見出し画像

晩酌談 #2 「憧れの話」

「Vodka Martini. Shaken, not stirred」

007のファン、もしくはオタクなら一度は言ってみたい注文。






シェイクなお酒の話

一般的なウォッカマティーニといえば、ウォッカ45mlとドライベルモット15mlをステアしてオリーブの実を添える、という具合になる(はず)。
今回のサムネはこのスタンダードなウォッカマティーニです。

しかしながら、酒飲みで有名な著者のイアン・フレミングが考案したといわれる「ボンドマティーニ」を再現するためにはもっと細かい注文になる。

・ゴードンのジン 90ml
・ロシア産またはポーランド産のウォッカ 30ml
・キナリレ(ワインの一種) 15ml

これらの材料をシェイクしてキンキンに冷やす。
しかも原作では「Shake well」である。
バーテンダーの腕がもげるくらいまで振ってもらおう(実際は冷たすぎて手のほうが先にやられる)。

「Shake well」した液体はフロートグラスに注ぐ。
すると細かく砕けた氷がダイヤモンドダストのようにキラキラと輝くそうだ。
2年ほど同じバーでしつこく注文しているが、ここまで砕けたことはまだない。
もし現実で見れたとしたら、きっとその輝きはバーテンダーの血と汗と涙の結晶に違いない……。

最後に、グラスに注いだらレモンの皮を入れる。
皮を絞るのかどうかはわからない。

ここまでがボンドマティーニのうちの「ヴェスパー」と呼ばれるカクテルの作り方。
007の「カジノ・ロワイヤル」に登場するボンドガールから名前を付けられたこいつは、実はもう作れない。
というのも、材料にあるキナリレが販売終了しているので再現できないのだ。なんとも悲しい。
代用としてリレ・ブランというのが使われていたのだが、先述の「カジノ・ロワイヤル」が2006年に映画化し、ダニエル・クレイグがポーカーしながら美味しそうに飲んだおかげで(毒入りだったけど)需要が爆発して、若干品薄状態が続いている。
いま現在でもネットでしか見たことがない。本国なら普通に売ってるのかね?

しかしながら海を越えた反対側のこの国にもファンはいるわけで、なんとか再現して飲もうと、ほとんどのバーでは似たようなお酒で代用しているのが現状です(代用の代用ってこと?)。
使われるのは主にチンザノドライ。
白ワインをベースにハーブやスパイスで香りづけしたもので、正直単体で飲むのはあまりおいしく感じないです。
僕が頼む店もこれ。

レシピ通りではないけれど、
「ジェームズボンドが飲んでるのってこんな感じなのかなぁ」
と考えながらチビチビと飲みます。

ちなみにステアでなくシェイクにする理由は、一気飲みしやすいように冷やすためだそう(150ml、35度くらいは余裕であります)。
( ;´Д`)ヒィィィィィィー!

フィルムなカメラの話

007は父親の本棚に全巻そろっていて、高校生の時に歴史にハマったタイミングで読み始めました。
映画もダニエル・クレイグのシリーズから入り、ほぼすべて観ています。
晩酌しながら父親と話し合うこともしばしば。
宝塚で公演されると決まった時には40年来のジェンヌファンな母親でも映画を観ていました。

そんなウチですが、フィルムの話は一切出てこないです。
父親が壊れたCanonF-1と縦ズレHexerRFを持っているくらいでもう使ってないし、仕事やプライベートで撮ったネガも会社でNikon機使ってデジタル化したらしく家にはない。
父親の実家には山口百恵がショッピングモールでライブしているのを撮ったリバーサルとかが山ほどあるけど、なんかどうでもいいそう。
いつかこっそりスキャンしてやろうかとか考えていたりする。

フィルムについて、父親曰く
「今の時代に金払ってシャッター切ってるのはバカ」
だそうです。
至極ごもっともな意見。

これを武器に何度フィルムを買うなと言われたか……。

突然ながら、憧れのカメラマンは長倉洋海とロバート・キャパです。
ジャーナリストとして戦場を追っていた、というので二人は似ているでしょうか。
どっちかというと長倉洋海が好きです。
キャパはあまりにも時代が違いすぎて、歴史の一部に感じてます。

