マガジンのカバー画像

文芸系

31
写真を挿し絵に挟みつつ、詩を書いています。時折散文、稀に掌編も書きます。
運営しているクリエイター

記事一覧

「伴走」 / 詩

日々の時の流れが 懐中からこぼれ落ちる砂子のようで 季節のうつろいのなか 泳ぐように漂っ…

楽水
1年前
10

「野ばら 2」 / 散文

無影灯のような真夏の陽も沈み、縹色の帰り道、特急の車窓から流れて滲む街並みを眺める。 時…

楽水
1年前
17

「野ばら 1」 / 散文

ビルの屋上の取って付けたような喫煙室、そのガラス張りの内側から、遠目に港と倉庫を眺める。…

楽水
1年前
5

「reflection」 / 掌編小説

穏やかに陽も沈みかけようとしている7月7日。 駅から少し歩いた公園で、私はあなたと待ち合…

楽水
1年前
11

「雨の足音」 / 詩

友の夏衣を縫う夕べ ポケットを一つ 着けておこう 胸元に 美しい夢を秘められるように 緑…

楽水
1年前
14

「春の韻」 / 散文

した草の緑が萌えたつ。 そして気付けばそれらは風に立った波のように、辺りにこんもりと起…

楽水
2年前
9

「独白」 / 短編小説・後編

夕餉の支度を済ませた後、冷えを感じた庄一は追焚きした三日前に張った湯の中に身体を沈めていた。 瞑目して静かに息を吐く。湯はとうに丸くなり、その中でじっとしていると、海の中というよりは日々から遠く離れた宇宙空間の中に胎児が膝を抱えるような姿で、一人静かに浮かんでいるような感じがした。 例えばこれが海の中だとすると、陽光の届かない深海だろうと庄一は思う。少しでも自分が身動きすれば、得体の知れない堆積物が白く舞い上がるような音の無い世界。視界の端で、ゆらりと大きな深海の生物が

「独白」 /短編小説・前編

(良くわからん…) そう、スーパーの野菜売り場を見て庄一は心の中で呟いた。白菜が298円も…

楽水
2年前
6

「懐中夕星」 / 掌編小説

春が、袖触れそうな際までやって来たよに感じられる、上巳の節句の午后は心床しく。 帰路の…

楽水
2年前
9

「春の音」 / 散文

(どれ、ひとつ春の音でも拾いに行くか...) そのような事を思い、ふらりと散歩に出る体で近く…

楽水
2年前
8

「私たちのラルゴ」 / 掌編小説

朝家を出て、私は駅前で事故に遭った。 前日は帰宅が遅くなり、私が勝手に書斎と呼んでいる…

楽水
2年前
12

「渡り鳥」 / 掌編小説

「...よいしょ」 演奏会の合間に、私は客席からロビーに出てソファーに腰を下ろした。 それ…

楽水
2年前
8

「暮らしと軌跡、そして植物と」 / 散文

一体何時ぶりだろうか。 真っ直ぐに街を渡る幹線道路沿いを自転車で流していると、交差点の…

楽水
2年前
8

「風と書簡」/ 詩

水の流れは 連綿と続く 巡りの旅で 湖水がやがて入れ替わるように 淡水が海水と混じり合うように 自由と 柔軟性をもって 営まれている 様々なものを乗せたこの世界は 目に見えるかたち また 見えないかたちで変わり続け 季節の歯車がカタリと音をたてる そのような節目や  汽水域のように 異なるものの出逢いに 錬金術を起こす地点を 惜しげもなく点在させているのだ 水の旅程や 昨日と今日の狭間に 継ぎ目があれば不自然だろう 細胞の入れ替わりや 夜更けから明け方への流れが たゆたい