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これまでに読んだ自分の人生を豊かにしてくれた本(9冊)

小学生の頃は、図書室で「ファーブル昆虫記」や「日本の歴史」を読むのが好きだった。しかし、中高生のときは部活動中心の生活を過ごしていたこともあり、学校の授業以外で本を読むことはほとんどなかった。

そんな私が再び本を読むようになったきっかけは、大学への進学に伴い、自宅から1時間以上かけて通学するようになったことだ。
そのなかには40分以上快速電車に乗り放しの区間もあった。
毎日の電車内でどのように時間を過ごそうかと考えたときに、SNSなども今ほどはなかったので、手にとったのが本だった。

今では長時間電車に乗って通学・通勤することもなくなったが、通勤の際に10分でも乗車時間があると、目的地に着くまでに本(または電子書籍媒体)を開くくらいには、読書をすることが毎日の習慣になっている。もちろん、家やカフェでも本を読んでいる。

本を読むことが好きな人や日常的に読んでいる人はたくさんいると思うので、他の人が読んでいる本について聞く機会があれば面白いと思う。
そこで、自分の中での読んできた本の整理もかねて、私がこれまでに読んで特に印象に残っている、人生を豊かにしてくれた(ている)と感じた本について紹介したい。


暇と退屈の倫理学

私にとって読んでいて知的好奇心が満たされる本とは、自分にとって身近なものだが深くは考えたことはなかった事柄について、これまで考えたことのない方法・視点から検討され、その歴史や意味、立てられた問いに対する解が明らかになっていくような本だ。
その観点からすると、この本ほど知的好奇心が満たされながら読み進めた本はないと感じている。
本書では、「暇」と「退屈」というごくありふれた状態について、人間の歴史的な経緯や、労働や消費といった経済的な関係、更にはハイデガーといった哲学者の考察などを通じて、それがなぜ存在するのかや対処法について書かれている。それだけでなく、そこから人生や日常の楽しみ方についてまで考えを広げることができる。
「暇」や「退屈」を感じたことがある人は、是非本書を一度読んでみてほしい。


センスは知識からはじまる

センスというと、絵を上手に描くセンスがあるというふうに、センスがある/ないといった生まれ持った才能のような話になりがちだ。
しかしセンスとは、特別な人に備わったものではなく、「知識の集積」という考えはまさに目から鱗だった。
確かに基礎的な知識を身につけることで、ある程度のことは現状より上手くできるようになる気がする。自分は美的センスがないと思っていたが、例えばわかりやすい資料作成の本を読んでから実践すると、以前より見やすい資料を作ることができるといったふうに。
苦手意識のある分野でも自分にはセンスがないからと逃げるのではなく、何事も知識を習得して、少しずつでもセンスを養っていこうと前向きな気持ちになることができた。


やりたいことは全部やれ!

「企業参謀」などの著書がある経営コンサルタント・大前研一さんの本だ。
本書はコンサルティングについて書かれた本ではなく、大前さんの人生の楽しみ方からはじまり、アウトドア体験や旅の極意などがふんだんに書かれている。
私は社会人になりたての時期にこの本を読んだが、その頃は思いっきり遊べるのは学生まで、社会人になれば学生時代とちがって遊ぶ時間もなく仕事中心の生活にしなければならない、と思っていた。しかしこの本を読んでから、社会人になっても、むしろ社会人だからこそいろんな遊びをしていいんだ、遊びについても真剣に考えないといけないんだと衝撃を受けた。


弱いつながり 検索ワードを探す旅

私は学生時代から旅行をするのが好きだ。それは憧れの場所に行きたかったり、知らない土地の文化や風土を感じたりしたいといった思いからだ。
個人は環境に取り込まれており、インターネットはそのつながりをより強くする。自分を変えるには、環境を変え、人生にノイズを入れる必要がある。それを可能にするのは、身体の移動であり、旅であり、偶然にさらされた弱いつながりだ、というのが本書の提案だ。
本書をきっかけに、旅をすることの大切さや、いつも同じ習慣や思考だけに慣れ親しんでいるだけではなく、計画できない偶然を楽しむ豊かさを知ることができた。