書籍に関しても長倉洋海は大抵自著なので、ルポのような感じで読めます。
キャパはピンぼけも青春も死も十字架も伝聞なので、資料のように感じます。ちなみに深夜特急より先にピンぼけで沢木耕太郎に出会いました。普通は順番逆ですかね。

そんな彼らが使っていたのはもちろんフィルムカメラ。
となると、使ってみたくなりますよね。
007の映画を観た後にワルサーPPKのモデルガンやエアガンが欲しくなるように、彼らが使っていたものと同じものを使ってみたいと思うのはいけないことでしょうか。
しかもカメラは単にコレクションとして置いておくだけでなく、使うことができます(当たり前)。

最初に買ったフィルム機はPENTAX SPです。
こいつに関しては話がややこしいのでまた今度にしますが、仮面ライダーの一文字隼人が使っていたというのが大きいです。

そしてあれこれ時間が過ぎてバルナックライカを購入することに。
キャパが使っていたといわれるⅢaにしようか悩みましたが、ちゃんと動くものが見つからず、比較的信頼できるⅢfになりました。
まぁそいつも購入して一ヵ月ほどでリボンが切れますががが……。
修理の連絡まだ来ないなぁ。
大丈夫かなぁ。

そして最近、中判で撮りたくなってきたので買ってみることに。
キャパはローライスタンダードだったか、と考えながら大阪のカメラ屋さんをハシゴしていたら、ありました。
しかしながらレンズは両方クモっていて、前玉も拭きキズ多め。
まともに撮れはしないとの判断でサヨナラしました。

二眼レフの憧れは捨てきれず、在庫と予算をにらめっこすることひと月ほど、ようやく買えました。小西六の͡コニフレックスⅡです。
ヘキサーで描写力に感動したので、ヘキサノンを使ってみたかったことから選びました。
もちろんコーティングなんてないのでシャープではないでしょうが、気になっていたのでいいんです。

そしてこいつも壊れます。
いや、もとから壊れていたというべきか。
一本だけ違うネジを使ってるためか裏蓋が外れるし、フィルムを入れて撮影を始めても4枚目くらいで巻き上げできなくなりました。とほほ……。
整備済みでもなく、少し安いともいえる値段でしたので覚悟はしていましたが、一本も撮れなかったのは残念でした。
知り合いにコニカ系の良い修理業者さんを教えてもらったので、そちらにお願いすることになるかもしれないです。

やはり整備済みを買っておけばよかったのか、などと後悔はあるものの、まぁ古いものだししょうがない、と半ばあきらめのような納得の仕方をしているので、いまはヨシです。

同期の機材が故障する厄がこっちに回ってきていたら話は別ですが。


「Four Floor」の話

大学近くのバー「Alchemy」はデニッシュの店長がいて、とてもよくしてもらっています。
たまにあるイベントでは写真を撮らせてもらったり、普段からいろいろなお酒を教えてもらったりと、楽しいです。
客層は留学生と国際学部の割合が多く、店長のJacobはもちろん、お客さんはほとんど英語で会話しています。
僕も中学英語とも呼べるかアヤシイ会話で頑張ってみてはいます。
これも楽しいです。勉強になります。

そんなJacobにマティーニを頼んだ時に言われたのが、
「One Martini, Two Martini, Three Mrtini, Four Flor.」
ということわざ(?)でした。
「4杯目のマティーニ飲むころには床に突っ伏している」
という意味ですが、何回も経験しました。
ちなみに僕の最高記録は5杯と半分です。
1杯800円なのでお財布的にも床に突っ伏しました。
あまり強いとは言えないですね。
これではロシア人との酒バトルに負けてしまう。

何はともあれ、ほどほどがいちばんです。
お酒の量も、マイニューギアも、その場の感情で決めてばかりだといつか破滅してしまいます。
心と身体とお財布が持たないです。

でも憧れを経験できるって、嬉しいじゃないですか。
ってことで今日もそろそろJacobに声をかけて、お会計をもらって帰るとします。

Excuse me.
One more Martini please…



追記

デンマーク語でさようならは「ヴィシース」というんで、もしJacobがいるときにお店に行ったら帰るときに言ってみてください。
眼を丸くして喜んでくれます。

それではみなさま、ドンノバート!









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?