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行動デザインの主なフレームワークを分類してみた

行動経済学や行動科学、社会心理学をデザインに応用するためのフレームワークが無数にありますが、大きく3つに分類できます。

① 問題発見から解決までのプロセスを支えるフレームワーク
② 行動を要素分解するためのフレームワーク
③ アイディア出しに使えるフレームワーク

実際のプロジェクトにおいては

問題発見から解決までのプロセスを支えるフレームワークで全体の流れを理解し、② 行動を要素分解するためのフレームワークで問題点やフリクションを見つけ、③ アイディア出しに使えるフレームワークで介入に必要なアクションを決める。

上記の流れがスムーズです。
それぞれのフレームワークを見ていきます。

① 問題発見から解決までのプロセスを支えるフレームワーク


BASIC
OECDが作った政策立案者向けのフレームワークです。政策の問題点を行動科学の観点で検証できるよう5つのフェーズに分けられています。

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[引用]http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/BASIC.pdf
イギリス発祥のフレームワークで現地では納税しない人に向けて、「ほとんどの人が納税しているんですよ!」と伝えて納税率を上げたりすることに使われているようです。

環境省にも詳しい解説が公開されています。


Behavioral Design Process

NYにある非営利団体ideas42が公開しているプロセスです。前述したBASICとほとんど同じですが、

スクリーンショット 2020-09-03 7.29.26

[引用]https://www.ideas42.org/wp-content/uploads/2018/04/BDT_Playbook_FINAL-digital.pdf

少し違うのはプロセスを進めていくと、チームが新しいタッチポイントや文脈を構造的に深く理解する事ができるため、問題が再定義されます。そのためプロセスを行ったり来たりしています。デザイン思考のプロセスに似ていますね。


D.R.I.V.E.®

スイスにある行動科学をベースとしたアドバイザリー企業Affective Advisoryが開発しました。こちらも同様にターゲットになる行動を明確化し、どんな文脈が影響しているのか分析。科学的根拠に基づいた解決策を考案、介入していくフローです。

スクリーンショット 2020-09-03 18.34.58

[引用]https://affective-advisory.com/


② 行動を要素分解するためのフレームワーク

CREATE
Stephen Wendel氏が考案したモデル。『行動を変えるデザイン』として日本語の本も出版されています。分厚い本で内容盛り沢山なので、先にこちらのマガジンを読んで大枠を理解されることをオススメします。

スクリーンショット 2020-09-03 18.31.35

[引用]https://designing-for-behavior-change.jp/

キュー・反応・評価・アビリティ・タイミングのファネルを突破して初めて行動が発生するという考え方です。デジタルに限らずほとんどの行動がこのファネルを通っているように思います。

ユーザーが行動に至るまでのフェーズを分解してみると、どこにサービスやプロダクトの問題点があるか炙り出しやすくなりそうです。チームで共通認識を持つことができるのも良い点ですね。


BMAP

スタンフォード大学のBJ Fogg氏が考案したモデルです。

スクリーンショット 2020-09-03 19.00.51

[引用]https://www.behaviormodel.org/

モチベーション・能力・キッカケが同時に発生して初めて行動が起こることを表しています。この図を使うと「やる気を上げるよりも、簡単にしてくれたほうが人は行動を起こしやすいこと」が分かります。

以前解説した記事はこちら。


Hook

ベストセラー作家Nir Eyal氏が開発しました。詳しくはこちらの本に解説されています。特にスタートアップの方は必読です!

このループに入ると人は習慣的に行動を起こしてしまいます。FacebookやTwitter、Instagram、Apple Musicなどを例に取ると分かりやすいです。

スクリーンショット 2020-09-03 19.11.01

[引用]https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/hooked-model/

逆に言えば、このサイクルに入らなければ行動を習慣にすることは難しいでしょう。特にリピーターを増やしたい、アプリに戻ってきて欲しい時に有効だと思います。

通知(キュー)ばかりで行動を起こしてもリワードがなかったり、プロダクトにユーザーが投資する機会がないと(いいね!をすることでより自分好みのコンテンツが見つけられるなど)このサイクルには入ってくれません。


③ アイディア出しに使えるフレームワーク

MINDSPACE
イギリスのBehavioural Insights Teamが作り出したフレームワークです。

==========
Messenger  (誰が伝えるか)
Incentives  (インセンティブ)
Norm    (他人の様子は?)
Default   (デフォルトの力)
Salience   (目立ってなんぼ)
Priming   (無意識に刷り込む)
Affect    (感情に訴える)
Commitment (約束させる)
Ego     (自己像イメージに合う)
==========

