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『カンパイ! 日本酒に恋した女たち』先行上映会レポート

どの職人の世界にも専門性があり、歴史があり、慣習がある。
日本酒の世界では長らく女性はアウトサイダーでした。
その歴史が今、大きく変わろうとしています。
今回紹介する映画は、その中でも現在ひときわ輝きを放っている3人の女性にスポットを当てた作品です。

どうもこんにちばんは、りょーさけです。
今日は先日行われた『カンパイ! 日本酒に恋した女たち』の先行上映会のレポートを書きます。

詳しいことは、本文中で。
では、始めます。

※※※

1.『カンパイ!』ってどんな映画?

この映画は小西未来監督が手がけた、日本酒に携わる様々な人々の活動を記録し、紹介するドキュメンタリー映画です。今作は二作目です。


一作目はイギリス人杜氏のフィリップ・ハーパーさん(木下酒造・京都)やアメリカ人日本酒伝道師のジョン・ゴントナーさんなどが中心に紹介されていました。もちろん彼らだけでなく、他にもたくさん魅力的な日本酒業界の関係者が登場します。
今作は趣向を変えて日本酒業界で活躍する女性3人に焦点を当てて紹介しています。

この映画のことを聞いたときに、「日本酒で…ドキュメンタリー…?」となる人もいるかも知れません。確かに「一体何を撮ってるんだ…?」という疑問はごもっとも。日本酒に普段から親しみがある人は別として、すぐに想像がつく人は少ないと思います。

一口に日本酒と言っても様々な立場があります。

日本酒を醸す(つくる)人。
日本酒を売る人。
日本酒を運ぶ人。
日本酒を振る舞う人。
日本酒を語り広める人。
日本酒を飲む人…。

それぞれの人の人生があり、固有のドラマがある。今回はその様々ある立場の中から日本酒をつくる人、振る舞う人、語り広める人を取り上げています。彼女らの日々の活動から、これまでの積み重ねた実績、築いてきた人の縁が美麗な映像とともに作品になっています。

では、次章でその方々を紹介します。

2.今作の主役お三方はどんな人たち?

この章では今作の主役お三方について紹介します。

広島の今田酒造本店の杜氏、今田美穂さん。
恵比寿でGEM by moto という日本酒酒場の店長をやっている、千葉麻里絵さん。
国内外で日本酒の普及に奔走するコンサルタント、レベッカ・ウィルソンライさん。こちらの3人です。
映画の紹介サイトに丁寧で簡潔な説明が載っておりますので、ここは引用して紹介させていただきます。お三方の写真は私が試写会ついでの東京旅のついでに六本木のクラフトサケウィークで行われたトークショーで撮ってきましたので、それを使用します。

(クラフトサケウィークはそれ自体ひとつの記事になるくらいのイベントですが…写真だけ載せとくとこんな感じです。めっちゃ人がいます。酒もあります。今年は特に大盛況だそうな。)

○今田美穂さん

広島杜氏の里として知られる安芸津町で「富久長」を醸す今田酒造本店の取締役・杜氏。東京でのOL生活、前杜氏のもとでの修行を経て酒造りを引き継ぎ、品質重視の酒造りにシフトチェンジ。広島酒米のルーツである「八反草」を復活させる一方で、ハイブリッド酒母の開発や、魚介類との相性を考えた「海風土(シーフード)」の開発など、伝統と革新を両立させた日本酒造りを行っている。広島の蔵元集団「魂志会」のメンバーの1人。近年台頭している女性杜氏たちの先駆者的存在。
(『カンパイ!日本酒に恋した女たち』公式サイトから引用)

見た目がさっぱりとしていて、話し方もとても気持ちのよい方でした。映画本編で見せる職人の目つきと、普段の朗らかさのギャップがとても素敵です。醸すお酒はまさに本人をそのままお酒にしたような爽やかで気っ風の良い印象。

○千葉麻里絵さん

岩手県出身。新宿の「日本酒スタンド酛(もと)」に入社後、利酒師の資格を取得。これまでにない化学的な理論で日本酒を突き詰め、蔵元との深い意見交換を繰り返す。そうした経験を活かし、2015年恵比寿に「GEM by moto」をオープン。熱心に蔵見学を行うことで造り手の思いをお客さんに伝える代弁者となるだけでなく、食と日本酒との新たなマリアージュを日々追求。店長として店に立つ傍ら、幅広いジャンルの飲食店とのコラボレーションを通して活躍の場を広げている。
(『カンパイ!日本酒に恋した女たち』公式サイトから引用)

