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私は「#私の不思議体験」が書けない

 こんばんは、もしくは初めまして。noteでホラー小説を集めているサトウ・レンと申します。

『黒い家』『キャリー』『墓地を見おろす家』『沈黙の教室』『パラサイト・イヴ』『隣の家の少女』『バトル・ロワイアル』『夜市』……etc

 と、まぁ挙げだしたらきりがないくらい、昔からホラー小説が大好きで、私の灰色の青春を救ってくれたのはホラー小説と言っても過言では……いや、それは過言ですね。小説は全般好きですが、特に好きなのがホラー、という感じで思っていただけたら、嬉しいです。

 そして私がホラーの収集を始めたのと時を同じくして、こんなnoteのお題が出されました。

 タイミングを見計らったかのような投稿に、すこしだけ申し訳なさも感じてしまいましたけれど、もちろんまったく偶然です(なのでこれこそが「#私の不思議体験」か、と思ってしまったくらい 笑)。

 怖い話が読みたい私にとっては、とてもありがたい企画で、この数日で色々な実話怪談や怖いエッセイと出会いました。「ホラー小説収集マガジン」はあくまでホラー小説という括りで集めていますが、そもそも小説とエッセイの垣根って曖昧なものですから、小説的な面白さを持つものや琴線に触れるものがあれば、ぜひとも蒐集したいと思っています。

 先日、蒐集させていただいた逆佐亭裕らくさんの、

 この記事なんかはまさにそうで、軽妙な語り口の末に宿る恐怖が印象的な作品で、ぜひともホラー小説ファンにも読んで欲しい作品になっています。

 ……と、そしてここからが本題。

 私も何か一本、「#私の不思議体験」で書けないかなと、ここ数日うんうんと頭を悩ませていたわけですが、考えても考えても出て来ない。私はそういう怖い体験が皆無なのです。

 ホラー好きということで、たまに「幽霊っていると思う?」とか「ねぇ、もしかして視えるの」とか聞かれたりすることがあります。前者に関してはいるかいないか分からないから面白くて、どっちかはっきり分かったら詰まらないなぁと考えてしまう人間で、後者に関してはそれは霊媒師に聞くべきことでは、と苦笑いとともに受け流してしまいます。餅は餅屋に聞きなさい。ホラー好きは煎餅屋くらい違います。というくらい、そういう経験とは縁がない私なので、今回はパスするつもりでした。


 ……ただ数時間前のことですが、ひとつだけ思い出したんです。

 逆になんであんな不思議な体験を忘れていたんだろう、と思うような体験です……。

 あれは私が高校時代の話です。私の通っていた高校は共学でしたが、私がその高校に入学するすこし前までは女子高だったこともあり、女子の比率が多い学校でした。田んぼに囲まれたド田舎に生まれた私は市内にあるその学校まで、いつも自転車で通っていました。

 これは高校時代の同級生との話です。彼女は私の唯一の異性の友達でした。本名は言えないので、鈴木さんという仮名を使わせていただきます。最初は佐藤さんにしようかと思いましたが、私のアカウント名と被ってしまうので(笑)

 鈴木さんはいわゆる「霊が視えちゃう」系の女の子でした。「あ、あそこに、あそこに女の人が……!」みたいなことをオーバーなリアクションで騒ぎ立てたりすることもあったらしく、一部の同級生の女の子たちからは「目立ちたがり屋」と陰口を言われてたそうです。実際にその陰口を聞いたわけではないのですが、普段は人懐っこい雰囲気で周囲から好かれている印象があったので、当時は意外に感じていました。

 ただ霊が視えた時の鈴木さんと居合わせたことがなかった私は、そのオーバーリアクションがすごいという話を聞いても、「ふーん」としか思えませんでした。実際にその場を見たわけではないので、大袈裟に言っているだけだと思ってたんです。冷めた学生ですね(笑)

 確か高校二年の夏頃だったと思います。

 その時、鈴木さんは私の隣の席だったこともあり、私はあの場面を誰よりも間近で見てしまったのです。

 とても暑い日で、額からの汗が拭っても拭っても流れ出て止まりませんでした。

 そんなクラス全体が暑さでだれていた日に、鈴木さんだけは汗ひとつない真っ青な顔で、こちらまで伝染してしまいそうな緊張感を漂わせていました。

 朝から気になっていて、私は二限目の授業の後に、「大丈夫?」と聞いてみたのですが、「大丈夫」と全然大丈夫じゃなさそうな表情で答えられるだけでした。三限目の後には、思い切って早退を勧めてみましたが、首を横に振られるだけです。

 そして四限目の授業中。

「うわぁぁぁ!」
と隣の席の彼女が叫び声を上げたのです。

「なんなのよ。あんた! 来るな! 来るな!」
 冗談みたいな本当の話なんです。本当に怖かった……。彼女が誰もいない場所に怒鳴っていて、みんなぽかんとした表情を浮かべていました。

(;゚Д゚)←私もきっとこんな顔をしていたと思います。

 それで……、そのまま鈴木さん、帰っちゃったんです。教卓に立っていた先生も呼び止めることを忘れて、立ち尽くしていました。

 その後……?
 鈴木さん、その日から学校に来なくなって中退しちゃったんです。彼女のことが気にならなかった、と言えば嘘になりますけど、学校に来なくなった彼女に会いに行けるほどの間柄でもなかったんです。

 それから……?
 それきりです。小説ならここから話を広げることもできるんですが、これは現実ですからね。
 小説なら、例えば学校の歴史を調べたら、その教室で自殺した生徒がいた、とかね。

 でもこれは嘘みたいな本当の話なんです。一時期流行った言葉を使わせていただくなら、「信じるかどうかはあなた次第」というやつですね。

 


 …………という昔の知り合いを使った嘘のエッセイをでっち上げて、noteに投稿しようと思ったのですが、投稿ボタンを押す直前、電話が鳴ったんです。

 高校時代の同級生からでした。

「ねぇ、サトウくん。鈴木さんのこと覚えてる?」
「え、あ、あぁうん覚えてるよ」なんでこのタイミングで、と緊張と不安で手が震えました。「……それがどうしたの?」

「ついさっきのことなんだけど……、


 死んだんだって

【追記】何故なんでしょうね。私は鈴木さんの自殺の報せを聞いた後、投稿をやめて、下書きを全部削除したはずなのですが……。

 消しても消しても、また投稿されているのです。