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ライフスタイルを支援に活かす⑶(アドラー心理学入門講座第4回より)

04月11日(木)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「アドラー心理学入門講座」が始まりました。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面でどのように活用できるか実践報告を交えて考えていきます。

第4回目のテーマは「自分自身を発見する~ライフスタイル」でした。noteでは、まず私のライフスタイルについて書きました。次にそのライフスタイルを職場でどのように活用しているかということを、会議の開催を例にして書きました。また実際の支援場面においては、なぜライフスタイルを知ることが大切なのかどのようにライフスタイルを読み取るのかについて書いてきました。今日は、最後に実際のケースを紹介して終わりにします。

障がいのある方を支援するには、その方の情報が必要です。その情報を集める手段として一般的にアセスメントシートを使います。しかし、それだけにとらわれすぎると支援者主体になってしまうという懸念があります。そこで利用者さんの楽しそうな場面や悲しそうな場面など、感情を表出させている場面に注目をしてそのエピソードを集めて体系化し、そこからライフスタイル読み解くようにしました。

ライフスタイルを体系化し、支援に活かした例を紹介します。

Aさんについて
支援者は、もっと積極的になって欲しい、困ったことなど支援者に相談できるようになった方が良いと思っています。
この方のエピソードを集めていくと、「とてもおだやか」「いつもニコニコ」「自分の仕事はしっかりやる」「自分の得意な仕事をしていると嬉しそうに自慢する」「新しいことを頼むと顔を曇らせて体をかたくする」「支援者がいろいろ聞き出そうとすると顔を曇らせる」などのエピソードが集まりました。
このエピソードから、Aさんは今の活動に不便はなく、マイペースで活動することを望んでいることがわかります。それに対して支援者の思いが逆に負担になっています。一般的には積極的であったり、困ったりしたことを相談できることはいいことです。でも人によってはそうではないということがあるということを確認しました。

Bさんについて
支援者の話では、ご本人の言うことが相手によってコロコロ変わり何が本心なのか、どの答えを尊重して良いのかわからない。その事をあらためてご本人に聞いたら泣き出してしまったという報告がありました。
この方のエピソードを集めていくと、「人あたりが良い」「みんなから声をかけられているときが嬉しそう」「自分が買って来たお土産をみんなにふるまっている時が嬉しそう」「他の利用者からうるさい、あっち行ってと言われて泣き出した」「支援者が注意するとすぐに謝る、何回も謝る」などのエピソードが集まりました。
このエピソードからBさんは、常にみんなと仲良くしていたいということがわかります。反対にちょっとでも他者から冷たい言葉をかけられるとダメージを受けるということもわかります。支援者によって発言内容を変えるというのは、その支援者に嫌われたくない、その支援者の言う通りにするのが良いと思っているのではないかと推測します。よってBさんに話をするときは事前に支援者間で話をまとめてから、ご本人に提示することが必要であるということがわかりました。

Cさんについて
支援者からは、他の利用者に対してきつい言葉で注意ばかりして困るという話がありました。
この方のエピソードを集めていくと、「真面目」「率先して仕事をする」「支援者に褒められると嬉しそう」「さぼっている利用者が嫌い」「いつもイライラピリピリしている」「他の利用者のできないところばかりを指摘する」「できない利用者のやろうとしていることを横取りする」などのエピソードが集まりました。実際にお会いすると、活動が始まるときや掃除の時間に小言が集中することがわかりました。
Cさんは一般就労の経験もあり、多くのことを一人でこなし、完結させることができます。そこで、Cさんが比較的、他の利用者をコントロールしそうな時間帯に一人でできるような仕事、もしくは支援者のサポートをするような仕事をお願いすることにしました。

Dさんについて
支援者からは集中力がない、新しい物ばかり買ってきてはすぐにあきてしまう、自分のやりたいことしかやらない、他の利用者と友好関係が築けないという課題があげられました。
この方のエピソードを集めていくと、「新しい物を買ってきた時が一番嬉しそう」「やってあげるよ、と自分から声をかけ楽しそうに手伝いをしている」「他の入居者に積極的に話しかけ会話をしているときが楽しそう」その反面、「そろそろ片づけて、と言うとムキになって続ける」「何かを頼むと怒る」「他の入居者から話しかけられると邪険な態度にでる」などのエピソードが集まりました。支援者は、Dさんの機嫌が良いときと悪いときの切り替えポイントがわからないと言います。
そこで支援者には、人の理想とする生き方は人それぞれ違うということ、また実体的な迷惑と精神的な迷惑を分けて対応をするようにと話をしました。さらに介入するのは第三者、もしくはDさんに実体的な迷惑がおよぶときだけにすることを統一しました。

今回のモデルはライフスタイルの4分類を想像しながらまとめました。しかしけしてこれでその人のライフスタイルが確定するわけではありません。障がいのある方とのコミュニケーションは言語だけで成立するものではありません。これからもさまざまな方法で利用者の望む生活をつかんでいくようにします。忘れてはいけないことは、どこで誰とどのような生活をするかということを自分で選べるように支援するということです。

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