私のnoteをよく読む人ならば、あれこれ言わずともわかってもらえると思いますが、すごい人です。お店に行ってお酒と料理をいただくその一瞬一瞬に学びが溢れていて目が離せません。「この人のそばでは、絶対に酒に関して手を抜いてはいけないな」と思わせる本気を持っている人です。

○レベッカ・ウィルソンライさん

ニュージーランド出身、東京在住。SEC日本酒ソムリエ資格を持ち、IWC(International Wine Challenge)のSAKE部門審査員も務める。様々な講演やイベントを通し、日本酒の魅力を国内外に伝える努力を惜しまない。現代美術家の村上隆氏と秋田の若手蔵元集団NEXT5とのコラボレーション「Takashi Murakami x NEXT5」において、味のコーディネートを担当。中田英寿氏が率いるJAPAN CRAFT SAKE COMPANY所属。
(『カンパイ!日本酒に恋した女たち』公式サイトから引用)

レベッカさんに関しては前情報がほとんどなかったのですが、映画を見て数分で「キラキラしていて人を惹きつけるオーラがある人だなあ」ということが伝わってきました。後述しますが、この方がつなぐ人と酒の縁はものすごいです。

登場キャストの紹介も終わったので、次章で本編の概要とりょーさけ的本作の見所を3つお伝えしようと思います。

3.映画の概要と、りょーさけ的な見どころ

まずは映画の概要からざっくりと言います。

今作は日本酒通にとっては、

次から次へと有名人が登場して「うおおおおお!」の連続で大興奮

となり、

日本酒これから!の方々にとっては

「なにこれまだ全然わかんないけど、とにかく日本酒と食べ物おいしそう!!」

となる映画だと言えます。

流れとしては、主役3人が今に至るまでの道のりを紹介しながら、彼女らと深く関わった日本酒業界の方々の語りを交えて映像が展開していく形をとっています。

景色は今田さんが杜氏を務める蔵がある広島の安芸津の美しい海から千葉さんが育った岩手の大自然、レベッカさんが育ったニュージーランドの風景(こちらは主に写真ですが)まで次々に変わります。

今田さんは東京に憧れを持つ男前な女性として、千葉さんは食に対して探究心が強い女性として、レベッカさんは諸国を巡り自らの心を強く動かすものを探す好奇心旺盛な女性として描かれていたように思います。

今田さんの諸先輩方への尊敬の念は驚嘆に値します。この映画のオファーを受けたのも、「自分が多くを学んだ広島清酒界のレジェンド達を映像に残せるチャンスだ!」と思ったからだそうです。

呉のドイテツさん(←「寶劍」という日本酒を醸す広島清酒界の巨人の一人。本名は土井鉄也さん。元広島の伝説の不良。)に「(ただ女性というよりは)男の中の男。ちょっと怖かった。」という風に言わしめる方は他にいないでしょう。

千葉さんが自然とその中で育まれたものを愛でる心には感動します。小さな頃から食べ物はすべて家でとれたもので賄っていたから、中学校の頃までファーストフードを食べたことがなかったそうな。

その自然を愛でる心があってこその今の日本酒愛なのだな、ととても合点がいく生い立ち紹介でした。酒造りをする人やまさにその時醸されている酒を見るときの表情に、目に見えないいのちまでをも慈しむ千葉さんの思いの深さを感じます。

レベッカさんが諸国を周って日本酒にたどり着くまでのエピソードは「いや、漫画か小説ですか?!」と尋ねたくなるほどのものです。ニュージーランドの自然豊かな島で生まれ、いつも「ここではないどこかでの生活」を夢見ながら家族と暮らしていたそうな。

彼女がいたからあのお酒が生まれたのか、と思うと非常に感慨深いものがあります。(りょーさけ的見どころで話します。)

で、りょーさけ的見どころですが!

もうここは映像で見てほしいから、箇条書きで3つ言い切ります。くどいと映画が台無しになる!

①とにかく映像がキレイ!
小西監督自ら酒蔵や大自然の中へ赴き撮ったそうです。ドローン空撮の広島安芸津は天然の芸術と言えるでしょう。

②酒人の縁はこんなに素晴らしいとわかる!
酒を通じてこんなにも多くの人が笑顔でつながるのか!ってとこにもう感涙です。今田さんは前述のレジェンド達との縁、千葉さんは多くの蔵元さんたちとの縁を大切になさってるのがわかるし、レベッカさんは酒界と芸術界まで繋いでしまった!

(以下若干日本酒好きに向けて)

私は知らなかったのですが、NEXT5と村上隆さんはレベッカさんが繋いでくれたのですね!非常に驚きました。NEXT5の方々と村上隆さんが映像に出てきて、「うわそうなんかこんな事があるんか!!」って感激しました。

③酒の仕事のど真ん中(あるいは裏側)が結構見れる!

