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読者の想像力を掻き立てろ。

人には「五感」がある。

情報を得る為の、感覚器官
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚。

これが「五感」だ。

シナリオの基本である文字(活字)は間違いなく視覚情報だ。
しかし文字を通して得た情報は、ユーザーの想像を受けて膨れていく。

視覚情報が脳に伝わり、
最終的には他の感覚で情報を得たかのように感じることが出来る。

それこそが想像の力だ。
私たちクリエイターはこれを考慮して作品を作らねばならない。

想像を通して情報が膨らめば、
共感、感情移入、自己投影といった、
ユーザーを引き込む要素へと繋がる。

だから考慮しない理由がない。
使えるものは使うのだ。

そんな五感に基づいた想像をさせられるような文章を、
私たちはどう書いていけばいいのか。

今日はその考え方を2つ紹介しよう。


比喩という技術、その中にある意味。

1つ目は、別の物事を使って描くこと
作家なら知っている可能性は高いが「比喩」という表現方法だ。

物事に対して、共通点のある別の物事を用いて表現する
つまり物事を直接描かないことによって想像させるのだ。

……当たり前のこと言うなって?
ならもっと深く読み解いていこう。


例えば「空の青さを知る人よ」というアニメ映画があった。

そのタイトルでもある言葉は、
「空を見上げたことのある人・またはその行為」という風に捉えられる。

つまりは「見上げる」を「青さを知る」という形に比喩した訳だ。
ずっと俯いてばかりの人、
過去を見てばかりの人へのメッセージのような言葉だと私は思っている。

こうして直接描かないことによって想像は膨らむ

しかし当たり前だが、ただ難解な比喩を書くことに意味はない。
この技術のコツは人が想像しやすいものへと言い換えることだ。

それはであったり、日常に存在する物であったり、
学校や社会といった誰もが通るような人生の1シーンだったり。

知っていて当たり前、と感じるような物を使うと想像させやすい。


ただ比喩としてもそのまま書くと何かアレだ。
ちょっと文学的になるように、文章の中で比喩を複数使うといい。

「君の膵臓をたべたい」という作品がある。
そのタイトルの意味を考えてみよう。(ややネタバレかもしれない)

作中から読み取れる直接的な意味は、
「あなたが好きだから、一緒にいたい」
という感じだ。

その「好きだから、一緒にいる」という部分を比喩にして、
「君の膵臓にある病気を消して、生きてほしい」
という言葉に置き換える。
(これは比喩というより「言い換え」と言った方がいいかもしれないが)

更にそこから「病気を消して、生きていてほしい」という言葉を比喩して、
「君の膵臓をたべたい」という言葉に変える。

こんな風に一つの文章で複数の比喩(または言い換え)を使うと、
文学的になる

だがもちろん徐々に意味が分かりにくく、
つまり想像しづらくなっていく

だから使いすぎには注意だが、
考え方としては分かりやすいのでオススメだ。

……因みに、
原作者は「君の膵臓をたべたい」という言葉を最初に思いついたらしい。
比喩から作品が生まれたのだ。
凄いよな、尊敬しまくりだ。


想像に大切なのは、考えさせること。

2つ目の方法は、あえて書かない部分を作ること

何でもかんでも説明してしまえば、
ユーザーはただ情報を受け取るだけになる。

だからユーザーが自分で想像しなければならなくなる
そんな余地を作ってやる必要があるんだ。

とはいえ何も説明しなければ、どんなものを想像すればいいか分からない。

考える為の材料を揃えた上で、
一番想像して欲しい部分を書かないという考えを持とう。


例えば、空について想像させたいのなら。

「天気のこと」
「場所のこと(空が見えやすいのか、どんな高さか)」
「視力のこと」

とかを説明した上で、空を書かないようにする。

実際に文章で書いてみると。

スマホの中、天気予報には雲一つない太陽が並んでいる。
ズレていた眼鏡の位置を直して、自転車のペダルを踏み込んだ。
そして公園の中でも木々のない開放的な草原へとやって来て。
ただ夢中で、その柔らかな地面へと背中を預けた。

どうだろう?
これだけでだだっ広い青い空が想像出来るのではないだろうか。

ここまで材料を説明してやったら直接書くなんてナンセンスにも思える。

それにこの前も記事で言った通り、
知っていることを二度も説明されることはストレスにもなる

書かないという技術はストレスなく想像を掻き立てられるような、
使いこなせば最強の技なのだ。


と、今日は2つの想像を膨らませる書き方を解説してみた。

あくまでも私の考えだから、
鵜呑みにはせず一つ参考にしてくれると嬉しい。

これからも皆さんの創作が、誰かの想像を生み出すことを願って

では、また会おう。


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