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ライターから編集者になって思うこと

どうやら9月1日に独立4周年を迎えたらしい。「どうやら」と付けたのは。9月2日になるまで忘れていたためだ。この先もずっと文章を書いていくと思っていたのに、ひょんなことがきっかけで編集者になった。

人生の転機ってやつは思わぬところから現れるものだ。ある日、ライターの友人から「ライターよりも編集者のほうが向いてそう」と言われた。まさかと思いながら、編集者の仕事に応募してみると、なぜかはわからないけれど、採用に至ったのだ。

友人のひょんな言葉から始まった編者者というお仕事がいまは楽しくて仕方ない。いまもライターの仕事はしているのだけれど、ありがたいことにいまの仕事の大半が執筆ではなく、編集の仕事になっている。

ライターになった当初、自分の原稿に朱を入れる編集者が苦手だった。こっちの方がいいじゃんと思っていたのはただの驕りだ。本来どんなメディアにもそれぞれの見せ方があり、編集者はメディアの文脈に沿った文の書き方に文章を揃える必要があるのだ。もちろん誤字や脱字がないように校閲も行っているのは言うまでもないお話である。

編集者の意図を汲み取る力がなかった自分が情けない。いまでは編集者さんに朱を入れてもらえるたびに、自分の書いた文章がもっと良くなるとか、このような文脈で書けばいいのかとか、学びの方が多い。またライターと編集者が共により良いものを作り上げていく実感も湧いてきた。

時折、編集者とライターの関係性についての話題を目にする。そこでよく編集者はライターの上なのか?という問いについてたくさんの議論が交わされているのを目にしてきた。

これは持論だけれど、ライターと編集者に上下の序列はなく、編集者とライターはあくまでパートナーだと考えている。そもそもライターが文章を書かなければ、編集者という仕事は成り立たない。文章の主役はライターだけれど、それが上下の序列を作る要因だとは思わない。

編集者の役割は、ライターの視野をさらに広げ、より良いものを共に作ることや、ライターさんの思いを読者に適切な形にして届けることだ。もちろん編集者がいなくても、いい文章を書ける人はいるけれど、編集者の存在があったほうがいい文章になる確率は高いという持論である。

編集者の誰1人として、ライターの文章を酷いものにしてやるなんて愚かな考えを持っていないはずだ。これまでにたくさんの編集者を見てきたけれど、どんな編集者もライターが書いた文章をより良いものにしたいという気持ちが強かった。ときに厳しさもあるけれど、それはより良いものを作りたい気持ちが強いゆえに生まれた愛なんだろうといまは思える。

ライターが光であるならば、編集者は光をさらに輝かせる影だ。目に見える結果はライターに与えられ、編集者に焦点が当たらない。でも、それでいい。光が輝くためには影の存在が必要で、影は光よりも目立ってはならないのだから。そう考えると、影であることを誇りに思えるかつ二人三脚でより良いものを作りたい人が、編集者に向いているのかもしれない。

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ライターも編集者も独学でなったためか「ライターや編集者は独学でもなれますか?」と質問をされる機会が多い。どの職業も独学で成り立つけれど、導いてくれる人がいたほうが職業として成り立ちやすいし、生き残れる確率は上がると思う。

独学の大変さは、知識を自分で見つけなければならないことだ。書籍や講座、検索などありとあらゆる場所から情報を取ってくる必要がある。どんなものにも共通して言えるのだけれど、何もわからない状態だと「わからないことがわからない」状態に陥る場合がほとんどだ。ところが、企業に属せば、お金をもらうかつ、実践で文章について学べるという利点があるし、疑問点を質問することもでき、成長速度も速い。

ただ企業に属したからといって、独学が必要でないかと言われればそれはちがう。どんな職業も学び続けなければ生き残れない。これはお金をもらいながら学ぶか、自分の力で学ぶかのちがいだ。

加えて、どんな職業も仕事があるから職業として成り立っていて、その仕事を得るためには営業が必要になる。コネや実績がない状態で仕事を得るのは簡単ではない上に、自らが動く必要がある。営業は断られる場合がほとんどだし、断られてもめげない気持ちが必要だ。誰かが見つけてくれるなんて虫のいい話は滅多に起きない。

編集プロダクションに所属している場合は、営業の人たちが獲ってきた仕事を任される場合がほとんどだ。与えられた仕事で実績を残せば、次に繋がることは言うまでもない。これは独学、企業に属するのどちらにも言える話だ。

僕はコネがない状態で編集者になったため、自分で営業を行っている。もちろん断られる場合もあるけれど、会社員時代に営業をしていたため、断られることには慣れている。とは言っても、断られるすぎると心がめげる人も多いだろう。

以前、転職業界の仕事を受けたときの話だ。業界の人に営業で断られるのが辛いと相談したときに「断られる=自分がダメではなく、ただ企業文化が合わなかっただけだよ」という話を聞いて、心がかなり楽になった。もちろんスキル不足の場合もあるため、そこは自力でなんとかするしかない。ただ業界の人からの言葉は説得力があって、それ以降はどれだけ断られても、企業文化に合わなかっただけと自分を鼓舞することができた。

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いろいろ偉そうに言葉を並べてきたけれど、自身もまだまだ勉強中の身だ。至らぬところばかりだし、うまくいったことよりも失敗の数の方が圧倒的に多い。それでもたくさんの人の支えのおかげで、4年間もフリーランスとして生き延びることができたのも事実だ。そして、この結果は僕1人の手柄ではないことだけは頭に入れておきたい。

自分の実績にはまったく満足していないし、もっとやれるだろうと思っている。これから先も執筆だけでなく、編集のお仕事もたくさんしていくつもりで、果敢に新しいところに飛び込んでいくつもりだ。

ただひとつだけ胸を張って言えるのは「文章を仕事にして良かった」である。文章があったからたくさんの経験ができて、その積み重ねがいまの自分を形成している。文章がない生活はもう考えられないし、考えたくもない。

長々と書きましたが、皆さんのおかげで、独立4周年を迎えました。本当にありがとうございます。そして、これからも末長くよろしくお願いします。

ありがとうございます٩( 'ω' )و活動資金に充てさせて頂きます!あなたに良いことがありますように!