今田さんの酒蔵での働きっぷりにしびれる。超スピーディに米をさばく様が素敵。

千葉さんの毎日のテイスティングの本気さに圧倒される。この作業から日々のお店での見事な接客が生まれるのだとわかる。

レベッカさんが周りの人を日本酒で明るくしていく様に思わず笑顔になる。実際にイベントに赴いて会ってみたくなります。(クラフトサケウィークのトークショーで見れました笑)

これはもう「女性の」素晴らしさ、性別の枠なんか越えてプロフェッショナルの熱に見惚れてしまいますね。圧巻です。

あとはもう、とにかく人々がお酒を飲んで食べ物を食べてる様子が楽しそうです。前作よりそういうシーンが多くてたまらんです。 

まさに「観た後に食べ飲みしたくなる映画」になっております…。

4.試写会&舞台挨拶&トークショーの様子

試写会は恵比寿ガーデンシネマで行われました。先週の日曜日のことです。

小劇場のスクリーンの前に多くのお客さんが駆けつけていました。

上映前もロビーにてあっちでワイワイこっちでワイワイと、今回の映画への期待の声が聞こえました。皆さん楽しみにしてこられたようです。

他作品の紹介が終わり、上映が始まります。
もちろん上映中は静かでしたが、時折笑いもおきていました。千葉さんと、千葉さんのお爺ちゃんお婆ちゃんのやり取りとかで。ほのぼのしてましたね。

で、映画が終わると舞台挨拶が始まりました。

席が遠かったのでちょっと画質が追いついてませんが、こんな感じでした。

これはちょうど今回の映画のコラボ日本酒を紹介してるところですね。

今田さんの蔵で醸した「草」というお酒です。千葉さんとの協力で生まれたお酒。「畑でトマトをもいでかじって、顔の土を袖で拭っているすっぴん女性」のような風味だそうです。(千葉麻里絵・談)

私も試写会にて頂きましたが、確かに畑の鮮烈な風を…感じた…ような???

ま、飲んでみてください(笑)
おいしいです!滋味深さがありつつ、爽快な酒質!

以下に舞台挨拶中に行われた司会者からの質問コーナーでの受け答えをちょこっと要約で載っけます。

Q.(司会者)この映画で女性を題材にした理由は?
A.(小西監督)女性の社会進出とかに絡めて…と思われがちだけれどそういうことではなくて、日本酒の世界のアウトサイダーに光を当てたかった。で、前作がおじさんばかり出てくる映画になってしまったので今回は女性にしました(笑)
Q.(小西監督)今田さんはパーソナルな情報が世に出てなくてどんな人がわからずオファーを出すのが不安だったけど、大丈夫でしたか?
A.(今田さん)パーソナルなことは酒の味と関係ないので出してませんでした。オファーを受けたのは、軟水醸造法発祥のこの地で技術を磨き伝えてきたレジェンドたちを映像に残したかったからです。
Q.(司会者)映像が素晴らしくなりましたね!
A.(小西監督)前作は初めてカメラを回したので余裕がなかったんです。今回は余裕があった。ドローンの空撮にも勉強して挑戦しました。
Q.(小西監督?)カメラが職場に入る体験ってどうでした?嫌でした?
A.(千葉さん)カメラはないものと思って行動してました。(緊張するので)
(今田さん)監督は気配を消してました笑
(小西監督)僕、オーラがないのかな…。

こんな感じのやりとりが20分ほど続きました。
個人的には小西監督がとても喋る方だったのが意外で、かつ、面白かったです。

…で、試写会終わって六本木でトークショーもあったのですが(アイキャッチはここでの写真なのですが)、こちらのやり取りは私がめちゃくちゃ酔っていたがためにほとんど覚えてません。ごめんなさい!

↑酔ってイベント会場で撮った写真です。六本木の光に照らされるグラスが美しいぜ…。

5.おわりに

はい。ということで駆け足で見てまいりました。
こちらの作品はなんと明日4/27(土)から公開です!あーもうGWはこれで始めるしかないなぁー。観るしかないなー。劇場へレッツゴーだなー。

気になる上映劇場は、コチラ!!

今の所首都圏中心ですが、同時にクラウドファンディングも行われてますのでこちらの支援結果によってはまだまだ上映劇場が増えるかも…?!
興味のある方はチェックチェック!

はい。

とにかく!『カンパイ!日本酒に恋した女たち』は日本酒と、それに関わる人々の魅力と、美しい風景と旨そうなものが一杯に詰まった映画です。

この映画を観てあなたが叫びたくなる言葉はこれに決まっています。

カンパイ!!!!!!!!!

皆様よい酒&この映画とともにGWをお過ごしくださーい。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。