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フィンランドで見た繊維リサイクル最前線

「World Circular Economy Forum 2023」に参加するため今年5月に3週間ほど滞在したフィンランドでは、サーキュラーエコノミー実践の現場をいくつも視察してきました。
今回はその中でも、フィンランドが特に力を入れている「繊維=Fiber」産業についてレポートします。

反毛というリサイクル技術

繊維というとかなり幅広い素材を意味しますが、欧州でFiber Industryというと主に衣類、糸、生地のことを指します。衣類のリユースは古着という形ではるか昔から市場を形成してきましたが、リサイクルとなると実はけっこう難しいのです。

しかしフィンランドでは、家庭からの衣類の分別回収が既に義務付けられており、それをリサイクルするインフラが整いつつあります。その中でも廃衣類を細かく裁断し、また繊維の状態に戻す「反毛」という技術を使った工場がパイミオという地区にあり、見学してきました。

半毛工程を経て繊維の塊となった衣類

この工場では家庭などから回収した衣類の反毛を行っています。まずはまとめて集めてきた衣類を手選別で種類ごとに分けます。古着としてリユース可能なものから取り除かれ、傷んでいたり需要のないものがリサイクルに回ってきます。ここからは繊維の色ごとに分けられており、混ざると上記のようなグレーの繊維となります。

日本では見たことない巨大なマシンで細かく繊維を裁断する
繊維を糸に戻した状態

この塊からまた糸を撚るとこのような状態になります。やはり一度ズタズタになっているので強度を保つため太くする必要があります。ここで色別に分けることが生きてきます。

これらが実際に再生繊維を使用した製品です。これらは100%再生ではなく、ある程度バージン繊維も入っていますが、見た目以上にゴワゴワしており、最近のユニクロなど素晴らしい技術の結晶を着慣れた我々にとっては、これはちょっと着られないかもなという感じです。

ケミカルプロセスを通じた繊維のリサイクル

Infinited Fiber本社の応接室

そこで登場するのがケミカルプロセスです。画像はフィンランドのスタートアップ、Infinited Fiberが開発したInfinna™という新素材で、先ほどの廃衣類や木材や紙を原料に作られる、ユニクロと遜色ないほど柔らかく着心地の良い生地です。こちらは2024年にも商業規模のプラントで生産が開始されるとのこと。

こういった出口を確かな技術で確保した上でリサイクルを行う。そしてその製品や技術を輸出してグローバルで稼ぐ。ちなみに先ほどの反毛を行う巨大マシンも国の補助によるもの。
このような戦略が国のバックアップのもと進められているのがフィンランドという国のようです。

内装材や吸音材として使われる再生繊維

リサイクルは出口が最も重要

ちなみに、日本でも昔から反毛によるリサイクルは行われておりますが、用途はこのようなマット状に成形した自動車内装材がほとんどです。下請け構造から脱せず、先ほどのマシンのような大きな投資は難しく、技術は失われつつあるという状況です。
日本でもユニフォームから自動車内装材へという取り組みは出てきておりますが、出口が限定されているためインパクトが非常に小さい。リンクの佐川グループの事例では1トンのリサイクルを目指すとのことですが、全体が何トンの内の1トンなのかがわからないと、価値ある活動なのかわかりません。

その点、フィンランドはもう少し進んでいるようです。上記はあるホテルのロビーにあるソファですが、こういった家具の内部に再生繊維が使われているとのことです。例えば佐川グループの事例で言えば、自社オフィスの什器や、内装に再生繊維を使ったトラックを自社で使うなど、日本でももう少しリサイクルの出口を意識して積極的に活用をしていく気運が高まると良いと思います。

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