ねエ、およしよ!-刺青・秘密/谷崎潤一郎
<日本文学篇03>
あらすじ
肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉が、年来の宿願であった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた時、今度は……。
性的倒錯の世界を描き、美しいものに征服される喜び、美即ち強きものである作者独自の美の世界が顕わされた処女作「刺青」。作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編を収める。
用語、時代背景などについての詳細な注解を付す。
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谷崎潤一郎はガチガチに古い言葉が多くそれによって注釈もかなり多いが、不思議と読みにくくはない。
有名な春琴抄、痴人の愛と読んできたが一言で言うと変態。
の裏に当時の風俗や歴史背景が垣間みえてとても面白い。
この本は刺青・秘密の表題作の他に2篇特にオススメしたいものがある。
「少年」と「母を恋うる記」。
今風の言葉で率直に言うと「少年」はまじでやばい。
みる人が見たら相当にキモい。
あの時代でしかも少年時代にSMで、当時の人はこれを見て衝撃だったのではないか?
正直笑ってしまった。(またやってるわこの人!)
漫画家、古屋兎丸氏にコミカライズされているものがあるのでそちらも是非一緒にご覧いただきたい。あの郷愁的な絵柄と怪しさがかなりマッチしている。
この本には収録されていないが、「春琴抄」も「ホーキーベカコン」と言う名前でコミカライズされている。
絵柄も素晴らしく双方の読者からもかなり評判が高い作品だ。
谷崎の作品は映画かとかドラマ化よりも今の日本の文化の象徴である漫画など、二次作品に落とし込んだほうがかなりマッチする気がする。
ほら、日本は映画弱いし・・・
次に「母を恋うる記」。
こちらは今までの谷崎作品だと思ってみるとしっぺ返しを食らう。
文章がとても美しく情景に引き込まれる。
内田百閒の作品のような、夢の中を歩いているような感じ。
好きだった一文。
月の涙が女の頬の上にばかり落ちてきて、私の頬に降りかかららないのはなぜだろう
「少年」と「母を恋うる記」のテンションの違いをぜひ一読いただきたい。
2020:11
100円でいい事があります(僕に)