。

RPAの現在の立ち位置はどうなっているのか?

2020年8月現在、RPAというワードについて聞く機会はめっきり少なくなった様に感じます。その感覚は、大手企業や情報システム部門に所属する方を除けば概ね一致するのではないでしょうか。下記はGoogleトレンドにおけるRPAの検索ボリュームの推移ですが、2018年8月頃(丁度2年前)をピークに現在はダウントレンドに入りつつあります。

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また、2019年10月にガートナー社が発表した「「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル」によれば、RPAは幻滅期に入りつつある事が分かり、検索ボリュームの低下と一致します。

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2019年10月には急成長のRPAが幻滅期に入ったワケhttps://japan.zdnet.com/article/35144545/)という記事も出ており、RPAのメリット・デメリットが冷静に見直されつつあるというのが現状でしょう。

RPAはどの様な企業に導入されているのか?

ところで、RPAは一体どの様な属性の企業に導入されているのでしょうか。結論からいえば、中堅〜大手企業中心であり、中小企業においてはまだまだ導入が進んでいない状態にあります

下記は、MM総研が2020年1月に発表したRPAの利用動向についての調査ですが、2019年11月段階で、中堅・中小企業における導入率は25%にとどまっています。

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ちなみに、本調査における中堅・中小企業の定義は年間売上50〜1,000 億円の企業です。上記の図から、企業規模とRPAの導入率は比例関係にある事が想定されます。

すなわち、年商50億円を下回る中小企業におけるRPAの導入率は25%を下回っている可能性が非常に高いと言えます。

つまり、多くの中小企業において、RPAは導入されていない状況にあると推察されます。その背景としては、前述の通り、国内におけるRPAの推進主体が、大手企業を顧客対象とするSIerやITコンサルティング会社である事と無関係ではないでしょう。

RPA普及における2つの問題とは?

前述の通り、RPAは現在「幻滅期」に差し掛かっていますが、今後さらに普及し、テクノロジーとしての「安定期」に入るためには2つの問題をクリアする必要があると考えられます。

1つは、「中堅・中小企業にRPAはどうしたら普及するか?」という問題であり、①金銭的な問題(コスト)、②運用上の知見の問題(ノウハウ)という2つの観点があります。

①②について補足すると、前者については、従来のRPAは、初期費用も含めると年間1000万前後が相場です。特に中小企業にとっては手の届き辛い価格帯のツールである事は間違いありません。

また、後者については、RPAツールの多くがいわゆる「ノーコード」であるとは言え、情報システムを専門とする訳ではないユーザー部門にとって運用が難しいものであったという事です。

なお、この1つ目の問題については、最近はクラウド型のRPAツールの登場によって解消されつつあると言えます。国産のツールでは、「BizteX cobbit」や「RoboticCrowd」が代表例ですが、比較的安価に導入出来、UI/UXに優れています。中小企業にとっても導入しやすいツールが市場に出回り始めている状況と言えるでしょう。

2つ目の問題は、「SaaSの普及」です。

※SaaSとは
ソフトウェアをインターネット上で利用する事の出来るサービス形態です。利用者であるユーザー側が必要な機能や分量のみを選択して利用したり、端末や場所を問わず、インターネットに接続出来れば、サービスを利用出来ると言う特徴があります。

詳細な説明は割愛しますが、日々サービスがアップデートされ、「UIが流動的なSaaS」と「指示された業務(動き)を繰り返すRPA」は基本的に相性が悪いと言われています。

特に、RPAの認識方式の1つである「座標方式」は非常に相性が悪く、タブやボタンの位置が変更されただけで、誤作動を起こすリスクがある点について留意する必要があります。

なお、最近では、SaaSを連携させる事で効率化や生産性の向上を狙うiPaaSという概念が注目を集めています。今後のRPAの普及を考える上で、重要な概念であるため、別記事で改めて解説させて頂きます。

最後に

いかがでしたでしょうか?

実際に調べてみるまでは、「RPAの流行は一過性の流行であり、実際に現在も利用している企業は少ないのではないか?」という仮説からスタートしましたが、実際は年商1,000億円以上の大手を中心に、多くの企業において導入されているというのが実態のようです。

そして、現在は、RPAとして過渡期を迎えており、そのメリット・デメリットが冷静に評価されつつあり、今後中小企業への普及が進むかどうかの転換点に来ていると言えるのではないでしょうか。

一方で、SaaSの普及というRPAにとって厄介な問題が横たわっている事も事実です。米国及び国内のトレンドを考慮すると、今後SaaSが更に普及していく事は疑いようがなく、iPaaSとの連携・棲み分けを確立出来るかがどうかがRPAが「安定期」に入れ上での論点だと言えるでしょう。

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