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楽しみはもうしばらくとっておく

船はテムズ川をさかのぼり、ティルベリーへ寄港した。ロンドンから列車で約1時間の距離にある港町だ。ここには大した観光地がないので、皆ロンドンまで足を延ばす。

ロンドンと言えば世界有数の大都市。バッキンガム宮殿にビッグ・ベン、大英博物館にタワーブリッジと観光スポットには事欠かない。キングス・クロス駅の9と3/4番線でハリーポッターごっこをしたり、優雅にアフタヌーンティーを楽しんだり、1日では到底時間が足りない。駆け足で有名スポットを周る者、特に何もせずぶらぶら街歩きを楽しむ者、1日という短い滞在時間を思い思いに過ごしていた。

かく言う私はロンドンには行かず、カンタベリーとドーバーを訪れた。ロンドンでやりたいことはいっぱいある。でもあえてロンドンには行かなかった。というよりは行きたくなかった。たった1日でこの街を消費したくないから。ロンドンに降り立ったときの感動をしっかりと味わいたかったから。

私にとってイギリスは特別な国だ。小さい頃からずっと憧れだった。「海外」というものを初めて明確に意識した国かもしれない。ロンドン以外にも行きたい場所はたくさんある。旅行として短期間で周るのではなく、数ヶ月あるいは1年単位で暮らしたい国なのだ。

またイギリスには必ず戻ってくる。そう決意してロンドンには行かなかったのである。もうしばらくロンドンはおあずけ。楽しみはまだ先までとっておく。

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