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難病になって3年が経ちました

9月が怖い。早く終わってしまえばいいとずっと思っている。もしくは9月をなくしてほしい。

9月には魔物がいる。それがいい奴なのか、悪い奴なのかはわからない。そういえば9月は気分が落ちやすくなる月だと周りの人も言っていた。何かが起きる原因は、夏休み明けで体がうまく社会にフィットしていないからかもしれないし、そのほかにも原因があるのかもしれない。

9月は自身が独立しためでたい月だ。大変ありがたいことに今年で4年が経ち、5年目に突入した。仕事は新しいことにも挑戦できているし、まだまだ伸びしろだらけである。

そんなめでたい月でもあるのだけれど、独立から1年を迎えた9月に過労で倒れた。そこから人生の歯車が大きく揺れ動く。他人から見れば転落なのかもしれないけれど、自身は人生に希望を見出したきっかけだと考えている。

過労で倒れたときに、過労だから休めばいいなんて甘い考えを捨てれば良かったと本気で後悔している。次第に目にもやがかかるようになり、ついには何も見えなくなって、ようやく病院へと足を運んだ。

全身の検査がはじまり、目の前に座る医師が深刻な顔をしている。目にたくさんの光を当てられた挙句、あまりの気持ち悪さに一人では立てなくなり、車椅子に乗せられて、院内をぐるぐるとたらい回しにされていた。

目にもやがかかったとはいえ、正直すぐに治ると甘く見ていた。医師からは聞いたことがない病名を伝えられ、自分の身に何が起きているのかがうまく把握できない。心音は徐々に上がり、目からは涙が勝手に溢れ出していた。難病なんて嘘だ。医師から告げられた言葉をまだ信じられなくて、何度も聞き返したのだけれど、結果は変わらない。僕はベーチェット病という難病に罹った。

ある程度回復するまでに1ヶ月半もかかった。自力の生活は成立せず、周りの補助のおかげで、自身の生活は成り立っていた。日中は太陽の光にやられ、夜は暗闇にやられる日々。時間が経てばたつほどに後悔が膨らんでいく。毎日のように枕を涙で濡らしていた。その一方で、難病は生に希望を見出す経験にもなった。

たくさんの人の支えのおかげで、社会に復帰することができた。どれだけ感謝しても足りないし、難病になった自身といまだにお付き合いをしてくれている人には頭が上がらない。

僕は無事に社会復帰を果たした。けれど、それはほんの序章に過ぎない。両目ともに白内障にかかり、左目は緑内障を併発した。2度の手術入院、自己注射と2年の月日が経ったいまも治療は続いている。医師からは一生付き合っていく病気だと言われており、その覚悟はできていたはずなのに、9月になるたびにその決意が揺らぐ。もう良くならないのではないかとか、一生このままは嫌だとか、いろんな思考が脳内を巡る。

難病には波があり、調子がいいときと悪いときの差が激しい。最近は自己注射をしなくてもいい程度には回復していたのだけれど、9月になった途端に、容体が急変した、体のあちこちに炎症が出てきたのだ。目にはじまり、口内炎で口内は覆い尽くされ、足や腰、腕の関節は固まって動かなくなった。

朝の目覚めは特に最悪だ。固まった関節を少しずつほぐす時間を要する。夜になったら楽になるわけでもなく、左目の光彩がほとんど切れかかっているため、夜道は気をつけて歩かなければならない。白い光が来たときは足を止めて。それが過ぎ去るのを待つ。その時間はいつもなんとも言えない気持ちになる。

9月に入ってから、ずっと不安ばかりが心を追い詰めてきた。2年が経った今も、回復の目処は経っていない。死にたいと生きたいの繰り返し。それでも生き続けるのは、生にまだ希望を見出しているからなんだろう。

そのなかでも今年の9月は特に酷い。難病の症状が一気に出てきた。あまりの辛さに予約なしで大学病院に足を運んだ。大学病院は予約を取っても、待ち時間が長いことで有名だ。必ず2時間は待たされる。予約のシステムが破綻しているのだから、もっと遅い時間を伝えてくれればいいとさえ思う。今回も例外なく、時間がかかるとある程度の覚悟をしていたのだけれど、僕の番が来たのは病院に足を運んでから4時間を過ぎていた。

視力検査に視野検査、瞳孔を開く目薬を挿され、目の奥にたくさんのライトが当てられる。診察の結果、やめていた自己注射を再開するとのこと。これで良くなると安心したと同時に、また注射を打つ生活が始まるのかと落胆もあった。

9月には魔物がいるんじゃないかとさえ思う。0月は独立した月であり、難病に罹った月でもある。9月が来るたびに怯えている自分がいて、柄にもなく、例年神社で何も起きませんようにと神頼みをする始末だ。神様なんて信じちゃいないくせに、いざというときは神頼みしかできない自分が歯痒い。

願わくば、8月が終わりに近づくにつれて、怯える自身が消えてなくなってしまえばいい。9月はいい思い出がある月だと胸を張って言える自分になりたい。独立したことだけを純粋な気持ちで祝える月にして、難病のことを一切考えないおめでたい月に来年はしてみせようと思うんだ。

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