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子どもの数が増えるということ。

「私、三児の母なんです^^」
誰かの口からそんなことを聞くと、以前の私は「この人よっぽど子どもが好きなんだろうな……!」と勝手に思っていた。自分が子どもを産む前、あるいは長女ひとりを育てるのに奮闘していた頃のことだ。

それから数年、そんな風にちょっと遠い目で見ていた《三児の母》に自分がなった。今は5歳3歳0歳の三姉妹育児の真っ最中だ。

我が子のことは可愛いけれど、私は特に子どもが好きなわけでもお世話好きなわけでもない。自分がそういうタチであるということは、長女が産まれてから嫌というほど思い知らされた。そんな自分自身と向き合い、自分なりに子どもとどう関わって来たかについてはこんな記事を書いたこともある。

私は末子、夫は長子として、それぞれ三人兄弟の家庭で育ったせいか、我が子を一人っ子にする考えはそもそもなかった。とはいえ、長女を手探りで育てながら「あと一人増えたらどうなるのか」をリアルに想像することはできなかった。そうこうしているうちに次女を授かり、お腹が少しずつ大きくなっていくと共に不安も膨らんでいった。


さらに間が悪いことに、臨月になるかならないかという頃から夫の関東での仕事が増え、月~金の完全ワンオペ育児生活が始まった。そして長女が2歳2ヶ月の時に次女を出産。産後は両家両親が交互に泊まり込みでサポートしてくれたお陰でなんとか乗り越えることが出来た。

長女はもともと自立心旺盛だったせいか、赤ちゃん返りをすることもなく妹のことをよく可愛がってくれた。その姿を見て、私ひとりではなく、長女と一緒に次女を育てよう、と思った。2歳児に本格的な家事は頼めないけれど、バウンサーに乗った次女にミルクを飲ませたり、私がオムツを変えようとするとそそくさとおしりふきを持って来てくれたりした。些細なタスクではあるけれどその気持ちが嬉しかったし、なにより「次女ちゃん、かわいいねぇ」と長女と二人で笑い合っている時は、ワンオペであることを忘れられた。

そして寝返りができるようになった頃には、二人で仲良く遊んでる姿を見る機会が増えた。2歳児と0歳児の意思疎通はいかほどか、私にはよくわからなかったけど、確かに二人はよく笑い楽しそうに過ごしていて、その姿からは長女ひとりを育てていたときにはなかった、なんとも言えない深い喜びが感じられた。

長女と一対一だった時は、すべてのアテンションが私に向かってきていたけれど、子どもが二人になるとそれが分散した。次女が大きくなるにつれて、二人の間で交わされるアテンションの量が増えていき、結果としてハハはその膨大なエネルギーから開放されたのだ。


次女は生後7ヶ月からフルタイムで保育園にお世話になった。待機児童が多いエリアに住んでいるため近くの認可園に入れることは端から諦め、長女を1才から通わせていた私立の認可外園に入れた。車で片道20分かかるうえに、保育料は二人合わせて月々約10万円。売上を伸ばすことを最も意識して仕事をしていたのはこの時期だ。この負担額は決してラクではなかったけれど、ひとクラスしかない小規模園で、長女と次女は親といるより遥かに長い時間を共に過ごしながら育っていった。親がいなくても、保育園にいても、近くに家族がいることはお互いにとって大きな安心感だっただろうと思う。



3人目を望むかどうかは、最初から意思が固まっていたわけではなかった。周りの《三児の母》の先輩には3人の良さをよく聞かされていたし、自分たちも三人兄弟で育ったのでイメージできる部分もあった。でも夫の仕事の大きな変化が望めない以上、平日ワンオペのままでそれが可能なのかどうか、いくら頭で考えてみても答えは出なかった。

この時の私の背中を押したのは、先輩ママたちの言葉だった。ひとつは、手のかかる時期を過ぎた子がいるママの「あと○才若かったら、もう何人か産んでおきたかったな……」という、少しの後悔が滲んだ言葉。そしてもうひとつは3人(あるいは4人!)の子がいるママの「子どもが3人いると社会が生まれるよ^^」という言葉。それによって《授かれたかもしれないのに、そうしなかったこと》を後悔するくらいなら、産んで苦労する方が面白い人生になりそうだなとうっかり思い、《3人の我が子たちが作り出す社会》とやらを強烈に見てみたくなってしまったのだ。

つまるところ私が3人目を望んだのは、子ども好きだからではなく単に《不安より好奇心が勝ったから》だった。それが親としていかがなものなのかは、よくわからないけれど。


望んだところで授かるかどうかは神のみぞ知る、のが妊娠・出産。もし3人になったら保育料が大変だな……と思っていたら、昨春から近くの認可園に長女次女が揃って入園できることになり、それに伴って保育料がこれまでの半額になった。そのことに私が安堵したのと、三女がお腹に来てくれたのはほぼ同時期だった。この時私は36歳、産後の体力を考えると3人目を積極的に望めるのは今年いっぱいだろうと思っていた矢先だった。

