マガジンのカバー画像

一歩進んだ音楽理論 和声学編

50
和声についてのあれこれをご紹介していきます。
運営しているクリエイター

#和音

和声の学び 一歩進んだ和声学

以前簡単な音楽理論を紹介していました。 今回から一歩進んで和声学を紹介していこうと思います。 ここでは古典的な和声を紹介していきましょう。 こちらも合わせてご覧いただくとより分かりやすくなると思います。 1 和声の学びにあたって音階(スケール)の起点となる音を主音(トニック)といいます。 ここでは主音をローマ数字のIで表します。 以降上に向かってII、III、・・・と表します。 最初は3和音(トライアド)を中心として扱います。 和音というのは基本的には3度の音の積み

和声における連結② 一歩進んだ和声学 Part 6

前回では様々な和音の連結を行ってきました。今回では例外的な連結についてご紹介します。 1 II→Vの連結IIからVへの連結の場合はレ(D)の音が共通音ですが、この時は保留せずに後続和音(V)に最も近い音に下行させて、配分を一致させます。すなわち、ここではレの音をシ(B)の音に下行させます。 その後、残りの声部を配分一致させるように配置します。 開離配分でも見てみましょう。 もし共通音を保留した場合はこのようになります。 こちらは禁則を破っているわけではないので、理論

カデンツ 一歩進んだ和声学 Part 7

今回はカデンツについてを紹介していきます。和声というのは無秩序に和音を並べるだけでは成立しません。文章のように正しい語順のようなものがあるのです。 英語のS(主語)+V(動詞)+O(目的語)+C(補語)のような文構成が和声にもあります。和音はそれぞれ役割を持っており、その役割に応じて正しい和音配置を行っていく必要があります。いったいそれがどういうものなのか、見ていきましょう。 1 トニック、サブドミナント、ドミナントまずはこの3つの言葉、トニック、サブドミナント、ドミナン

和音の第1転回形 一歩進んだ和声学 Part 8

今回は和音の転回形、すなわちオンコードについてをご紹介します。 オンコードは根音(ルート)以外の音が最低音となる和音の形です。すなわち第3音や第5音が一番低い音に配置される和音の形です。 ここでは第3音を最低音とする第1転回形を学んでいきます。この形になった際に色々な制約がさらに生まれます。では見ていきましょう。 1 第1転回形先程述べた通り、和音の第1転回形とは第3音が最低音(バス)に配置される和音の形です。この和音を表す場合はローマ数字と右上に小さく1を表記します。

和音の第2転回形 一歩進んだ和声学 Part 9

今回は和音の第2転回形を学んでいきます。こちらは和音の第5音が最低音(バス)に配置される和音の形で、この形は現段階では特定の形でしか使用されません。あまり覚えることは少ないので第1転回形よりは楽だと思います。ではどんなものなのか見ていきましょう。 1 第2転回形先程述べた通り、第2転回形は和音の第5音がバスに配置されている形です。この和音を表すときはローマ数字に右上に小さく2を付けます。 46の和音とも呼ばれることがあります。 上3声は基本形と同じく、根音、第3音、第5

V7の和音 一歩進んだ和声学 Part 10

今回はV7の和音を学んでいきます。 いわゆるセブンスコードですが、3和音に7度の音を付け加えることで出来上がります。ここではドミナント和音であるV7を扱いながら、この和音のルールなどを見ていきましょう。 1 7の和音7の和音のことをいわゆるセブンスコードといいますが、この和音群は先程述べた通り3和音に7度の音を加えたものをいいます。 7の和音を表すときはローマ数字の右下に小さく7と表記します。 このように3和音に付加された構成音を付加(構成)音といいます。付加(構成)音を

II7の和音 一歩進んだ和声学 Part 17

今回からは和声法第2段階へと突入していきます。第2段階では主にS諸和音を中心に取り扱います。最後には転調を含めたバス課題を行います。 今回はII7の和音についてを学びます。V7の和音の次に使用頻度が高いといってもよいII7の和音ですが、V7の和音と異なる箇所はあるのでしょうか。さっそくみてきましょう。 1 II7の和音文字通り、IIの和音に7度上の音を付加したものです。 このII7の和音の第7音も下行限定進行音です。 II7の和音の後続和音はV諸和音しかないですから、よっ

