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ドアと鍵の物語〜第二章 2

壊れていたのは鍵ではなくドア。その事実に気がついたのは随分たってからだった。この鍵のせいでいろいろと変な体験をしたと思っていたけど、鍵の写真でなくドアの写真を撮るべきだった。そんなものはない。部屋に荷物を置いて、ベッドルームの写真を撮っても入り口の扉の写真を撮ることってあるだろうか?もう一度あのホテルへ行って扉の写真を撮る?いや、もう結構。そもそもあの扉は直すと言っていた。本当に修理したのか?ほんとどうでもいいじゃないか。数年後に行ったとしてももう同じ体験はできない。

壊れていたのはドアという事実に改めて衝撃を覚えるが、もうこのホテルでは鍵を使うことはなかった。フェズの滞在自体は楽しいものだった。街中でたまたま居合わせた中国人の観光客ご一行さんたちと半日一緒に過ごして夕食をご馳走になった。中国語を少し話せると世界中どこへ行ってもいる中国の方々と旅先で話ができて楽しい。海外旅行するような方々は生活に結構余裕があるから、彼らの習慣に触れるのも面白いし多くの中国人は親切で今回も爪切りとモバイルバッテリーを借りた。そして買い物に同行できるのが何とも面白い。中国ではモノの値段を交渉して買うのが常で、彼らは買い物が上手。今回も絨毯やらランプやらいろいろ買い物したらしい。フランス語を話せる現地在住の中国人ガイドが同行していて、スカーフを買い物するところを一緒に体験した。交渉に次ぐ交渉と現金支払い。時間はそれなりにかかる。でもその買い物自身を楽しんでいるようだった。最後の値段で便乗して私もカシミヤのスカーフを2枚買った。

フェズは日本で言うと京都のような古都。昔都がここにあった。もちろん京都のような趣はない。京都と同じく観光客で溢れていて、旅行中にフェズが嫌いという人に山ほど会った。すぐ近くにある街メクネスのローマ遺跡へ行くのがここへ来た目的だったけど、行けずじまい。そのうち行くだろうか?行かないなきっと。遺跡が見たいならローマやチェニジアへ行けばいいし、その後でやっぱりメクネスへ行きたくなるだろうか?モロッコへ行ったついでだからローマの遺跡に行きたくなるんじゃないかな。モロッコの、この国の遺跡に行ければそれでいい。庭園迷路を散策すればそれで十分だった。ローマもいいけどもっと面白いものがこの国にはある。

青い町シャフシャウエンのホテルは快適そのもの。西洋風のホテルを予約したから中庭ではなく窓がある。モロッコ式のホテルは可愛いデザインだけど、窓が中庭向いているのが難点だ。泊まったみて、このタイプの宿泊施設は受け付けないことがハッキリした。なぜだろう。モロッコ式のホテルに泊まると宇宙と切り離された感覚がある。ステキなシャウエンなのにあまり書くことがない。街を一望できるステキなテラスでの朝食。隣の建物の鶏の鳴き声が印象的。散策で見つけた地元の小さな小さなカフェ。あらゆる場所からの素晴らしい眺め。ここシャフシャウエンには日帰りでなく少なくとも1泊して、早朝の街を散歩してほしい。青い町の静かな朝を楽しむことができるから。

写真は壊れた鍵、ではなく壊れた鍵穴とペアの鍵
責任を負わされる鍵は悪くない。ドアが問題なのだ。

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