演奏する時のピッチは?
1955年に国際標準化機構(ISO)によって標準のピッチがA=440Hzに定まりました。
ポピュラー音楽ではこのA=440Hzで曲が演奏されることがほとんどです。
しかし、クラシック音楽においては様々なピッチが採用されています。
多いのがA=442Hzですね。
今のオケはこれが多いような気がします。
様々なピッチによる演奏
例としてモーツァルト(1756~1791)の交響曲第29番イ長調K201を聞いてみましょう。
この演奏はA=442Hzのような気がします。正確に測っていないですので、不確かですけど。
お次はこちらです。
かの有名なヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)とベルリンフィルの演奏です。
カラヤンは442Hzより高い446Hzでチューニングをしていたという話を聞いたことがあります。
4Hzしか変わっていないのでどこが変化しているのかわかりにくいと思います。
しかしピッチを高くすれば演奏は華やかに聞こえます。
彼なりに考えだした音楽表現の答えなのでしょう。
そしてお次はこちらです。
上の2つを聞いた後では明らかに響きが違うことがわかると思います。
これは古楽器による演奏、すなわち楽器も作曲者が存命だった時代のものを扱い、当時の演奏習慣に基づいて演奏されるものです。
この頃ピッチは基準となるものが定まっていませんでした。地域によって、あるいは国によって様々なピッチが混在している時代でした。
古典派時代、ロマン派初期の音楽は古楽器の演奏においてはA=430Hzで演奏されます。
作曲家でいうとハイドン(1732~1809)、モーツァルト、ベートーヴェン(1770~1827)の古典派時代、ウェーバー(1786~1826)やシューベルト(1797~1828)のロマン派初期時代、メンデルスゾーン(1809~1847)、ショパン(1810~1849)の中期ロマン派時代まではこのA=430Hzを使用して演奏されています。
なぜかメンデルスゾーンやショパンと同期のシューマン(1810~1856)になると古楽器による演奏が少なくなるのが不思議ですが・・・
話はそれましたが古楽器の演奏によるものは基本的にピッチが低くなります。ピッチが低くなると少し仄暗い落ち着いた響きになります。
皆さんはどの演奏が好きでしょうか。私は古楽器による演奏が好きなので、古典派や初期ロマン派の作品を聞くときは古楽演奏者の演奏を多く聞いてしまいます。
A=442Hzだと私には少し華やかに響きすぎている気持ちになるので、古楽器を知ってからはあまりこのピッチで聞くことが減りました。あくまで個人の感想ですけどね。
バロック時代のピッチ
続いてはこの作品で違いを聞いてみましょう。
ヘンデル(1685~1759)の『ディキシット・ドミナス(主は言われた)』HWV232です。
こちらがおそらくA=442Hzでの演奏です。
続いてはこちら。
違いはすぐに分かると思います。
バロック時代の音楽を古楽器で演奏する際はA=415Hzで演奏されることが多いです。
このピッチになると半音低く聞こえるようになります。
この作品の1曲目はト短調だが、A=415Hzで演奏されると嬰へ短調で演奏しているように聞こえます。もちろんバロック音楽は古典派時代より前の音楽なので、この時代も決まったピッチは存在していません。
もうひとつ聞いてみましょう。
また同じ作品でもまた雰囲気が変わりましたね。
この演奏はA=392Hzで演奏されています。
このピッチだと全音低く響きます。なので、ト短調で演奏してもへ短調で聞こえてきます。
このA=392Hzはヴェルサイユピッチと言われています。
しかし、これらの古楽器のピッチはあくまで便宜上使用されているだけで、きまってこのピッチで演奏されていたことを示すものではありません。
実際にヘンデルが使用していた音叉はA=422.5Hzだったみたいです。
このようにピッチの違いによって音楽を楽しむのもまた一つの在り方です。
皆さんはどのピッチでの演奏がお好きでしょうか?
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