に基づいてアイディアを出していきます。

たとえば花火大会のごみ問題であれば、駅でよく目立つゴミ袋(Salience)を無料で配り、帰る際にどの回収スポットに捨てるか決めてもらい(Commitment)あらかじめダミーのゴミ袋を回収スポットに積んでおけば(Norm)ゴミをちゃんと捨ててくれるかもしれません。

個人的にはEgo(自己像イメージに合う)ことが一番効くと思います。くわしくはこちら。


EAST
こちらもイギリスのBehavioural Insights Teamが考案。

スクリーンショット 2020-09-04 12.09.07

[引用]https://www.behaviouralinsights.co.uk/wp-content/uploads/2015/07/BIT-Publication-EAST_FA_WEB.pdf

EASY:簡単にすることで行動までの障害をなくす
ATTRACTIVE:惹きつけられるようなデザインやメッセージにする
SOCIAL:他の人の行動を見せる
TIMELY:行動しやすいタイミングで介入する

の4つの観点でアイディアを出したり、または磨いたりします。

行政系書類の申請書をシンプルにすることで受益者を増やす。駐車違反の罰金を払ってもらうために、振込用紙と一緒に駐車違反した自分の車の写真を送るなどの事例があります。


REFINE
スウェーデンの行動科学コンサルティングファームimpactuallyが開発しました。

スクリーンショット 2020-09-04 14.33.28

[引用]https://www.cmb-chalmers.se/wp-content/uploads/2018/12/Guide-nudging.pdf

REFRAME:
情報の見せ方を変えたり、利益よりも損失をアピールすることで受ける印象や思考の枠組み自体を変えてしまう
ENCOURAGE:リマインダーを出したり、事前に約束してもらったり、フィードバックを与えたりすることで行動を促す
FACILITATE:カンタンにする、物理的な障害を取り除くなど
INCENTIVIZE:失うことを強調したり、金銭的なインセンティブを逆に除き社会的インセンティブを働かせるなど


先にリフレームやファシリテートの要素をアイディアに加えられないか考えましょう。インセンティブが実際には一番考えやすいです。が、間違えると裏目に出てしまったり取扱いが難しいです。

デザインリサーチャーの木原さんが行ったストリートディベーターがリフレームの素晴らしい事例だと勝手に思っています。社会問題に挑戦されているめちゃいい人です。一緒にピザ食いました。




まとめ

① 問題発見から解決までのプロセスを支えるフレームワーク

どのモデルも問題の特定から分析するフェーズがあります。分析後に出てくるのはいわゆるインサイトですが、科学的な根拠に基づくと個人の解釈に依存しないためより一層インサイトの質が高まりますね。

またデザインによる介入の後、横展開できるのか、本当に効果的であったのか検証のフェーズがあります。行動経済学や行動科学によって人の不合理さが明らかになって来ましたが、100%行動を起こせる手法は確立されていません。

検証から得られたデータをさらに分析して、介入を続けることが求められそうです。

他のフレームワークと違って重要なポイントは具体的な行動(Behavior)とその結果(Outcome)を明確に定めることです。

ほんわか系の定義やふあふあ系の問いだと介入するためのアイディアやデザインにブレが生じてしまう経験があります。

スタンスをはっきり取るのは苦手ですが、本当に人を動かせるアイディアやデザインにするために具体的な行動とその結果を明確に定める必要があるようです。


② 行動を要素分解するためのフレームワーク

プロジェクトの初期もしくは行き詰まったら使う時だと思います。行動が起きた・起きなかったのいずれにせよ、その背景には何らかの理由があります。

どこで障害にぶつかっているのか、ユーザーの背中を押してあげたほうがいいのかをフレームワークを使って分解してみると明確になります。ジャーニーマップと組み合わせるとより全体感をつかみつつユーザーへの理解度が上がるのではないでしょうか。


③ アイディア出しに使えるフレームワーク

これが一番実践ですぐ使えそうです。通常のブレインストーミングから出たアイディアを磨くこともできますし、紹介したフレームワークを元にアイディア出しをはじめても良いでしょう。

ホームラン級のアイディアは難しいですが、ツーベースヒットを狙えるアイディアになると思います。


とはいえ、いきなりチームに「行動科学の視点でやってみましょう!」と言っても理解は得られないと思います。僕を含め、ほとんどの人は現状維持をしたい気持ちが力強く一気には倒せません。

まず事例の紹介やカンタンな実験をチームで行い「なんか面白そうだね」ポイントを積み重ねていくことから始めるのをオススメします。


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