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好きを仕事にするのは辛いですか?

「好きを仕事にするのは辛いですか?」

文章を仕事にしてからよく聞かれる質問だ。もしかしたら楽しさよりも、辛さのほうが気になるのかもしれない。独立当初も聞かれたし、最近も仕事を休業している女の子に聞かれた。

この質問に対して、いつも「辛い」と答えている自分がいる。好きな文章を嫌いになりそうな日は何回もあった。いや、正直何度か嫌いになった。独立したての頃は、文章に赤が入るたびに、才能がないと思っていた。これまでを振り返ると、楽しいよりも圧倒的に辛いの方が多い。

好きなことは趣味がいい。その意見には大賛同だ。次に好きなことができた場合は、仕事にするのではなく、趣味の範疇に留めておく。なんて言ってみたものの、新しく始める好きなことは全部文章に繋がるからずっと頭を抱えている。

読書をしても「この表現方法いいな」だとか、映画を観ても「このカメラワークは文章に取り入れられる」だとか、頭のどこかでいつも文章に結びつけている。思いついたものや起きた出来事はすぐにメモをして、仕事の記事やnoteに書いてしまう。

先日「文章を書きたいんですけど、何から始めればいいですか?」と、とある大学生に聞かれたときの話だ。その質問に当たり障りのない程度に答えた後に間髪入れず、「好きな仕事ができているの本当に憧れです」と言われた。その瞬間に「辛い時間のほうが圧倒的に多いですよ」と伝えそうになった。これから始める人の芽を摘むのは違うと思ったため、「ありがとうございます」とだけ伝えた。

どんな職業も、軌道に乗るまでが辛いものだ。軌道に乗れば楽しい時間がきっと増えるはず。そう信じていたくせに、軌道に乗り始めてからも辛い時間の方が圧倒的に長いような気がする。

好きなことを仕事にする。その言葉の聞こえはいいかもしれない。どんな職業もなってからではなく、生き残るほうが難しい。もう文章を書かなくなった人はたくさんいる。何十年も同じ道を生きてきた人を見るたびに、「自分もこうなりたい」「どれだけの計り知れない苦労と努力を積み重ねてきたのだろうか」と希望と絶望の目で見ている自分がいる。

文章を書いてきた過去を振り返ると、コピーを書き始めたあの時期が一番辛かった。どれだけ書いても「NO」を突き返される。ダメな原因すらもわからず、夜な夜なコピーを書き続けた。何度突き返されようが、負けじと書き続けた。それでもクオリティは一向に上がらなかった。コピーなんて大嫌い。そんな言葉が勝手に口からこぼれ落ちた瞬間に、部屋の中でこっそり泣いた。

コピー提案最終日の深夜4時まで書き続け、いくつかの案が採用された。翌日コピーの提案をして、その中のコピーを少し工夫したものが採用された。コピーが決まったときのクライアントさんの嬉しそうな顔を見て疲れがどこかへ吹き飛んだ。

「ありがとうございます」

この言葉を聞いた瞬間に、涙がこぼれ落ちそうになった。辛い思いをしながらも最後まで諦めなくて良かった。正直楽しさのカケラもなかったけれど、またクライアントさんの喜ぶ顔が見たい。それが文章を仕事にしている理由でもある。

どんな仕事を選んでも、必ず辛い時間はやってくるものだ。それでも好きなことなら辛さを乗り越えられるような気がする。これは僕の場合だから、参考になるかどうかはわからない。現に「好きを仕事に」が向いていない人がいることも事実である。

辛さの向こうにはいつも感謝がある。歯を食いしばって深夜に辛いと思いながら書いたあの時間が、たったひとつの感謝で、すべてが報われたような気がした。どんな仕事を選ぼうが、感謝されるために、全力を尽くし続けたい。コピーの提案が通った日の夜に、1人で飲んだビールの味は格別に美味かった。

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