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2024.07.18 ART-SCHOOL TOUR 2024 ”Today Forever” @Spotify O-EAST

約1年前の私は、とあるきっかけから00年代のギターロックバンドに傾倒しており、同時代の色々なバンドの曲をとち狂ったように聴き込んでいた。

その中で最も衝撃を受けたのが、ART-SCHOOLだった。

なんでかと言われたら正直よく分からない。けど、心は、この音楽を欲しがっている。そんな感じ。私は未だにこのバンドの良さをいまいち言語化できずにいる。ART-SCHOOLの曲に対して抱く感情は、ほぼすべてが衝動みたいなもんだから仕方がない。



………そんなこんなで昨年の夏、彼らが所属するUK.PROJECTが主催するイベントに早速足を運んだ。そこで見たアートは物凄く良いライブをしていたんだけど、やっぱり彼らの音楽の何が好きなのかはうまく言葉にはできなかった。

それでもまた、ART-SCHOOLのライブに行きたい。その思いは変わることがなく、今回のワンマンツアーが発表されたタイミングで即チケットを申し込んだ、というわけである。

今回のツアーはGt.戸高賢史さんのART-SCHOOL加入20周年を記念して行われているものであり、この日はその最終日である。

2000年に結成してから今に至るまで、ART-SCHOOLはここでは語り切れないほどの紆余曲折を辿っている。戸高さんはその歴史の中に20年間携わり、このバンドをずっと守り続けてきた。そんな彼のアニバーサリーライブとだけあって、木曜日のSpotify-O-EASTにはたくさんのファンが訪れていた。

そのファンの中には、長年に渡ってアートを愛し続けてきた者たちだけでなく、筆者と同世代であろう若者も大勢いる。この客層の幅広さは、ART-SCHOOLがここまでの24年間で多くのリスナーから愛され、多くのリスナーとの信頼を築いてきた証だと思う。

ライブはほぼ定刻に開演。ターコイズブルーの淡い照明がステージを照らすなか、メンバーが登場。

これより ”Today Forever” 最終日が幕を開けた。


愛され続ける名盤、『Requiem for Innocence』

1曲目に演奏されたのは「車輪の下」。初っ端から2002年リリースのデビューアルバム『Requiem for Innocence』の楽曲を轟かせるところに、ただならぬ気合いを感じる。

続いて「ローラーコースター」「FLOWERS」「real Love/slow Down」と、確実に心掴まれる楽曲を連発。まだ4曲しか演奏していないのに、この時点で会場はかなり暑く、汗だくになった。


戸高さんは6月に『Requiem ForInnocence』のサブスクが解禁されたことに触れ、「このアルバムから3曲演奏します」とひとこと。フロアからは「待ってました!」といわんばかりの大粒の拍手。

「DIVA」「欲望の翼」「アイリス」と、怒涛のように演奏される22年前の楽曲たち。まだ戸高さんもいない時期にリリースされた楽曲だが、今でもこうして演奏してくれることがとても嬉しい。


「木下理樹の幸せは俺の幸せ」

「もう20年経つんですね。この20年の間にいろんな人がいなくなりましたね。(笑)」と、アートの20年を振り返った戸高さん。
それでもお客さんが信頼してくれたこと、信頼できる仲間(バンドメンバー)がいること、そしてVo.木下理樹さんがここまで生きていること……などへの感謝を述べると観客からも大きな拍手が。

戸高さんが「気づきました。木下理樹の幸せは俺の幸せ」と言ったときの理樹さんの表情がずっと忘れられない。照れながらも、本当に嬉しそうな顔だったから。

この時がいちばん、フロアからの歓声と拍手が大きかったのではないかと思う。散々メンバーが入れ替わったART-SCHOOLのなかで、このふたりが残ったのは、きっとなにか意味があるんだろうな。と思った。ふたりが目を合わさずとも、心から互いを信頼しているのだろうな、というのが伝わった。


ART-SCHOOLの今、そして未来

本編中盤には『Love/Hate』から「イノセント」「Butterfly Kiss」「Skirt」、戸高さんボーカルの「クオークの庭」「Mary Barker」など、これまでの歴史を振り返るような楽曲が複数演奏された。

戸高さんの声は爽やかさと甘さが両立したとても綺麗な声で、ART-SCHOOLの魅力を別の角度から映し出してくれる。最新アルバム『Luminous』に収録されている「Teardrops」もアートらしさ溢れる一曲でとても痺れる。


