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雨のように泣いてやれ

雨のように泣いて、晴れ間が差すたびに声を枯らして。

涙を全部、雨の日のせいにして、笑顔を晴れた日のおかげにして。

涙が出るたびに君のことを思い出して、その度に切ない気持ちになってしまう。

春が終わり、鬱陶しい梅雨の時期がやってきた。

いつ降るかわからない雨。天気予報はまるであてにならず、常に空の顔色を伺いながら生活を続けなければならない。

あれはある夏のこと。

雨の日に君の家に足を運んだ私。君に愛想を尽かしていた私は君に会いに行くのが億劫になっていた。君と会うのが億劫になるぐらいには二人の関係性はもう破綻していたの。

雨が降る午後。雨ですぶ濡れになった私を見て、バスタオルを渡してくれた君は涼しげな顔で大好きなバニラアイスを舌で転がしていた。

「僕たちの関係はアイスクリームのようにドロドロに溶けてしまったね。溶けてしまった関係はもう戻せないから僕たちもう終わりにしよう」

君の好きなバニラアイスを口で転がしながら私は、君の話を聞いて二人の関係が終わりだということを悟った。

本当は私も今日君にお別れのセリフを告げようとしていたんだよ。まさか私と君の波長が最後の最後に合ってしまうなんて思ってもみなかったの。

君とお別れをして駅に帰る途中に大粒の涙が溢れる。声にもならない声。一粒も出ないと思っていた涙。いざお別れが決まると人は寂しくなるものね。

二人の別れが決まった途端に君の良いところを思い出してしまったの。

なかなか寝付けずにいるときに、腕枕をしてくれたこと。私が歩道側で君が車道側を常に歩いてくれていたこと。お酒が弱くてすぐに顔が赤くなってしまう私を見て、いつも「可愛いね」って言ってくれたこと。

辛いこともたくさんあったけど、君とお付き合いして本当に良かったって。でも時間がたつにつれて、君との思い出もすこしずつ薄まっていくのが少しだけ寂しいや。

君はいつか二人だったことすら忘れてしまうのかな。まあそれでも私は構わないんだけど、なんて思えるほどまだ強くなれそうにないよ。ごめんね。

どれだけの時間がたてば君が思い出になるんだろう。思い出にしたい、したくないが行ったり来たりして、なんだかまだうまく前に進めそうにないや。

二人が一緒になった理由を見つけようとするたびに虚しくなって、行き場のない約束を思い出すたびに胸が痛くなる。

君が思い出になる前に、もう一度君の無邪気な笑顔で騙してよ。私じゃなきゃダメだって君の口からもう一度言ってよ。隣にあったぬくもりや笑顔、優しさはぜんぶぜんぶ私のためがよかったの。

君との思い出から抜け出せないあれもこれも。

空を見上げ、流れる大粒の雨を見て、君のことをまた思い出す。

泣いてしまったことを全部雨のせいにして雨のように泣いてやれ。

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