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バロック時代の組曲

バロック時代の組曲というのは、リュートやチェンバロ、ヴァイオリンなどの楽器を独奏楽器とするものでした。

そこには
①調は一つの調のみ
②舞曲が用いられる

ことが特徴です。

なので組曲ハ長調となった場合、そのすべての曲がハ長調で構成されることになります。

そして各曲には当時の舞曲が使われていました。
基本的には4つの舞曲が使われており、
①アルマンド
②クーラント
③サラバンド
④ジーグ

の4曲の構成が基本的な構造になりました。
これは緩やかのテンポの舞曲と、速めのテンポをもつ舞曲が交互に組み込まれています。

速い順番に並べると、ジーグ→クーラント→アルマンド→サラバンドとなります。

またこの他にも②と③の間、または③と④の間に異なる舞曲が挿入される場合があります。そこではメヌエット、ブーレ、ガヴォットなどがあげられます。

そしてこの組曲の特徴としては速度標語が書かれていないことです。
これは当時の作曲家たちは演奏者に速度標語を示さなくても、演奏すべきテンポはわかっているだろうと思っていたからです。もしバロック時代の組曲の楽譜にテンポが記されていた場合は第3者による注釈だと思ってください。

一例ではありますが、ブクステフーデ(1637?~1707)というデンマーク出身でドイツで活躍した作曲家の組曲ホ短調です。
これが定型的な組曲のスタイルでしょう。

そして奥深いのはイタリア式、フランス式と国の様式によって演奏解釈を変えなくてはいけません。

例えば②のクーラントはイタリアではコッレンテといいます。ただ読み方が変わっただけではなく、組曲としてのクーラント、コッレンテは別物です。

クーラントは4/6拍子や3/2拍子などでテンポもそこまで急速なものではありません。
コッレンテは3/8拍子などでテンポも速く速いパッセージが特徴的です。

バッハ(1685~1750)は多種多様な組曲を遺したので演奏する際はイタリア式、フランス式明確に分けて演奏する必要があります。

イギリス組曲第5番ホ短調のクーラント9:46~
パルティータ第6番ホ短調のコッレンテ11:04~

その違いを聞いてみてください。

クーラントは装飾音を利用して優雅さを演出していますが、コッレンテは装飾音の入る隙間もなく音が詰め込まれている印象を受けます。

このように各国の音楽の様式をしっかり理解していないとバロック時代の組曲は弾けません。

先程のテンポの話でもそうですが、演奏すべきテンポというのを演奏者自身が理解して決定しなければいけません。

メヌエットも色々なスタイルのメヌエットが存在しており、例えば1小節に1和音しか現れない場合は、1小節に3つの和音をもつメヌエットよりも速く演奏しなくてはいけません。

8分音符ごとに和音が変わる曲はより遅く弾かなければいけません。和音の移り変わりをしっかりと聞かせるためです。

このように複雑な事情が絡んだものなので、習得には時間がかかるでしょう。しかし音楽の歴史を深く知る上では組曲の存在はとても重要なものなのです。


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