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アフターコロナにおいて、エクスペリエンス(体験や経験)はこの先どこに向かうのか


これ系の類の話はあんまり書かないことが多い。結構、生意気な気がするし、よく勉強してきた人間ではないから。徹底して実践志向だということもあり。こういうのは学者さんか、ロジックでうまくまとめることをビジネスにしたい人が書けばいいんじゃね?と思ったりもするので。私は実践で真理と本質を追求したいからねー。と思うんだが、今、コロナ下の状況だ。あと一丁前に修士論文書いたこともあり、まぁ、なんか気の向いたところで書いてみる。

私が今、見えているエクスペリエンスというビジネスのこれからのことについて書いてみようと思う。

二つのトレンドを見る。一つは、エクスペリエンスに回帰が起きモノにまつわる当たり前体験が見直される、というもの。もう一つは、デジタル・エクスペリエンスへの急激なシフトについて、だ。後者はおまけ程度に、前者を中心に語ってみたい。

読むのに10分くらいだろうか。

1. あらゆる挙動に距離が生まれてしまった社会の行動


気軽に握手もできない。

我々はこの先、いつ海外の人たちと笑顔でジョークを飛ばし、日本酒を薦め、握手してハグして、意見を交換できる日が来るのだろうか。

日常生活に目を向ければ、こんな状況の中、自分たちの危険も顧みず運搬してくれている宅配業者の人々、価値あるものを作ってくれている方たち、人を助けてくれている命に近い人たち、がいる。生活を維持するための衣食住に携わる人たちもそうだ。心より感謝しているし、どうにかしてそれを伝えたいとも思う。

宅配の人の中で顔見知りの人もいる。でも、あ〜〜元気ですか!久しぶりですね!!って手放しで迂闊には近づくことはできない。少し、距離をとって。声を掛ける。お互いマスクをしているから、どれだけ笑顔なのか、というのも相手には伝え難い。

何をお願いするにしても、一旦、下に置いてください、って言わなければいけない。「ご苦労様です、ありがとう!」って遠くからマスク越しに伝えるのが精一杯の感謝。

・・・小学生Youtuber桜動画滝動画の話ばっかりしていると飽きられてしまいそうなので、たまには真面目に仕事にまつわる「エクスペリエンス」、つまり経験の話。

2. コロナで未来シナリオはどうなるのか


今、近しいメンバーでコロナのもたらす影響にまつわるシナリオを描いている。

これ、要するに今後、自分たちの事業がどうなっていくのかをシナリオプランニングするものなのだが、控えめに言ってかなり強力だ。今、何をしなければならないのかを迷っている事業会社、特にインフラ的な役割を担う事業会社や、日本経済の根幹を支える必要のある産業や事業で物理的な制約を伴うものを持つ事業を行う企業にはほぼ必須の作業だと感じる。

今、私たちの周りにいる企業を中心にものすごくこの作業が人気がある。というか必ず取り組まなければならないというくらいの危機感と切迫感がある。かつ、今、絶対やっておいたほうがいいと断言できる。我々がこの1〜2ヶ月必死に検討し、有識者と議論をしまくって溜まった知見を活用した方が、これから計画して、一からやるよりも圧倒的に早い、し意味がある。結果的に行動が早くなる分、効果的でもある。

この「コロナ下におけるシナリオプランニング」をリモートワークショップ形式、または事業プラン二ングとして本気で実施したい場合は、紹介するので個別に連絡されたし。イベントやろうと思っていて余っているコスト数回を束ねれば、やれる。ご一報を。

そして、我々の溜まっている知見の中から、本日は、一部、エクスペリエンス、つまり「経験と体験」についてを私なりに思考してシェアしたいと思う。

3. シナリオの前半:モノよりコトに投資をしてきた20年間


10年越しに朋友としてたまに進捗報告をする間柄として、苦しい時も楽しい時も常にいい距離でお互いを刺激してきた、tomota.terada 寺田さんがついに同じ職場のパートナーとなった。

彼の描いている世界観を少しだけ紹介したい。
まずはシナリオ前半部分。今までの世界についての解説だ。

" 社会基盤にフォーカスを当てると社会の変革はこの Covid-19 により不可逆になるだろう "

ということで、要するに今までの常識ってものの一部は確実に変質し、その変質とは、文字通り質が変わってしまうわけだから、もう元には戻らない、ということが起きるだろう。そのうちの一つが、経験、というものなのだと感じる。

世の中が飽食で、何も刺激がなくなった時、エクストリームに向かう。そうやって、これまでの20年間くらいの経済では今までにみたことないようなもの、考えたこともなかったもの、驚き、喜び、というものを見出し、それをよりエクストリームなものとして光を当てる。これに理屈をつけて仕事を作ってきたのが、デザインファームだとも言える。当たり前のものを当たり前に提供するのでは高い金が取れないからだ。

