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「ゾンビつかいの弟子」を読み終えて……。

 森とーまさんの長編SF「ゾンビつかいの弟子」(カクヨムの方で文字数を確認したところ、字数は20万字弱)を読み終えて、twitterにもさきほど感想を書いたのですが、その後、「ゾンビつかいの弟子」の目次を読んでいると、

〈反響はまだまだお待ちしております。反響まとめマガジンにて保管して何度も読み返して私がニヤニヤしたいので、ぜひ「記事」で投稿してください(ワガママ)。〉

 との記述が……。

 …………( ゚Д゚)

 しかるべきひとたちが多くの賛辞を送る中で、いまさら私が、という気がしなくもないのですが、noteでも書かせていただくことにしました。面白い作品は何度でも面白いと言う! 

 はっきり言って読後の勢いのままに書いているので、詳細なレビューや丁寧な考察を求めているひとは回れ右をして、まだ読んでいないひとは、ここをクリックしなさい。

 ※「ゾンビつかいの弟子」「FAKE」の内容に触れてます。ネタバレには出来る限り配慮しますが、読んでないなら、上の〈クリック〉をクリックしなさい。いいですね。分かりましたか。もう一度、言いますよ。クリックしなさい。

 では本題に入ることにして、まず私を知らないひと(は、当然いっぱいいますよね 笑)に説明しておくと、本や映画の感想だったり、拙い小説を書き散らかしたりしてる者です。何故、そんな自己紹介を敢えてするかというと、まず自分がレビューを書くことがある人間だということを知ってもらいたいのです。

 で、まぁあくまで私の場合は、という話ですが、レビューを書くようになって悪い癖だなぁ、と思うようになったのが、どんな文章を読んでもレビューの体裁に整えようとしてしまうことです。でも物語に没入して、なおかつ、自分の内からわき上がってくるのが野暮ったい言葉だけならば、素直に「面白かった! みんなも読んで!」で終わらせたい。レビュー本位の感想を長々と語るよりも、そっちのほうがずっと気持ちがいい。

 例えば本作は、絵にすれば壮大なヴィジョンを、映像的に派手に広げるのではなく、淡々とした地味で静かな世界に文章の力で落とし込んでいくような導入で、相反する歪な魅力を感じていたのですが、それが後半に行くにつれ、この歪さが修復されていくかのように静かな文章に情動が加わり、物語の世界観がさらに広がっていく……、正直に言います。最初はこういう導入のレビューを書こうと考えていました。本作は間違いなくそんな魅力を持った作品だ、と力強く言えます。

 ただ……、

 うーん。なんか粋じゃないんだよね。そうじゃないんだよ。もちろんそこも魅力だけど、自分が本当に一番の魅力として語りたいのは……という想いがありました。

 なのでtwitterの方では作中の内容にはあまり触れずに、ちょっとした感想と素直な面白いとともに言葉を締めさせていただいたのですが、noteのほうではもうすこしだけ内容について語りたいと思います。時間が経って、自分が魅力に感じていたことがすこしだけまとまってきたので(再読をしていない状態で書いているので、改めて読めばまた違った感想を抱くかもしれません)。

 私がこの物語をどう読んでいたか、というと……、

 もちろん前提としてSFとしてもパニック小説としても素晴らしい作品です。ただ私はそれ以上に、青春小説、家族(疑似家族)小説として本作に魅力を感じていたように思います。

 まず家族(疑似家族)小説として、本作の主要なキャラクター(伊東君にも神白君にも、さらに言えば数田にも)には兄弟あるいは兄妹がいて、それとは別に伊東君とビィの関係性はまさに疑似兄妹という関係で〈始まって〉いるし、そしてここには異論のある方もいることを承知で書くならば、〈ブロマンス〉というジャンルに疎い私は、伊東君と神白君の関係も疑似兄弟を見るような感覚で読みました。森さんの短編には「FAKE」という作品もありますが、ある意味では〈疑似親子もの〉の変形版と言えなくもないことを考えると、本作における〈師匠〉と〈弟子〉の関係も疑似親子と捉えることだって……さすがに、それは強引すぎるかもしれませんが、

 ただ……、

〈本物〉なのか〈偽物〉なのか。それが森さんの作品では重要なモチーフになっているように思っていて、〈本当〉の家族ではないからこそ、だからこそ補えるもの、欠けてしまうもの、それを見る冷静な眼差しに、私は、とても好感を持ってしまうのです。

 そしてこの〈本物〉と〈偽物〉の対比は、〈人間〉と〈ゾンビ〉の関係にも言えて、うっかりネタバレしてしまうのも怖いので深くは突っ込みませんが、ある名作SF(←このクリックは自己責任で)を思い出すひとは多いんじゃないかと思います。この構図の中で、描かれる思考や関係性の変化がとても魅力的に映りました。

 ……と、まぁ結局noteのほうではレビューのようなものを(全然まとまりきってないなりに)書いてしまいましたが、私が何より言いたいのは「面白かった! みんなも読んで!」であり、詳細なレビューや考察に関しては別のひとが書いたものを読みたい(なので、みんな本作を読んで、感想書いてね!)。

 なので最後に青春小説としての魅力に関して一言添えて、この記事を終わらせたいと思います。

 一人の青年が成長(最初の頃からの屈折は残しつつも)し、変わっていく姿が、この物語の中を生きる人々の姿が、私をどうしようもなく引きずり込んでとらえ、離しませんでした!

 森とーまさん、素敵な物語をありがとうございます!

 

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