近親転調を含むバス課題 一歩進んだ和声学 Part 28

今回は近親転調を含むバス課題を解いていこうと思います。今までのバス課題と変わりはありませんが、それに加えて転入和音、離脱和音を見極めることが必要です。では早速見ていきましょう。 1 例題1例題1はこちらです。 始まりはハ長調です。どの和音が離脱和音、転入和音になっているかを確かめましょう。 わかりましたか?3小節目からVI調であるイ短調に転調し、5小節目からII調であるニ短調に転調します。8小節目からは主調に戻り、そのままハ長調で終結します。 バス課題を行う際には終止

借用和音を含むカデンツ 一歩進んだ和声学 Part 35

今回は借用和音が用いられた際に、その借用和音がT、S、Dのどの機能にあたいするのかを紹介していきたいと思います。 1 借用和音の役割とある内部調の固有和音が主調へと所属転換され借用和音となったとき、その借用和音は内部調における役割を失い、主調における役割へと変化します。例えば、所属していた内部調ではD和音だったものが、借用和音になるにあたり主調におけるT和音へと変化する、といった感じです。 上の例では借用和音となったiiVの和音はもともとII調(ニ短調)におけるD和音とし

内部変換 一歩進んだ和声学 Part 37

今回は内部変換を紹介していきます。内部変換は和音の音度は一定のまま、その和音の構成音が他の構成音に移ることをいいます。例えばVの和音からV7の和音第1転回形に移る、Iの和音からIの和音第1転回形に移る、というような感じです。では詳しく見ていこうと思います。 1 内部変換和音の音度が変わることを、和音交替といいます。 和音交替が起こる点を和音交替点、または交替点といいます。 先ほど述べた通り、和音の音度は一定のまま、その和音の構成音が他の構成音に移ることを内部変換といいます

主音上のV 一歩進んだ和声学 Part 45

今回は主音上のV諸和音についてを紹介していきます。 バスがI音(主音)の際にV諸和音が置かれる場合があります。これらは転位の結果生じた偶成和音の一種ではあります。実際にこの和音が使われた際にどのような働きをしているのかを見ていこうと思います。 1 主音上のVバスにおける主音(I音)の上に、V7の和音(根音省略形含む)、(〇)V9の和音高温省略形が置かれる場合があります。 これらを 主音上のV7の和音 主音上のV7の和音根音省略形 主音上の(〇)V9の和音根音省略形 と呼び

借用転位音など 一歩進んだ和声学 Part 47

今回は借用転位音などを紹介していきます。 1 借用転位音とある内属和音における転位音は、その内属和音の所属転換の結果、主調の借用転位音となることがあります。 借用和音における転位音は、その固有所属調の転位音を使用します。つまり借用和音における転位音には、主調の音階の音(固有音)は使われないことになります。 上の例の場合、 aの和音は元々はII調から借用してきた和音なので、II調(ここではDマイナー)の音階の音を使用します。 bの和音は元々はIV調から借用してきた和音な

IIIの和音、VIIの和音など 一歩進んだ和声学 Part 48

今回は今まで登場してこなかったIIIの和音、VIIの和音を中心に、これまで取り上げてこなかった和音を紹介していきます。 1 IIIの和音IIIの和音は基本形と第1転回形を使います。 上3声の配置は他の3和音と同様です。 IIIの和音はT和音に属する場合と、D和音に属する場合があります。 まずはT和音に属するIIIの和音の機能を見ていきます。 (i) T和音としてのIIIの和音 T和音としてのIIIの和音は基本形のみを使用し、後続和音はIVの和音、またはIIの和音第1転

これまで扱ってこなかった和音の紹介 一歩進んだ和声学 Part 49

今回はこれまで扱ってこなかった和音を一挙に紹介していこうと思います。 7の和音はII、IV、Vの和音においては既に紹介していましたが、ここではI、III、VI、VIIの和音における7の和音、またV諸和音の第5音上方変位、(〇)IV+6の和音付加第6音上方変位などをとりあげます。 1 I7、III7、VI7、VII7の和音I、III、VI、VIIの和音も7の和音の形で用いることが可能です。 これらの第7音は全て予備を必要とします。 また共通する事柄として、これらの和音は第2