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ニコンのフィルムカメラ:FMとFEの系統

ニコンの中級機であるFMとFEの系統について書いてみよう。あくまで極私的な体験記だ。冒頭の写真は現在所有している2台。これについては最後に書く。

FMのMはメカニカルで機械式。FEのEはエレクトロニクスで電気式。シャッターの駆動方式の違いである。それぞれに改良を重ねていった。FM系統の発売は、FMが1977年。FM2が1982年。ニューFM2は1984年。FM3Aは2001年。FE系統の発売は、FEが1978年。FE2が1983年。チタンなどの特殊モデルは除く。詳しくはWikipedia等を読んでほしい。なおWikipediaではFAをFE系統に入れている。もちろん便宜上のことだろうがFAは違うと思う。

これらのすべてを使ってきた。時系列で語っていく。最初に買ったニコンはF2アイレベル。1985年ハタチのときのことだった。当然中古である。大学2年生で撮影のアルバイトを始めるとやはりメーター付きのカメラが必要になった。そこでニューFM2を新品購入。その後、何年の事かは忘れたがニューFM2が生産終了になるという噂が出た。ネットなどない時代でそれは完全に口コミで広がった。

カメラ店から一斉に在庫がなくなった。あちこち電話をかけまくり、池袋東口にあったカメラのきくやに在庫があった。1台追加購入して安心した。しかしその噂は完全にガセだった。ニューFM2はF3とともに2000年頃までのロングセラーとなったのだ。その頃に安かったので中古のFM2も購入している。ニューFM2とはシンクロ速度が異なるだけだ。あとは若干スクリーンが暗いのだったか。うろ覚えだけど。しかしこれはあまり程度が良くなく処分した。

ニューFM2のあの噂は何だったのだろう。時期も明らかではないので想像の域を出ないのだけど、おそらくその頃にFE2が生産終了になって、ニューFM2も?という予想が一人歩きしたのかもしれない。FE2は生産終了後に中古の相場が高騰した。1980年代末のことである。

中学時代の友人にSちゃんという男がいた。木曜6時間目の必修クラブで同じ写真クラブだった。暗室作業の虜になり、先生から鍵の管理を任され2人でまるで部活動のように熱中していた。そのSちゃんは大学時代に、とある事件の被害者となり死んでしまった。彼の当時の愛機がFE2だった。彼の死後に、そのブラックボディは母親から私の手に渡された。

しかし何と私はそのカメラを売却してしまったのだ!しばらく使ったが先ほど述べたFE2の中古価格高騰の時に。いま思うと考えられないことである。なぜか親しい友人は早死にしてしまうのだが、遺品を売却したのはこの時だけだ。24〜5歳だったか。住居を引っ越し、過去のものを脱ぎ捨ててステップアップに躍起だったころ。過去が重荷になったのだろう。しかしこれに関しては今でも悔いている。

2台のニューFM2は酷使しては買い替えて、都合3〜4台は買ったと思う。仕事をするようになりF4Sがメインになった。サブにF-801Sを買ったが並行して使うと、どうにも上手くいかない。結局F4Sを追加購入。2台のニューFM2も長いこと現役だった。内容によってはニューFM2だけで取材に行くことも多かった。

1990年代後半はキヤノンEOSをメインにしたが、マニュアルニコンは使い続けた。

デジタル化の足音がひたひたと近づいて21世紀の幕が開ける。まさにその2001年の初め。FM3A発売の噂が出た。今ほどまだネットの情報も普及していない時代。行きつけのカメラ店のプロ対応からの内緒話として耳にした。F3やニューFM2も在庫限りとなり、いよいよMFフィルムカメラが終わるのだと思っていた。奇跡だった。

噂の段階で予約を入れた。7月。発売日にブラックボディを入手した。FM3AはFM系とFE系のハイブリッドシャッター。絞り優先オートは電気式で無段階に切れ、マニュアル時には機械式で切れる。露出表示は針式で見やすい。ニコンの中級機の完成形と言えた。

しかしそれから数年。これも手放すこととなる。デジタル化がいよいよ本格的になり、仕事の仕組みも変わった。お金も必要になる。従来の仕事はどんどんなくなっていく。やむを得なかった。一方でこのFM3Aにはあまり愛着を感じられなかったのも事実だ。幅が細く尖り過ぎなペンタプリズム。直線的デザインには似合わない斜めロゴのNikon。それは「ひどい寝ぐせが付いてるのに気づかずに歩いている人」を思わせた。

2007年頃。印画紙の高騰とデジタル機器の増殖により、暗室の維持が困難になる。ここでフィルムを諦めたのだが、どうしても寂しくなり2012年頃からニコンFとライカM2を買い、フィルム再開となった。最初はリバーサルだけだったが、モノクロを現像までやって、スキャンでデータ化するやり方で現在まで続けている。

順調にフィルム機材は増えてゆく。そして2022年のいま。手元にあるのは初代のFMとFEである。FMはコストダウンしていない初期型。どちらも機能的には後から出た機種の方が優れているのだが、仕事で使わないとなればこちらの方が出来が良い。ペイントの質。レリーズの感触と音の柔らかさ。ボディ前面に機種名の表示がない。たったこれだけの事でもこの2台を選ぶ価値はある。カメラの進化の歴史は、人に優しくという名目での多機能化とコストダウンである。

誰もがみんなスポーツを撮ったり星を撮るわけではない。それでも若い頃なら「そういうものも撮れる」機能に夢を感じることもあるだろう。しかし年齢がいって自分のスタイルが決まれば、シンプルで枯れた機能で充分だしその方が自由になれる。人間は自分の中に元々あるものしか作れないのだ。

機械でも芸術作品でも感じるのは「すべては最初期の物に魂が宿る」ということだ。ミュージシャンのアルバムでも写真家の写真集でも、まず同時代の作品を好きになり、新作を楽しんでゆく。それが一段落すると歴史をさかのぼり、最後はデビュー作にたどり着く。カメラでも同じことが言える。

最後にこれを読んで購入しようと思った人へ(いないか)。FMもFEも発売から半世紀近く経過したカメラだ。現在市場にあるボディは当たり外れが大きい。当たり1:外れ9と言ってもよいだろう。何を重要視するかは人それぞれだ。シャッターやミラーや巻き上げに問題を抱えているのは論外として、FMに関してはファインダー(スクリーン)が綺麗なものを選ぶこと。他の機種はFM3Aのスクリーンと交換が可能だがFMは不可能だからだ。

私はこの2台をどちらも1万円以下で掘り出した。FEは若干のスレありなのとファインダー汚れだったが、前述したようにスクリーン交換とプリズム下部の清掃で綺麗になった。FMは露出計不良で安かったが、電池蓋が液漏れで錆びていただけで交換したら動き出した。メーターも正常値。外装の塗りもまだ半光沢で新品同様と言えよう。この辺のカメラを探すのは中古カメラ道の醍醐味だ。ちゃんとした中古カメラ店が長く残りますように。


電子書籍

「カメラと写真」
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