ペットと暮らす人の話_01
妻の子供の頃からの友人にハワイ在住の女性がいる。現地の日系人男性と結婚して幸せに暮らしている。彼とは一度だけ会ったことがあるがナイスガイだ。女性の名前は仮にKとしよう。
そのKから妻にLINEで動画が送られてきた。妻から私へシェアされた。それは長年かわいがってきたであろう飼い猫を安楽死させる様子だった。ハワイの動物病院の一室で、折りたたんだ毛布の上にグレーの猫を抱くK。猫は毛並みも悪く、一目で状態が悪いのが分かる。
左側に立った病院の先生の手が見える。最初は少しのけぞって暴れる猫。しかし先生が首筋を優しく撫でるとすぐに落ち着く。右腕に注射が打たれる。わずか数秒で猫はクタッと力なく顎をKの左腕にあずける。数秒で目を閉じる。脇腹にキスをするK。Kの夫のカメラは猫の顔をアップにする。「クタッとなったね」とその様子の真似をするK。
先生が聴診器をお腹の下に差し入れる。命が絶えたのを確認したのだろう。先生から何かを告げられたKは、自分を納得させるかのように2、3回小さくうなずいた。次の瞬間なぜかカメラはKの肩のあたりに寄っていく。おそらくKの夫は猫にキスをして別れを告げたのだろう。カメラは引いていき、Kが一瞬だけカメラ目線になり動画は終わる。
素晴らしい動画だった。これを撮るという判断。そして親友なら分かってくれるだろうと私の妻に送信する勇気。
添えられた文章によると、この猫ちゃんは脳の病気が治らず最後の頃には盲目になってしまったそうだ。「おつかれさま!行ってらっしゃい」という感じです。と彼女は結んでいた。
いろいろ葛藤しただろう。先生とも相談を重ねて、夫とも何度も何度も話し合っただろう。その上での安楽死という決断のはずだ。
追記
2024年6月11日
タイトルを付ける際に悩みに悩んだ。「ペット」という言葉を使うことに抵抗があった。01.猫を安楽死させたK。02.SNSに犬や猫を載せる人たち。03.外猫を家猫にしてしまい、最後まで小さな後悔をし続けたM。彼らや彼女たちにとって、犬や猫は家族でありペットではないだろう。
でも多くの人に読んでもらい問題提起をしたかった。やむを得ず「ペット」という言葉を使った。しかしずっと心にしこりが残った。
投稿から3か月弱。どうしても言い訳をしたくて追記した。
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