多くの人たちが、モノよりコトへ、という形で価値を定義し直していたりする。(個人的には言いたいことが結構あるけど趣旨から外れるから割愛)


モノよりも体験の価値がぐぐっと上昇してきた。よくわからない体験やまだうまく説明できない経験を可視化できたプレーヤーに価値とお金が集まっていた

特許庁のデザイン経営宣言


4. コロナ前社会の前提となる、この10年のユーザー体験の革新とその価値について


シナリオから離れて、私の独自の展開を進めたい。

コロナの状況以前は、市場が飽和していた。そしてそれが随分と長く久しい状態が続いていた。物が売れなくなった、サービスに飽きられている。だから、違う体験や感情を呼び起こさなければならないんだ、と。

もちろん、デザイン領域からのアプローチだけではなく、テクノロジーからの経験や体験の価値も大幅に向上した。スマホやタブレットなんてこの二十年で著しく体験を向上させ、それは技術によるところが大きいとも感じる。

そういう意味で、ベタではあるが、テクノロジーとデザインを高次元で融合させ製品を次々と発表、ナラティブな状況でストーリーを作り込んだという点では、アップル、いやスティーブ・ジョブス氏の功績はでかい。

人間中心、デザイン思考、等々、散々うたっているものが、ここ10年、いや20年において、ことビジネスに関していうと全ての起点は、価値を生んで、それにより金を生むかどうか。それに掛かっている。

アップル社は冷静に見れば、単なるPCメーカであり、ケータイ屋さんであり、工場を持ってない設計と企画を行う会社だとも言える。それを熱狂的なユーザーだけでない普通の人々にまで製品を使わせるほど成長させたのは飽きない体験や経験というこの領域に投資をして形にしたからに他ならない。

衣食住が満たされ、何も不満足、不安定、不足がない状態の場合、もうそこに敢えての売るもんがない。売ったとしても、わざわざあなたから買う理由がない。正確に言うと差別化して金を払ってもらえる切り口はやりつくしてしまって、ほぼ無くなってしまっていた。そんな状況であるからして、我々はデザインという要素を経営やビジネスに取り込んだわけだ。アップル社だけではなく、あらゆる会社がBtoBであってもここに投資を続けているのである。今も。(デザイン経営については疑いようのない重要な要素で、コロナだろうが、なかろうが引き続き、メチャメチャ大事です!念のため。)

余談になるが、ビジネス界ど真ん中の金融資本主義万歳な旧世代とDesign Thinker を活用したい「貨幣とかなくなるんじゃね?」な新世代の相性が悪いのは、デザインや広義の意味でアートのもつ本質は必ずしも金を稼ぐことに主眼がないからでもある。なので、よほどうまく語り、うまく進め、うまく創らないと、楽しいこと・きれいなことはやってるけど金を産まねーし、価値ないじゃん。って今のメインストリームの中枢の声に反論ができない。

それでも、じゃあ逆に付加価値つける他の方法があるなら、誰でもいいから言ってみなさいよ!って声にも(中枢の人すら)反論ができないので、世界中で半ば常識的に UX:User eXperience や、DT:Design Thinking ってのがビジネスに活用されてきた。

相性が悪いと思われようが、それでもビジネスとデザインが手を組み、この10年で経営を、事業を、サービスを、製品を、そしてイノベーションや、政府や社会までをデザインすることの重要性を軸に据えてチャレンジをし、多くの人たちをそこでの価値づくりの虜にしてきたのは、双方のメリットが一致していたからだ。「今までの通りではこの先のビジネスが立ち行かない」この一点で、次のブレイクスルーを目指したのだ。

2010年に当時の会社(NTTデータグループ)でデザイン経営を提唱し、却下されたけどIBMやアクセンチュアに負けないデザイン組織の機能会社を2億で作ろうと持ちかけ(ちなみにIBMやAcは200億使った)しかし却下され、デンマークのデザインファーム を日本に誘致して支社長を2年ほどやってみた経験を踏まえて、俯瞰してみると、そんな前提がユーザー経験の中に含まれていたと理解している。

5. シナリオ後半:モノに回帰し、価値を見出すという逆転が起きる


さて、そろそろ言いたいことの本題に迫ろう。

再び寺田さんの描いている世界観を紹介したい。
今度はシナリオ後半部分。これからの世界についての解説だ。

" 社会基盤にフォーカスを当てると社会の変革はこの Covid-19 により不可逆になるだろう "(再掲)

ということで、要するに今までの常識ってものの一部は確実に変質する。

Covid-19により、価値観が変容してしまった。ここで、多くの人の価値転換が起きる。体験の素晴らしさを重視していた状況、いわば「体験至上主義」からモノそのものの価値が再びグッと高まるはずなのだ。回帰する。