長女次女の時は妊娠期間を苦に感じることはほとんどなかったけれど、さすがに3度目となると様子が違った。つわりは三回とも皆無だったものの、とても疲れやすく腰痛も辛かったし、ショックだったのはこれまで産褥期間にしかなかった尿もれに、妊娠後期から見舞われたことだった。


その間に長女は5歳に、次女は3歳になった。しっかり者の長女はますますしっかりし、お風呂掃除や洗濯物たたみなどリアルな戦力になってくれた。次女はまだまだ頼りないことも多いけど、ずっと憧れてきた「おねえちゃん」に自分もなれるのだ!という期待が膨らんでいるのが見てとれた。

特にお腹の子が女の子だとわかってからは、三姉妹になったら……という「タラレバ話」によく花が咲いた。家族がまた増えることを二人が喜んでいるのがわかり、三女は私と長女・次女で(週末は夫も・笑)育てていこう、と改めて思った。


そうして2019年1月に、三女が産まれた。ワンオペ三姉妹育児が始まって、今で三ヶ月ちょっと。面倒見のいい長女がきっと三女をしっかり見てくれるだろうと思っていたら、「おねえちゃん業」にもはや新鮮味がないらしく、意外とマイペースをキープ。それ以上に次女の三女への興味関心が強く、構いたさ余って「いらんことしい」な毎日だ。

二人育児より三人育児の方がラク、を実感することも出てきた。以前は二人を同時に見なければならなかった場面で、長女と次女を二人で遊ばせておき、私は三女だけを見ておけば良くなったのだ。これによってお風呂は私と三女、長女と次女が時間差で入れるようになった。親が目や手を離しても上二人が完結してくれるのは、思った以上にありがたい。


《子どもが3人いることで作られる社会》の意味も、少しだけわかった。例えばご飯を食べるときや寝るときに、誰が「ハハの隣」のポジションをキープするか。三女に片側を取られている以上、残る片側を長女と次女が奪い合うことになる。いつの間にか「ハハの隣」を次女に明け渡していた長女が、ある日突然我慢を爆発させたのを機に、あらゆるルールづくりが始まった。夕飯を「ハハの隣」で食べた日は、寝るとき「ハハの隣」を譲る。その代わりハハと手をつないで寝ることが出来る。そしてこれを毎日交代制にする……等々。

そんなルールづくりを通して、気の優しい長女は自分の想いを提案に変える方法を知り、我の強い次女は少しだけ我慢を覚えた。二人だけの時はシンプルに済ませられたことが三女の存在によってやや複雑になり、それが二人の社会性を育んでくれると同時に、ハハをも否応なくレベルアップさせてくれる。例えるなら、プレイヤーからマネージャー、監督へと立ち位置が変わっていくようなものだろうか。



三人育児が始まったばかりなりに、現時点でうっすら思っているのは《子どもが多い方がラクなこと》は確かにあって、子ども好き・お世話好きではない私みたいな人にこそその恩恵が感じられるんじゃないかな、ということ。

三人同時にアテンションを飛ばしてくるとカオスだけれど、三女ひとりを相手にしているときは、今までになく愛おしさを感じられる心の余裕がある。「3人目以降は孫みたいなもん」というのは私の友人の名言だ。


裏を返せば、物理的には今より遥かにラクだったはずの一人目育児がなぜあんなに大変だったのか、それはもう《トンネルの出口がまだ見えていないから》に他ならない。一度通り抜けたトンネルは、次に通るときには見覚えがあるために大きな不安がない。そして3度目に通るときには、そこに咲いている花を愛でることさえできる。

そしてトンネルを再度通ることは「初めてだったからあんなに不安で大変だったんだな」「あの頃は自分もあの子もよくがんばったな……」と、自らの育児経験を冷静に振り返る機会にもなる。それはちょうどPDCAのCを経るようなものだ。その機会なく「育児って超大変だった……」という印象のまま育児期を終えてしまうのは、ある意味もったいないことなのかもしれない。


三女がもう少し大きくなり目が離せなくなってくると、今以上に余裕がなくなる時期もあるだろう。でもきっと、なんとかなる。私一人がなんとかするというよりは、夫や長女や次女を含め、みんなでなんとかする方法をその都度一緒に考えていくのだろう。

《結婚は悲しみを半分に、喜びを二倍にしてくれる》なんて言葉があるけど、これを育児に置き換えるなら《二人目は大変さを1.5倍に、喜びを3, 4倍にしてくれる》というのが個人的な感想だ。そして三人になると、きっともっと面白いことになる。

一人目育児に追われ、次のことなんて考えられない……という人には《案ずるより産むが易し》だということと、いずれ産むつもりがあるのなら1歳でも若いほうが身体はラクだよ!!!ということを、ぜひ伝えたい。



一人でも二人でも三人でも、今まさに育児奮闘中!!というママさんたちへ。今以上にがんばらなくていいから、力を抜きつつ、人の手を借りつつ、自分のご機嫌を自分で取る方法を考えつつ、共に育児期の喜怒哀楽を味わいつくしましょう。

たとえ今は泣きたいくらい大変でも、いずれ手放しでその存在を喜べる日が来るはずだから。



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