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振り出しに戻る。

小学生の頃、友達の家にあった人生ゲームをよくやっていた。マス目に書いてある出来事には特に一喜一憂せず、どこかひと事で、そこには自分の意志などほとんどなく、ルーレットの数字により左右される。
たとえ振り出しに戻ったとしても、「どうせゲームだし」とまたルーレットを回して、その数字の通りにコマを進めるだけ。
振り出しに戻ったところで皆無になる必要なんてない。

手術日当時、手術をする前はドラマチックな出来事は特になく、とても淡々とした日だった。
主治医、オペ看さん、麻酔科の人、PCR検査をする人、担当看護師さんなど色んな人が「よろしくお願いします」と挨拶にこられ、
看護師さんたちから「いよいよですね!」とお声がけをいただいた。


主治医から間違わないように足にマーカーで印をつけられる。

私の心情は正直なところ、手術どころではなかった。
手術前夜にニューヨーク公演の新たな問題が出てきていた。
薬の副作用でボーッとする頭で返信をして、上手く伝わったかなぁ…この先どうなるんだろうなどの不安の方が大きかった。

しかし、手術当日くらい何も考えないでおこうと思いTikTokを見て気を紛らわしながら過ごす。
そして、生理と手術日が重なるかもしれないと思っていたら的中!これが一番嫌だった。

オペ室に入ってからはとても早かった。名前と何故手術をするのかを3回くらい確認の為繰り返し聞かれる。

それから眠るための注射液をルート(点滴のカテーテル)から入れ、「あれ、なんか不思議な感じ」と喋りながら5秒後には意識はなく、気がついたら左右それぞれの方向から「平野さん、聞こえますか?」と起こされた。
テレビドラマでよくある映像で、ぼんやりオペ室の照明が見える。
「手術は成功しましたからね。」と先生。

病室に戻り、体から出てきたヘルニアをもらった。


私のヘルニア。中学生から付き合っていたモンスター。

それから2〜3日は、傷口の痛みとの戦い。
背中からナイフで刺された人はこんな感じなのか?!
それプラス生理痛。
なんて日だ!

2日くらいはベッド上、絶対安静をしなくてはいけないので、尿道カテーテル、そして傷口には血抜きの管が入っていた。
血抜きの管からは本当に鮮血が溜まるようになっていて不思議な感じだった。
手術後2日後に尿道カテーテルと血抜きの管は抜かれる。血抜きの管を抜く時はとても痛かった。おそらくナイフで刺された時、抜かれる時の方が痛いんだろう。そんな演出をしている映画•ドラマを何回も見たなぁとしみじみ思う。

傷口の痛みと生理痛もひどく痛かったけど、救急車で運ばれた日の方がよっぽど痛かった。気を失いそうなくらい痛かったから。

正直なところ、この傷口の痛みはずっと続くのか不安だったが、この日記を書いている術後4日目にはだいぶマシになっている。
体のストレッチもできるようになっている。
手術前は痛くてストレッチはできなかった。
車椅子に乗って自分で移動できるようになり、手術当日担当してくれた看護師さんから「もう自分で移動できるんですね!生理大丈夫ですか?心配してました」とお声をかけていただいた。
あの時は、私の体からどんだけ血が出るんだと心配した。

体は日に日にすこぶる良くなってきている。
しかし、私の生業は変えなければいけない。

リセットされた。
振り出しに戻り、0になった。


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