「雨の足音」 / 詩

友の夏衣なつごろも を縫う夕べ
ポケットを一つ　着けておこう
胸元に
美しい夢を秘められるように

緑陰 りょくいんで

季節の継ぎ目に触れる

風や鳥が落とした果実を踏み分け

葉擦れのなかに

織り込まれた暗号を聞き

葉艶のなかに

結晶する陽射しを知る

草葉の陰で

(来るな…)
(もうじきだろうよ…)

そう雨彦たちは囁き合い

そびえる泰山木は

(我ら、雨を迎える支度が整いましたぞ)

と花開き

天に向かって

言挙げしているのかも知れなかった

友に夏衣を縫う夕べ
水玉模様にも似た生地は
雨粒にも似て

数多 あまたの雫が歌う　雨の音色に
うっとりと
微睡まどろ むことが叶うように