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【連載】今日は日本文学を読もう-芥川龍之介編②-子供から大人まで読むべき最初の短編『蜘蛛の糸・杜子春』

あらすじ

雑誌「赤い鳥」等に発表された、芥川の〈年少文学〉。 芥川文学の入門編としても最適の一冊!

地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落ちる「蜘蛛の糸」。
大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福をみつけた「杜子春」。
魔法使いが神の裁きを受ける神秘的な「アグニの神」。
少年少女のために書かれた、健康で明るく、人間性豊かな作品集。

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1.芥川入門編の一冊といえばこれ!!


前回の記事はこちら↓


さて、以前紹介した新潮文庫編の『文豪ナビ』によれば、この芥川の「蜘蛛の糸・杜子春」は入門編として一冊目に読むのがオススメと紹介があります。

なぜならこの「蜘蛛の糸・杜子春」は子供から大人までスッと楽しめる「王朝モノ」「歴史モノ」といった童話の改良のような作品が主に連なっています。
私自身この本を手に取ったのは中学生の時。
その当時からとても楽しく読めました。
そして大人になった時分、改めて読み返してみるとどのお話も味があってより楽しめます。
芥川といえば、この作品を最初にオススメして間違いのない一冊といえるでしょう!!!

そんな「蜘蛛の糸・杜子春」の収録作品を全力エクストリーム解説していきます。


2.蜘蛛の糸

幸(さいわい)、側(そば)を見ますと、翡翠のような色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけております。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました。

*言わずと知れた芥川の名作。(子供のころ父親に聞かせられたっけ)
丁寧口調な語り口が恐ろしさを演出している代表的な作品。
主人公の犍陀多はドラクエシリーズに登場するモンスター、「カンダタ」の由来か。
とても短く芥川の神髄を知れるお話。

ドラクエのカンダタ


3.犬と笛

*古事記にも出てきそうな日本神話調のお話。
実際に主人公のモデルはそうなのかも。
仙人からもらった犬と笛で懲悪する。
日本昔ばなしのよう。

4.蜜柑

*こちらも「蜘蛛の糸」同様、とても短いお話だがラストのシーンでの爽やかな読後感で有名な作品。
少女にひどく嫌悪感やじれったさを覚えるが、終盤には見事な感情の変化がみられる「大人用」の作品である。

5.魔術

*印度人のミスラくんに主人公共々、我々読者も魔術にかかっちまうようなお話。めちゃめちゃ妖しく、これぞ芥川ツ!!!と言いたくなるようなお話。

6.杜子春

或(ある)春の日暮です。
唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。
若者は名を杜子春といって、元は金持の息子でしたが、今は財産を費(つか)い尽して、その日の暮しにも困る位、憐(あわれ)な身分になっているのです。

*代表的な「王朝モノ」の作品。
最後、仙人に試され、親をぶたれるシーンはとても辛い。
童話調で読みやすい。

7.アグニの神

「魔術」のような妖しさ全開のお話。
囚われの少女を開放するというスリリングな展開から、勧善懲悪となるストーリ。よかったね。となる。

8.トロッコ

少年の焦燥感が読み手に伝わる、そして幼少時代の「トラウマ」がテーマである物語。こちらも短いながら情景鮮やかで「大人」に訴えかける作品。

9.仙人

僕の大好きな芥川の作品、「邪宗門」でみたトンデモ展開の片鱗が感じられる物語。結構好き。芥川のこういう作品結構好き。

10.猿蟹合戦

有名な昔ばなし、「猿蟹合戦」を題材にした社会風刺作品。
後期代表作「河童」にも通ずるものがある。
ラストの一文、

「君達も大抵蟹なんですよ」

は実にシニカルである。


11.白

真っ白い犬が主人公の勇気あふれる物語。
ジャングル大帝とか、ライオンキングとかに通じるものがある。
現代では非常な場面もあるが(動物好きはつらい)
最後には報われるサクセスストーリー。
途中に出てくる芥川創作の新聞社による新聞記事で書かれるまとめ記事はめっちゃ斬新。

12.おわりに

以上、「蜘蛛の糸・杜子春」のかんたん解説でした。
短編の宝庫である芥川は、日本文学入門編にはもってこいです。
一度この短編の切り口キレッキレの作品にハマれば、あとは野となれ山となれ。自動文学追尾マシーンになるより他ありません。
いいじゃないですか。君達も大抵蟹なんですよ。



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