「来年は結成25周年なので、またいろいろなことができたらいいな…と思います」と戸高さん。これに対し、理樹さんが「次のトディの20周年はいつかな……?」と返した場面も印象的だった。理樹さんの口から「ジジイになっても(バンド)やろう!」という言葉が聞けると思ってなくて驚いたけど、彼がアートをずっと続けていきたいと思っているのが分かって嬉しかった。戸高さんは「え!?次の20周年て、俺何歳!?」といいながらへにょへにょな「スカーレット」のイントロ弾いてた。

それにしても今のアートって凄いよな、と流れゆく演奏を聴いて思った。Ba.中尾憲太郎さんは言わずと知れた名ベーシストだし、MO’SOME
TONEBENDERのドラマーでもある藤田勇さんも、アートの楽曲が持つ衝動や激情の輪郭を形作るためには欠かすことのできない存在である。
そして新たにgt.やぎひろみさんが加わったことによってギターは3本となり、サウンドが重厚なものとなった。

それぞれに魅力を持った5人のプレーヤーがステージ上で演奏する姿は、かっこいいのひとことに尽きる。いままでいろんなバンドのライブを見てきたけど、この5人が鳴らす音には不思議な引力を感じる。

それはたぶん、技術がとびぬけているとかそういう話だけではない。それぞれがそれぞれに演奏しているように見えるのに、ART-SCHOOLというひとつのバンドとしてしっかりと成立している。そんな感じだろうか。うまく言葉にはできないが、この5人がともに演奏することとなったのは偶然の連続なんかではなく、はじめから決まっていたのかもしれない。そう思ってしまうような説得力までも感じる。


「ジェニファー’88」の演奏中に、戸高さんが弾いていたストラトキャスターの弦が切れてしまった。即座にジャズマスターに持ち替えた戸高さんが「このジャズマスターで鳴らすべき曲を」といって弾き始めたのは、なんと「スカーレット」のギターリフ。こんな偶然があるのかよ、という展開にさらに気持ちが高揚する。ジャズマスターから鳴らされる歪みの効いたギターの音が儚くて、この瞬間を忘れないようにと必死に目に焼き付けた。

本編最後に演奏された「Bug」は、ノイジーかつドリーミーな音色で光を静かに見つめるような楽曲である。この曲を聴くたび、ART-SCHOOLが”いま”を歩んでいるバンドで本当によかったな…という気持ちになる。いまのART-SCHOOLは、淡い光に向かって進んでいる最中なのかもしれない。これからもこのバンドの未来を見ていたい。そう思いながら本編は終了した。


ART-SCHOOLが続いているのは「奇跡」なのか

私は、ART-SCHOOLがここまで続いているのは奇跡のようだと思っていた。でも、この日のライブを見て、それは違うのかもしれないと思った。

たしかにこのバンドが歩いた道は決して平坦ではなかったし、その道がいつ終わってもおかしくない状況も幾度となくあったと思う。

しかし、この日のライブで見たART-SCHOOLには、奇跡という言葉は似合わないのではないかと感じた。24年の間に起きたこと、そのすべてが今日という日に繋がっていたのではないかと思ってしまうくらい、今のアートのライブは輝いているから。

二度のアンコールを終えた後、理樹さんは「見つけてくれてありがとう」と観客に言い残し、ステージから捌けていった。こちらこそ、続けてくれてありがとう。そう心のなかで呟いた。

今日みたいな日が永遠に続くといいな、いや、続くんじゃないかな。そう思いながら会場を後にした。


今、いちばんかっこいいライブをするバンドだと本気で思ってます。25周年イヤーも楽しみ。

1.車輪の下
2.ローラーコースター
3.FLOWERS
4.real Love/slow Dawn
5.DIVA
6.欲望の翼
7.アイリス
8.イノセント
9.Butterfly kiss
10.それは愛じゃない
11.クオークの庭
12.エイジ オブ イノセンス
13.SANDY DRIVER
14.Mary Berker
15.Skirt
16.Teardrops
17.サッドマシーン
18.KILLING ME SOFTLY
19.ジェニファー'88
20.スカーレット
21.Bug

<アンコール>
22.Just Kids
23.汚れた血
24.ロリータ キルズ ミー

<ダブルアンコール>
25.BOY MEETS GIRL
26.FADE TO BLACK



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