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挑戦するすべての人の背中を押すビール「TRYPEAKS」のチャレンジはまさに熱狂顧客戦略だった

知り合いに最近事業を立ち上げて注目されている山口公大くん(@k0ta)という人がいます。

実は同じ大学のサークルの後輩でもあり、僕が大学4年生のころ彼は大学1年生でした。
彼が今年立ち上げた事業がとても面白くて、たぶん10年ぶりぐらいに会って話を聞いたんですけど、まさに「ファンが熱狂するマーケティング」をやっていて、とても魅力を感じました。今日は彼のチャレンジについて紹介したいと思います。

挑戦する挑戦するすべての人の背中を押すビール『TRYPEAKS』

彼が売っているのは「挑戦するすべての人の背中を押すビール」というもの。
実はMakuakeでビールカテゴリ史上最高額の寄付を集めていて、最近数多く立ち上がっているクラフトビールの中でも注目の存在といえます。山口くんがなぜこの『TRYPEAKS』を立ち上げるに至ったか。それはとあるきっかけ(ここでははしょります)でキリマンジャロへの登頂にチャレンジしたときだそう。

キリマンジャロへの登頂を目の前にしたとき、酸素がなくなって苦しいなか、彼のなかで最後に残っていた感情は「もっと先にいけるかな」という好奇心でした。登頂目前という体力的にも精神的にも極限の環境のなかで、自分が本当に望んでいるものは何かということに気づき、自分が本当にやりたいことは「自分の人生に向かって一歩を踏み出す人の背中を押すことだ」ということに気付いたそうです。

無事キリマンジャロへの登頂を果たし、下山した後に麓で受け取ったのが帰還者にふるまわれるキリマンジャロビールだったことがきっかけで、「一歩を踏み出す、すべての人の背中を押すビール」という事業コンセプト立てることに。

Makuakeで事業計画書を全公開

『TRYPEAKS』では、「挑戦する人」にターゲットを絞り、そのひとたちに寄り添って応援していくということが事業コンセプトです。その意思がもっともよく表れているのが、クラウドファンディングの出資者へのリターンとして用意された「事業立ち上げ中の資料をリアルタイムでのぞき見」できるというものと、「プロジェクトオーナーへの参加」というものです。

酒税法が変わったことにより、多くのプレイヤーが参入することが予想されるなか、0から挑戦する自身の事業計画をあえてオープンにすることで、これからビール業界に参入する人の挑戦を応援することがそのねらいといいます。
実際にMakuakeのページにはこのように書かれています。

ビール事業経験のないIT事業家が、0からクラフトビールを作って行くに当たってやってきたこと、考えていること、使っている資料を共有いたします。事業の臨場感を一緒に感じてみたい方、自分で事業を作りたい・これからクラフトビールの事業を立ち上げたい方のお役に立てばと思います

また、資金を集めると同時に仲間も集めてプロジェクトオーナーにしてしまうという点が魅力的です。プロジェクトに興味をもってくれた人と直接面会し、参画を希望する人が得意とする領域でプロジェクトに参加をしてもらうというしくみをつくっています。ほとんどのプロジェクトオーナーが別で本業をもち、本業とパラレルでTRYPEAKSに参画をしている人が多いとのこと。
これはまさに熱狂的なファンを共犯者にするというやり方で、出資者が提供できる価値を持ち寄り、そのままプロジェクトにコミットしていくという形式をとっています。

熱狂的な支援者を味方にしてクラウドファンディングに成功

TRYPEAKSがMakuakeでビールカテゴリ史上最高額を調達した背景には、彼らの熱狂的なファンの存在がありました。クラウドファンディングは広く多くの人から少額の資金を募るしくみだと思われがちですが、そうではなく、まずは深く理解し、共感してくれる熱狂的な少数のファンを味方にすることが不可欠。

まず自分に近い仲間にビジョンを語り、「必ず応援する」と言ってくれる状態を地道につくっていったそうです。そうすることで、結果的にクラウドファンディングが開始されたら熱狂的な支援者が周囲に魅力を伝えてくれるということが起こり、支援者のまわりにいた方々にも共感してもらうことができたそうです。そして仲間の出資を知ったまわりの知りあいが興味を持ってくれたら、興味を持ってくれた人に山口くんが直接ビジョンを語りに行く。それを繰り返すことで資金が集まるペースが速くなり、MakuakeのWebサイト上でも表示されやすいようになる。という好循環で目標の500%の出資を実現しました。

<TRYPEAKSがMakuakeで成功した要因>
1.深く共感し、絶対に応援してくれる少数の仲間を募る
2.仲間経由の共感者に対して発起人が自らビジョンを伝える
3.初速の伸びによりMakuakeのサイト上に露出し、新たな支援者にリーチ

ここで重要なのは、まず初速で熱狂的な支援者が密度の濃い推奨をしてくれるということです。はじめの支援者は山口くんとより近しい人たちが多いでしょうし、彼の人柄や魅力についても知っている人が多い。その人たちがTRYPEAKSの魅力を伝えるときのコメントはきっと中身の濃いものになっているはずです。

また、仲間経由で知ってくれた人に山口くんが自らビジョンを語りに行くというのも大きなポイントといえます。クチコミで魅力が広がるというのはよく言われる文句ですが、クチコミが経由するほどそこで語られる魅力の濃度は薄くなります。伝わる魅力の濃度が薄くなればなるほど人は動きづらくなります。そこでプロジェクトオーナーが自ら興味を持ってくれた人のところへ足を運んで、自分でビジョンを語っていくことで、新たなファンをつくることに成功しています。

ミッションと一環した事業内容

TRYPEAKSはミッションに共感してもらうだけでなく、事業そのものもミッションを忠実に再現したものになっています。まさにサイモン・シネックの「WHY」からはじめていて、その姿はクラフトビール業界のAppleのよう。

あえてスーパーやコンビニでは売らない

挑戦するすべての人の背中を押すというコンセプトから、TRYPEAKSはサラリーマンが仕事帰りにコンビニで買って飲むビールにはなりたくない。そういった思いから、TRYPEAKSはコワーキングスペースやベンチャー企業など、挑戦をする人たちが集まる場にしか置かれていません。仮にこれからTRYPEAKSが大きなブランドになったとしてもミッションが変わらない限り、販売チャネルを変えることはないと思います。売らない場所を決めることによって、よりミッションを際立たせています。

メッセージタグのついたデザイン

TRYPEAKSはラベルではなくビール瓶にタグが使われています。これは挑戦する人に向けたメッセージをそこに書き込んで渡すことができるようになっているためです。コンビニやスーパーで売られているビールであればそんなことしないと思いますが、コワーキングスペースやベンチャー企業に置いてあれば、もしかしたら入居者どうし、社員どうしでメッセージをやりとりすることが起こりうるかもしれません。

ビールの味が常に変化する

ビールの味も常に一定ではなく、3ヶ月に1度味を変化させる予定だそうです。挑戦者は常に変化を好みます。そして、ビールには楽曲がついていて、味が変化するごとに楽曲が追加されるようになっているそうです。味だけでなく、それを楽しむ場を大切にしたいという思いがこめられています。

なにからなにまでミッションと事業内容が一貫してるところがTRYPEAKSの魅力的なところ。ファンにとってブランドの指針がハッキリしていることはファンと価値観を擦り合わせるうえでとても大切な姿勢といえます。

最近、後輩から学ばせてもらうことが多くなったなーと思っていたときに出会った素敵な後輩のひとりです。
これからもTRYPEAKSの事業を応援していきたいと思います。

TRYPEAKSのビールはここから買えますのでよかったらどうぞ!

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