表現が適切かわからないが、当たり前がない戦時や戦後の状態のような状況が発生する。


6. しっかりしている、ただただ普通にできる、という経験が見直される時代が来る


普段、誰から買っても大して変わらないものが、なかなか手に入らなくなってしまった。webカメラは在庫なし。リモートワークに使われるチェアも売り切れ続出。リモート授業のために用意されているiPadはいまだに学校に届いていないと聞く。

当たり前のように外出してどこかに入れば、ご飯とお酒が店から提供される状態だった。生鮮食品や新鮮な野菜を宅配で手に入れるというのは一部の富裕層以外かなりレアな状況である。

物流が不安定になりつつありちゃんとモノや書類が届くのが当たり前では無くなった。現に、我が息子の課題は、郵便局の機能不全のため、二週間届いてない

体験、ということを主軸に考えると、「特別な経験」「普段味わえない体験」「今までにみたことも、聞いたこともないこと」というものそのものを起点とするというよりも、それを一旦置いておいたモノにまつわるいわゆる「普通」の体験や経験が注目されてくるだろう。

私の周りのエクスペリエンスを見ても、かなり差が目立ってきた気がする。

・歯医者:管理を徹底している歯医者は、常に20人ほどで院内ごった返していた状況をいち早く転換し、中は常に一人のみ、外にもかなり間隔をあけて椅子を並べる。自身の防護もかなり念入りにやっており、消毒も万全。ここまでやってもらえるとリスクをとってわざわざ歯を見てもらっても少しは安心がある。それでもここの歯科医は万全ではないから、と常に警戒し工夫出来ないかと改善を重ねている。

・ケーキ屋:親類の誕生日のために立ち寄ったケーキ屋さん。基本的に、店内は二組のみ。入り口にはアルコール消毒が置かれ、普段は包装されていないシュークリームに一つ一つラッピングがなされている。常に消毒し、手袋をし、必要以上の会話をしない。ここのケーキなら買いたいと思う(一方、その近くのパン屋さんは人気店であるが店内は人でごった返し、行列には空間がない状態で密着していた)。

・食料品店:基本的に店員がマスクと手袋をし、ソーシャルディスタンスを徹底するように常に呼びかけていた。消毒を徹底し、お店の対応もいつもと違う緊急対応。いつも購入できる飲食コーナーもかなり間をあけ、時間がかかるメニューは滞留が起こるため、メニューを中止し、買えるものを制限していた。

歯医者も、ケーキ屋も食料品店も、今の状況で見れば「普通」を届ける体験だ。特別なことをしていない。喜びや驚きを入れ込む高次元のエクスペリエンスを生んでいるわけではない。しかし、この当たり前をしっかり届けられない企業が多数存在している中で、モノやサービスを確実にしっかりと届けるUXを提供できることは今のこの状況では圧倒的な価値を生む

今、この有事にやるべきことをやるというUXやサービスデザインを志向できているか。この状況が2年、5年、10年と続いていくとき、変化しながらも当たり前価値を当たり前品質で、しっかりと提供できるのか

ここに行けば(頼めば)確実にモノの価値を享受できる。

ここに行けば、普段は当たり前だと思っていたけどそれが普通にできることが適わない状況でしっかりと満足できるサービスを履行している。

という部分の「当たり前なことを骨太に愚直に行うエクスペリエンス」を志向できる企業に注目が集まるだろう、と。

安心や安全、を殊更大切に扱うエクスペリエンスがモノそのものへの価値を何倍も引き上げる。そういう、本質の内側やすぐ近くにあるエクスペリエンスが、エクストリームな体験や虚を衝くようなびっくりや感動に比して重要性を増すであろう。今までは地味で投資対効果の割に合わなかった部分にもう一度脚光が浴びると感じている。


7. デジタルでしか味わえないものに対する体験は一気に加速する


もう一つ絶対にエクスペリエンスで外せないのがデジタル・エクスペリエンスへの移行についてだ。

しかし、まぁ、ここは私が指摘することもなく多くの人たちがたくさん伝えるであろうから、軽めに。

一度 Uber Eatsを頼んでしまったらそのデジタルの快適さに人は元の世界には戻らないだろう。今までは、躊躇してた人、やっぱりものは直接ね、っていってた人が、それどころではなくなったために強制的にシフトが起きている。

今まで以上に、デジタルにおけるシフトは起きる。それも我々が予想をしているよりもはるかに大きくて、早くて、激しいシフトが。

今、デジタル変革を推し進める検討をしていない企業は、大げさではなく、近い将来滅びてしまう。ここでのポイントは、してるつもり、してるフリをしている企業もたくさんあるってことだ。本当にシフトにつながる本質的な本気の活動していなかったら、もうこの波には乗れない。多分。

ということで、二つのトレンドのうち、前者のモノにまつわるエクスペリエンスの回帰について中心に語ってみた。

たまには、こういうのも書いていかないとね。

ではまた。

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