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#桜

〈掌編小説〉 『鯨』

〈掌編小説〉 『鯨』

「僕、実は鯨なんです」
 最近よく顔を見るようになった男はそう言った。私が働いている定食屋でいつも唐揚げ定食を食べている。27歳の私と歳の近そうな男だ。
「わざわざ大海原から遥々いつもありがとうございます」
「いえ、海と比べたら陸なんて大した広さではないので」
「それでも泳ぐよりは遠いでしょう」
「この2本足というのが面倒で」
「いつもはヒレですもんね」
「そうではなくて、4本あるんだったら4本使

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掌編小説・桜泥棒

 彼が桜を持ってきた。彼、というか元カレなんだけど。鉢に入った盆栽みたいな桜は葉桜だった。前に見た時よりもひと回り大きくなっていた。「君と一緒なら花が咲くだろう」と言って、私の部屋の玄関先で鉢を押しつけて、私からはなにも話す間もないまま彼は去っていった。
「なに、それ」
 遊びに来ていたユースケくんが部屋の奥から私の抱えている桜を見て聞いてきた。
「これ、万年狂い咲きの桜だったはずなんだけど」
 

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掌編小説・万年桜と春生まれの彼女

 春生まれの彼女と一緒に桜を持ち帰ってきた。春からずっと花が咲いている。秋になり彼女が1週間出張で部屋を空けると花びらが散り始めた。彼女が戻ると桜は散るのをやめ、花は勢いを取り戻した。また春が来て彼女が部屋を出て行くと東京の開花宣言も出ないうちに部屋の桜は全て散ってしまった。
 そして部屋の桜は夏になって葉をたくさんつけて、風が部屋を抜けると葉の擦れる音が綺麗だった。エアコンをつけると葉を落とし始

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