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都合の良い解釈に身を任せて

今日はなんだか胸騒ぎがする。台風が近づいているらしく、窓の向こうの景色はどんよりとしていた。深い眠りから覚めた瞬間に、昨日見た夢が自身の心を抉り取る。いきなり知らない人に連れ去られ、お金を出せと脅された。どうすればいいかわからずに困惑していると、なんも持ってね絵のかよとナイフで刺殺される夢だ。

僕はよく見た夢をネットで検索をかける。夢占いによると、殺される夢はいいことが起きる前兆で縁起がいい夢らしい。でも、殺される場面を鮮明に覚えているのは胸がざわつく。最近床に布団を敷いて寝ているため、腰が痛くて仕方がない。寝ても覚めてもなくならない倦怠感。それと同時に襲いかかる空腹感。だらだらと過ごしていると、仕事の時間になっていた。最悪だ。すぐさまPCを開いて、社会人の役を演じてみせる。この睡魔に完膚なきまでにやられて、もう少し寝ていたい。それでもなんとか道化に塗れることで、睡魔に打ち勝つことができている。

何も食べていなかったため、腹の虫が大きな音を立てた。ここが家で良かったと安堵するほどの大きな音だ。どうやら生物は空腹時に、感覚が研ぎ澄まされるらしい。お腹が満たされた状態の人間は弱い。やはり、仕事は空腹時に限る。そんなことを考えながら、仕事を進めていた。

空がどんよりとしている。少しずつ雨がぱらついてきた。在宅勤務で良かったと安堵する。強い風が窓を叩く。そして、徐々に強まっていく雨も窓を叩き始めた。少し不安になったけれど、ソファの上ですやすやと眠る猫を見ているとどうでも良くなった。再度PCに目を向けて、送られてきた原稿を見直す。自分には書けないという絶望と、これほどまでに素晴らしい原稿を編集させてもらえるという幸福感が同時に襲ってくる。

最近は少しずつ文章を書いている。執筆スピードは落ちているため、どうにかしたい。文章は筋トレと同じで、書き続けなければ筋力が落ちていくものだ。トレーニングではないけれど、もっと色々な場所で文章を書きたいと思った。

ほんの少し前までは文章を書くのが好きじゃなかった。その理由は、自分の文章に自信を持てなかったためだ。ふとしたときに過去に書いた文章を読み返していると、案外いいこと書いてるじゃんと自分の書いた文章を好きになることができた。人間とは、都合の良い生き物である。良い思い出はどんどん美化されていくのに、悪い思い出はいつの間にかなかったことにしてしまう。だが、記憶が失われたとしても事実そのものがなくなるわけではない。良いことも悪いことも確かに存在した。その事実からは逃れられない。

思い出がなくなるその前に、今日起きたことを文章に書き残していく。そして、ふとしたときに読み返して、なかったはずの記憶をじぶんの脳内に留まらせる。事実は変えられないけれど、解釈は変えたっていい。都合の良いように解釈して、人生を都合のいい人生へと書き換える。僕はそうやって少しずつ生きやすさを手にしていくのだろう。

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