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読書感想文的な14『店長がバカすぎて』早見 和真

「幸せになりたいから働いているんだ」
谷原京子、28歳。独身。とにかく本が好き。
現在、〈武蔵野書店〉吉祥寺本店の契約社員。
山本猛(たける)という名前ばかり勇ましい、「非」敏腕店長の元、
文芸書の担当として、次から次へとトラブルに遭いながらも、
日々忙しく働いている。
あこがれの先輩書店員小柳真理さんの存在が心の支えだ。
そんなある日、小柳さんに、店を辞めることになったと言われ……。


「幸せになりたいから働いてるんだ」と京子が気づくまでの物語だと思う。
「○○がバカすぎて」というタイトルの6編。

京子、いつもぷりぷり怒ってるけど結局自分の仕事がとっても好きなとことか、共感できるし、好感を持てるところがたくさんあった。
仕事がだるくても、例えば上司がうざくても、それを共有できる人が1人でもいたら乗り切れるっていうの、すごくよくわかる。
そういう人が1人でもいてくれたら、腹が立ちすぎて白目むいたことも、悲しくてやりきれない出来事も、ちゃんとネタとして消化?昇華?できるんだよね。

本屋さんのこと、書店員さんのこと、正直全然考えたことなかった。
書店員さんってレジとか品出し以外もめちゃくちゃいろんなことしてるんだね。
いいと思ったものを売りたいっていう気持ち、仕事のやる気に直結しそう。
いいと思ったものを売りたいし、いいと思ったプロセスで仕事ができたら幸せだろうな。
まさか本屋さんから要求?発注?した本がその通りに入荷しないことがあるなんて思いもしなかった。
売ってやるよ!というわけにはいかないのね。
下請けというか、実際に顧客と接するところは、どこの世界でも弱い現実に悲しみを感じた。笑
実際売ってるのこっちですけど???って思ったこと何回もある。

京子とは年齢が近いから、将来に対する漠然とした不安みたいな感情も理解しやすかった。
このまま一人ぼっちで、細々と生活する日々を続けていくことが正しいのか、正しいとしても将来像が見えない。もしまちがってるなら軌道修正するために残された時間がもうとても短いんじゃないか、そもそもわたしに軌道修正する力があるのか。
べつにいつもこんなことウジウジ考えてなくても、自分より若くて正解と思える道(要は世間体かもしれないけど)を進んでいる人を見ると不安になる。
だから京子が元アルバイト店員で、大学卒業後に大手出版社に就職した子と再会したときの気まずさ、あ~~~~わかる~~~誰も悪くない!強いて言うなら卑屈なわたしが悪い!でも会いたくねぇ~~~っていう気持ち、ひえええってなった。(語彙力)


前に読んだカツセマサヒコの『明け方の若者たち』の年齢を通り過ぎて、あらら?と思ってるうちにアラサーになった大人におすすめしたい。
一体いつまで足掻いてんだよ、ってなる。
でも、向上心はいつからでも持てるし、軌道修正もきっとできるし、失敗してもどうにかなるだろうし、あのころより弱くないし、まだまだいけるわ、ってなる。

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