目線の位置と数、ちょっとした工夫

日高町のとなりに、新冠町という町がある。
日高や新冠というと、地元の方以外には馬もしくは昆布というイメージが強いだろうが、実はけっこうな野菜の産地でもあります。

新冠町の道の駅では、6月から10月のあいだ、土曜日の朝10時から12時まで、「軽トラ市」が行われている。いわゆる直売、都会風に言うならマルシェである。

新冠産の朝採り野菜、山菜を扱っていて、お求めやすい価格で新鮮なものが手に入るとあって、昼を迎えるときには完売になることもあるんだとか。

売り方は各農家さんに委ねられているのか、同じ日、同じ品目でもお値段は違うし、元気に声をかけて接客しているところもあれば、完全待ちスタイルの老夫婦なんかもいたりする。無口なおばあちゃんが売る曲がり大根なんて、それだけでおいしそうだ。

一方で、すぐとなりには昨年オープンした「新冠キッチン」(こちらは常設)があり、そこに入る店舗の一つ「ナンモダ百貨新冠本店」でも、地元産をはじめとする、多くの新鮮野菜を扱っている。

「農家さんの収入をあげないといけない」と、店主は言う。こちらの店舗では、Airレジ使って各種決済に対応し、プラスチックレジ袋廃止と、本当の意味で”意識高い系”の経営をされている。

両者とも、目指しているところは同じなのかもしれないが、店頭というインターフェイスはまったくの別物だからおもしろい。
実際、どちらの野菜もおいしいし、札幌や東京の高級スーパーに並ぶのと比べたらかなりお安い価格で食べられるから、いまの価格で経営が成り立っているのであれば、十分競争力を持つ業態だと思う。事実、僕も時間があれば、30分かけて買いに行っているわけですし。

ただ、話を見聞きするに、順風満帆というわけでもなさそうである。
僕は専門家でもないし、いちファンでしかないんだけど、地域の人達と話していると、その素晴らしい思いに結果がついてきていないのだとしたら、それは目線の数と位置、ちょっとした工夫で解決できそうだなと感じる。

無口なおばあちゃんが作る野菜は、隣の店主も「あそこの野菜は本当においしい」というほどの高品質だし、カードに対応しているナンモダ百貨において僕の財布は手数料分以上に緩んでいる。「いいものを作れば売れる」の道も、「現代的な店舗経営」の道も、間違った道ではないと思う。

そこにちょっとだけ、誰を対象に、どんなふうに買ってもらいたいかという観点で目線の数を増やしたら、「こんなことできるかも」というちょっとした工夫が出てくるはず。

ちょうど、廃棄予定の大根に、顔つけて出荷したら、ZIP!で全国ネットデビューした、という北海道の農家さんが話題になっている。

ご本人のTwitterでは「意図的ではなくアドバイスを参考にやってみたら予想以上に跳ねた」とおっしゃっていて本当に偶然なのかもしれないけど、いまのネットニュースやTwitter&インスタ文化、テレビの情報番組の作り方にめちゃくちゃフィットしてるよね。

地元中心の流通みたいだけど、このお店がECしてたらもっと売れたかもしれないし、メルカリやヤフオクあたりに大根を擬人化して出品したらそれなりの値がついたかも、と想像は膨らむ。
(規格外野菜の流通については、さまざまな意見があると思うので、あくまでもマーケティングの一例としてあげさせてもらいました)

アスパラはその高いポテンシャルが明らかになりはじめているけど新冠名産のピーマンだって、まだその領域の覇者はいないんだから、やり方次第ではもっと伸びるはず。(業界ではいろいろあるんだろうけど、すくなくともいち消費者の僕まで浸透しているレベルの覇者はいないということで)

最後に、ナンモダ百貨で買ったビーツ。
葉、茎もついて、この大きさでなんと150円。


教科書で習ったアレくらいのイメージだけど、造血作用があって「食べる輸血」と言われるほどの栄養価なんだとか。
北海道に来たらビーツのひとつくらい扱えないとなと思って勢いで買ってみた。扱い方すらわかんなかったけど、そこはクックパッドさんの力を借りて、葉と茎はナムル、根はピクルスにしておいしくいただきました。
(ピクルス、写真がびみょうだけど、色鮮やかで見た目においしいだけじゃなくて、ざっくり漬けただけなのに、めちゃくちゃうまくてびっくりした)

野菜もおいしい日高へのご来道、お待ちしております。

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