人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

AIの出現により労働者の仕事がなくなり、資本を持った一部の人以外は貧しくなる。AIの発達による生産性の向上の恩恵を多数派にももたらすためにはBI(ベーシックインカム)が必要だ。その主張以上に、私が本書で印象に残っているのはその「あとがき」部分だ。
「あとがき」では、思想家で小説家のバタイユの提示した概念を引きながら、物事のなかに直接のよろこびを見出すことの大切さが説かれている。現代社会に生きる私たちは、将来の利益のために今を犠牲にして、現在の時間を楽しむことができていない。しかしAIの発達によりBIが導入され、最低限の賃金が保障されれば、有用性=いかに役に立つかばかりにとらわれずに、至高性=役に立つか否かにかかわらず、価値のあるものごとが重要になるだろう、と。
私が生きている間に、みんなが遊んで暮らせる社会が到来するかはわからないが、たとえそのような社会が来なくとも、毎日のなかで、何かの目的にとらわれずに、今この瞬間を楽しむ気持ちは忘れないようにしたい。


旅の窓

言わずと知れたバックパッカーのバイブル「深夜特急」の著者・沢木耕太郎さんの「もうひとつの旅の本」と呼ばれているのが本書だ。
沢木さんは、ある時期から旅先でカメラを持って歩くようになって、周囲の風景やその土地の人々を撮っていたらしい。そのようにして旅先で撮った写真と、文章が見開きで順に掲載されている。
ひとつひとつの写真に加えて、沢木さんが写真を通じて描き上げる物語には、旅をする醍醐味のようなものが詰まっている。
私もnoteをはじめとした各種SNSで、旅先で撮った写真ととともに、文章を書くようになったのも、今思えばこの本の影響がかなり大きいと思う。


燃えよ剣

新選組・鬼の副長と呼ばれた土方歳三の、武州での百姓時代から京都での活躍、そして戊辰戦争終結の地・箱館での最期が描かれた、司馬遼太郎さんの歴史小説だ。
司馬遼太郎作品では、「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」も面白い。古い体制に立ち向かっていったり、新しい時代を切り拓いていったりするような物語だ。しかし、西南戦争で敗れた西郷隆盛を描いた「翔ぶが如く」や本書はそういった物語と同じかそれ以上に惹かれる。本書のような、時代に翻弄されながらも、自分の信念に忠実に、忠義を尽くして散っていく者の物語に魅了されるのはなぜなのか深く考えさせられる作品だ。


魔王

国家権力や集団心理のような大きい存在に、一般の人々が巻き込まれる怖さは、海外文学をはじめとした多くの物語で描かれているテーマだ。
この「魔王」という小説も同じテーマを扱っており、ファシスト的政治家やそれに扇動される大衆が登場する。そのような世の中の流れに立ち向かう主人公の口癖が、「考えろ考えろ」だ。
政治の分野に限らずとも、アルゴリズムやリコメンドなどの存在により、考えなくても何となく毎日を快適に過ごせる環境に生きる私たちこそ、主人公のように一旦立ち止まって考える姿勢が必要ではないかと教えられた。
伊坂幸太郎作品では、「魔王」やその続編「モダンタイムス」のほかにも、「ゴールデンスランバー」や「火星に住むつもりかい?」でも、大きなものに巻き込まれてしまう危機感が共有されており、方法は違えどその抵抗手段が示されているように思う。


武器よさらば

ヘミングウェイはパリ時代の師から、創作にあたっては「形容詞を信頼するなかれ」と教わったらしい。そういった教えにより、形容詞に頼らない、ソリッドで研ぎ澄まされた文体が生まれたのだろう。
本書においても、第一次世界大戦という過酷な状況の描写にあって、過度に形容詞を用いない独特な心象表現を感じることができる。そういった文章に触れることで、「美しい」「悲しい」といった形容詞のもつ安易なラベルのもつ危うさや、感覚を描写するための内省や観察力の重要性を学んだ。


ひとつの本、ひとつの文章を通じて、今まで知らなかった考えや自分の指針となる教えに出会い、自分の世界や価値観が変えられる。それゆえ私は、読書は人生を豊かにしてくれると感じている。

みなさんも連休なども活用してゆっくり読書を楽しんでみてはいかがでしょうか。


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