デジタル写真の紫色
そういえば昔のデジカメは紫色が上手く出なかったなあ、と最近撮影したこの写真をPCに取り込んで思った。FUJIFILM X-M1は2013年発売だから、今から10年前の製品だ。しかしこれを見ると、ほぼ実際の見た目を忠実に再現している。機械的な部分は今のカメラの方が進化しているが、色再現についてはこの時代で完成されていると思う。後処理なしでここまで出るのは素晴らしい。カメラを引くと夕方の太陽光と人工光とのバランスを取ってくれて、寄ればしっかりニュートラルになる。
最初に買ったデジタル一眼レフはキヤノンだったが、訳あって直後にニコンに戻りD70を購入した。D70は2004年発売だ。写りは良かったがスピードに問題があり、生産終了直後で安くなったD2Hを追加で購入した。会社案内などで画質が必要な撮影はD70で、新聞などはD2Hで撮っていた。その後にD200を2台購入した。D200は2005年発売。まさに日進月歩の時代である。
しかしとにかく紫色が出なかった。いわゆる紫の他に、青紫、赤紫、それに加えて色温度の高い低いによって微妙な変化を見せる紫色は、デジタルカメラにとって鬼門だったのだ。日本の伝統的な舞台表現でも紫色は高貴な色として多用される。代表的な演目に長唄の「藤娘」がある。肝心の藤の花の紫色がすべて青っぽくなってしまい、舞台写真の会社の代表の女性カメラマンがヒステリーを起こしていた。そういった営業写真は大量に撮るのでRAW撮影などは無理である。
D3とD300が出たのが2007年だ。今こうして調べてみると、当時は新製品が出るスパンが驚異的に短い。D300は多い時で3台使っていた。今でも覚えている出来事がある。最初のD300を買った直後のことだ。その少し前から紙媒体の仕事が激減し私はネットに活躍の場を移していた。D300の初仕事は企業広告の撮影だった。その企業のコーポレートカラーが何と薄紫色だったのだ。
しかしD300のオートホワイトバランスは、受付に掲げられたその会社のロゴをほぼ忠実に再現した。だが一方で人物の肌色の再現に関してはD200の方が良かったなと思う部分もあった。「D300のオートホワイトバランスは強引に白を白に持っていく。ニコンもキヤノンに似てきたなあ」と、当時のブログに書いた記憶がある。もちろん仕事はそれで良いのだ。現在ではそういう白を飛ばした味気ない表現がスタンダードになっているように思う。
私は印刷用語で言うところの「少し墨っぽさ」を残した色合いの方が好きだ。しかし広告にそんなものは必要ない。若い頃に航空会社の機内誌の撮影をしていたが、何とか自分を出そうとしすぎて、「お前の写真集を作ってんのと、ちゃうねんどー!」とコーディネーターに怒鳴られたが、そういうことである。
まあ全てはリーマンショック前の昔話である。富士フイルムはニコンのボディを使って、撮像素子だけを独自開発したシリーズを販売していた。D200をベースにしたFinePix S5 Proにはずっと興味を持っていた。買うことはなかったが。富士フイルムは、他のメーカーがみんなキヤノン的になっていくなかで、日本の湿度のようなものを表現できるカメラメーカーなのではないだろうか。
X-M1の写りは全く文句のつけようがないが、機械的な部分は不満な点も多い。「自分はiPadminiからステップアップした初心者なんだ」と自分自身に言い聞かせれば使えるレベルではあるが。たぶん我慢できない日が近い将来に訪れる。レンズは単焦点2~3本で良いとして、もう少し上位機種をいずれ導入することになるのか。
まあ良い。しばらくはこのままで!ペンタックスK-3ⅢMも使いたいし。フィルムも使いたいし。うっかりフィルムライカを触ったら、その良さにため息が出た。そんなこんなで2023年も終わっていくのでありましょう。
とにかく富士フイルムのデジタルカメラが出す色は良い。とだけは言っておこう。
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