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陽気な街にひそむ陰

アフリカ大陸を飛び出し、次にやって来たのは太陽の国メキシコ。首都メキシコシティの空港に降り立った瞬間、降り注ぐ太陽の光を浴びて自然と気持ちがあがる。アフリカとはまた違う熱気を感じ、これから起こるさまざまな出来事に期待を募らせる。

そうこうしているうちに日も沈みかけてきたので、急ぎ足で宿へと向かう。初の中米、治安の面や今後の情報収集のために、日本人宿へと泊まることに決めた。出迎えてくれたのは、ずっとにこにこしている陽気なおばさん。この日本人宿を長く運営し、メキシコ人ながら日本語も達者だった。

夜も更け、この宿に泊まっている日本人がぞろぞろと帰ってきた。アフリカではほとんど日本人に会わなかったので、これだけの日本人が揃っている状況に安心感を覚える。一通り挨拶が終わると、早速彼らが買ってきたテキーラで歓迎会が始まった。

それぞれの旅の話やこの街でのおすすめスポットなど、いろんな話が飛び交い話題は尽きない。そんな中、ふとこの街の治安について尋ねてみた。自分が調べた情報では、あまりいい噂は聞かなかったからだ。本当のところはどうなのか、この街にいる人に聞いたほうが手っ取り早い。

すると、先程のおばさんがこんな話をしてくれた。

「つい数日前にね、この近くに住む私の友達の息子が車に乗って仕事から帰ってくる途中、強盗に遭って殺されたの」

一瞬で周囲の空気が凍り付いた。それをみんなが感じ取り、互いに顔を見合わせる。その間もずっとおばさんは変わらない笑顔を浮かべていた。「よくあることよ。あなたたちも気をつけてね」。そう言うと、また違う話題へと移っていった。

この街では人が死ぬことなどさして珍しい話ではない。日本人には想像もつかない世界が存在するの目の当たりにした。日本の治安の良さを改めて認識するとともに、これからも安全に旅を続けるため、さらに身を引き締めていこうと誓ったのだった。




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