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私たちはふつうに老いることができない【読書感想】


なんて、切実なタイトルだろう。

私たちはふつうに老いることができない。

うう、言葉を見ているだけで胸が痛くなります。

常識的に考えれば、老いはどの人にだって訪れる。
けど、気力と執念で老いを無視して生きてる人たちがいることを、私たちは知っています。
それは介護をする人たち。
私が頑張らねば、世話は誰がするんだと毎日を過ごしている人たち。

もちろん、介護の全てが苦難に満ちているわけではないし、いいこともある。
助けてくれる社会制度もサービスだってある。
けれど、じゃあ、大丈夫だよね?と放っておいてOK…ではないのが介護と、それを取り巻く人々なんだと思っています。

中でも、親の介護をする高齢者介護と、子の介護をする障害者介護は大きく違うなぁと感じます。

兎にも角にも介護する人の年齢が違う。
90歳の親の介護をする70歳の子。
50歳の子の介護をする70歳の親。
それが、どんなことなのか、どんな葛藤を抱えるのか、知っているようで実はよくわからないのが本当のところじゃないかと思っています。

老いていく自分、成長する子供。
体力がなくなる自分、有り余る子供。
この先何年生きられるかわからない自分、それ以上生きる子供。

「どんな苦労がある?」
「今どんなふうにしている?」
「これから先、どうしていこう」

そんなことを、これまでのこと、今のこと、これからのことの3部に分けて、家族の声をインタビューしています。

読み進めるほどに、専門職という立場のなんと支えにならないことかと悔しく虚しくなる一方で、知らなければ何もできない、声さえかけられないという気持ちが湧き起こって、よっしゃ、読める分だけ、自分の心が受け止められる分だけでも読もうじゃないか!と思える本です。

正直、ご家族は本音を専門職に話しているとは思えません。
それは、私たちの対応のせいもあるし、社会への諦めもあるかもしれない。いちいち説明するのが大変というのあるだろうし、そもそも障害あるなし、介護あるなしに関わらず人は他人にそんなに簡単に本音を明かさないわけで。

なので、せめて、もしかしたらこんな気持ちを抱えているのかも?と自分の想像の幅を広げるしかないんじゃないかと思うわけです。

重いテーマの割には、かなり読み進めやすい、いい本でした。
誰かや何かを糾弾しがちなテーマなのに、そこを隠さず、でも攻撃もせずというフラットな表現ができているのは、インタビュアーの児玉真美さんのお力です。さすが。

介護者だって、老いる。
介護者だって、病気になる。
いやほんと、そうだよなぁ…。その時にせめて、アドバイスという名の指示ばっかり出して、なんの力にもならない専門職だと思われないようにしたい。したいなぁ。

専門職あるあるの指導はするけどやるのは家族っていう当たり前の流れ。
それって一杯一杯になってる家族の役に立ってるんか?おおん?
相手の気持ちを考えていってるんか?ああん?

って脳内ヤンキーが私に囁くの。
いい本でした。

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