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アンティークカップについての考察など。

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カップや窯などについての考察をまとめております。
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記事一覧

釉下彩と盛上による富士絵のカップについて

この度アメリカより入手した、美しい富士絵が施された卵殻手のカップについて考察します。 小ぶりのデミタスサイズで非常に薄造り。青磁風の淡いグリーン地は釉下彩によるもので、近景には吹絵による表現もみられます。 富士山の冠雪部分は、器体に白泥をのせた"盛上"によって表現されています。 盛上とは、いわゆる"Pâte-sur-pâte" のことで、古くは中国・明時代から行われていたといわれており、ヨーロッパでは1851年頃にフランス・セーヴルのおいて新しい技法として完成させていま

ルックウッドのカップについて

このたび入手した、美しいルックウッドのカップについての考察をまとめています。 ルックウッド製陶所は1880年、アメリカのオハイオ州シンシナティに、マリア・ロングワース・ニコルズ・ストアラーにより設立されました。 設立当時、日本人技術者である白山谷喜太郎が同社へ招かれたことでも有名です。白山谷は優れた作品を残し、同社の基礎を築きました。1889年に開催されたパリ万博では金賞を受賞し、国際的な名声を得ています。 その後、財政の悪化などにより閉鎖、買収、移転などを経て1967

クロステレ(グラフ・トューン磁器会社)について

ボヘミアを代表するメーカーのひとつであるクロステレの変遷についてまとめました。 ■グラフ・トューン磁器会社 *1793年 Johann Nicolaus Weber が陶器工場をクロステレに開窯。 1793〜1800年 Johann Nicolaus Weber Porzellanfabrik, Klosterle *1801年 Graf Thun (トューン伯爵家) の所有となる。 1801〜1820年 Graflich Thun' sche Porzellanfabr

エルボーゲン社について

ボヘミアを代表するメーカーのひとつであるエルボーゲン社の変遷についてまとめました。 *1815年 Eugen & Rudolf Haidinger により設立。 1815〜1873年 Gebruder Rudolf & Eugen Haidinger k. k.priv. Porzellanfabrik, Elbogen *1873年 Springer & Oppenheimer に売却。 1873〜1885年 Erste Elbogner Porzellan & Kohl

18世紀末と19世紀中頃のロイヤルコペンハーゲン製ブルーフラワー・カップ&ソーサーの比較

この度、19世紀中頃のロイヤルコペンハーゲン製、ブルーフラワーのカップ&ソーサー (左)を入荷したので、資料コレクションとして所持している、18世紀末の同類の作例(右)と並べて比較できる機会に恵まれました。 双方、カップの直径が83mm程、ソーサーの直径が145mm程のたっふりとしたコーヒーカップです。 18世紀末の品にはロイヤルコペンハーゲン製であることを示す三本線に加えて、ペインターナンバー"3"が記されていることから、この時期に同窯に在籍した Christian A

真正セーヴル(+α)のカップついて

長年の疑問が解決へ進んだので、書き留めておきます。 画像のセーヴル、ディメール型のティーカップについてなのですが、

¥1,000

幕末から明治にかけての瀬戸染付について

2022年の8月3日水曜日。最高気温38℃にせまる中、灼熱の瀬戸の街を訪れました。 瀬戸電を降り、藤井聡太氏の垂れ幕を見上げながら、誰もいない末広町商店街を抜け、さらに進みます。 瀬戸染付工芸館に到着。 目指すは交流館2Fの染付展示室。 幕末から明治にかけての瀬戸染付の銘品を拝見しながら、その技術や歴史について学ぶことのできる空間でした。 そもそも染付とは、一般的には磁器の素地に酸化コバルトを含む顔料で絵付を施した焼物です。 ■染付鳳凰紋カップ&ソーサー 明治前期

瀬戸の染付のカップについて

先日入手した美しい染付のカップについての考察をまとめています。 余談ですが、この品は某骨董店の軒先で昨年5月に出会いました。 見せて頂こうと門戸を叩いてお願いしたのですが、その対応たるや常軌を逸するレベルの感じの悪さ。当時は二度とお店に近づくことも無いだろうと思っていたのですが、ことあるごとにこのカップのことを思い出すので、思い切って再訪したところ、相変わらず軒先に粗雑に置かれていたので即購入し、超濃厚漂白剤でお清めして今日に至ります。 本題に戻ります。 本品のソーサー

ロイヤルコペンハーゲンの裏印の数字について

カップの裏側です。 記されている数字についてご説明します。

¥300

1842-83年のレジストリマークについて

画像のマーク。アンティークカップがお好きな方ならご覧になったことがあるかと思います。 こちらはかつてイギリスで使用されていたレジストリマークです。様々な情報が盛り込まれているのですが解読が難しく、1842-83年の期間でしか使用されませんでした。現代では商標が登録済みであることを示している「Ⓡ」がそれに近いです。 MARK"A"パターンは1842-67年、"B"パターンは1868-83年に使用されました。 下記に示したTABLE 1〜4を当て嵌めることで意匠登録がなされ

まずは軽率にアンティークカップを購入しましょう

アンティークカップと聞くと、多くの方々はどのような印象を持たれるのでしょうか。 さぞかし高価で敷居が高い代物かと思われているかも知れません。しかし、フリマサイトやネットオークションの台頭により、品によってはかなり取引価格が下がったものもあり、数千円台でも手に入る魅力的なカップもたくさんあります。 そして、棚に飾りたい!、実用してみたい!など、目的によっても選ぶ際のポイントが変わってきます。 飾ることが目的でしたら、少々のカケやシミなどが目立たない部分にあったとしても、あ

アンティークカップとヴィンテージカップ

アンティークという言葉とヴィンテージという言葉。 大まかなニュアンスとしては、アンティークはとても古い。ヴィンテージはまぁまぁ古いといった感じだと捉えていますが、カップはもちろん、家具や時計、ジュエリーなどいろいろな業界で使用されていて、業界ごとに少しずつ違いがあるようです。 ヴィンテージという言葉はもともとワインの製造年代を意味する言葉です。カップについてもある程度年代を経ていて、なおかつ質が良く、鑑賞に値するものに対して使用されています。 25年以上であったり50年

ミントンのバックスタンプについて

言わずと知れた銘窯、ミントン。 1793年にイギリス、ストーク・オン・トレントに設立されます。

¥300

ドルトンのバックスタンプについて

ドルトンは1815年にイギリス・ロンドンのランベスにて設立されます。 初期はストーンウェアを製造する小さな窯でした。

¥300