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「安定したいので事務職で正社員の仕事が良い」について考える

今日の記事は、「安定したいので事務職の正社員求人を探している」「今は派遣社員や契約社員だけど正社員で働きたい」「何を優先して就職活動をしようか迷っている」という方に読んでいただきたいです。

僕は、13年の人材サービス業界でのキャリアの半分以上を事務職の派遣サービスや正社員紹介サービスの領域で過ごしてきました。

事務系の職種希望の派遣登録スタッフの転職支援や就業支援の中で良く聞くフレーズの中に、「安定したいので事務職で正社員の仕事を探しています」というものがあります。

実はこのフレーズはなかなか矛盾が渋滞している言葉でして、僕が相談を受けた時も「安定、事務職、正社員のどれが一番優先ですか?」とか「正社員ってどういうものをイメージしてますか?」なんて、ちょっとめんどくさい人認定されそうな問答をしがちです。

今一度、その渋滞っぷりを整理して言語化しておこうと思います。


事務職は安定しているのか?

そもそも、事務職は安定しているのでしょうか?

確かに、事務職は体力的には製造現場での仕事や営業職よりは負担が少ないかもしれません。

また、女性にとっては産休や育休も取りやすいイメージもあるでしょうし、接客業などと比較すれば土日休みも多く、寿退社も少ないことも事実だと思います。

しかし、30代のあなたが、70歳まで働くおよそ40年の間、ずっと安定していると言えるでしょうか。

ありきたりで、よく言われる話ですが、ペーパーレス化・IT化・AI化が進んでいます。

そうなると、ありとあらゆる仕事が自動化できるようになっていきますし、その証拠として、官公庁の事務仕事の求人は派遣サービスでもかなり多くの割合を占めるのですが、それは紙での仕事が残っていることが理由だったりします。

そんな官公庁すら、河野大臣のリーダーシップでハンコや紙が少なくなっていくかも・・・いずれにしても、効率化が図られるとともに需要が減っていくという構造を事務職は抱えています。

野村総合研究所の報告にもありますが、単純作業の要素や、データや数字を用いる仕事である事務職は減っていく運命と言わざるを得ません。

その上、事務職を希望する方や経験をしてきている方は年齢やキャリア、能力に関わらず多くの方がいます。

減っていくのに希望者は多い・・・僕は事務職は、安定しているとは言い難いと考えていますし、少なくとも40年安定して続けるためには、ものすごい努力とどの企業でも必要とされるような高いスキルが必要になると言えます。(もはやITの仕事ですよね・・・)


事務職で正社員・・・?

正社員とは、ウィキペディアによると、↓の通りです。

正社員は、一般的には期間の定めのない労働契約で会社企業に雇われ、その企業の就業規則で定められた所定労働時間の上限まで労働する者の事をいう。正規社員ともいわれる。法律で明確に定義された概念ではない。

↑ウィキペディアの後半にも「名ばかり正社員」というものも出てきますが、この定義で言うと、

退職金がなくても、賞与がなくても、最低賃金でも、社会保険なくても、期間の定めだけなければ正社員ということで良いでしょうか。

違いますよね?

僕は、正社員=無限定社員と捉えています。

地域を限定して、職種を限定して定年まで雇用する形態を限定正社員と呼び、だんだんと増えてきている働き方になって来ていますが、これのまさに限定がないものです。

もう少し踏み込むと、職種、賃金、働く時間、勤務場所などは会社が決める代わりに、比較的高い賃金水準で、賞与や退職金があるか、なくてもそれに見合う待遇で定年まで雇用契約が保障される仕組みと考えています。

ご相談いただく方も、雇用契約が無期限であればOKというわけではなくて、ある程度以上の安定と待遇を求めていると想像できます。

ここで、気が付かれる方も多いと思いますが、実はいわゆる正社員というのは大企業にしか存在しません。(ちょっと言い過ぎ)

限定がない代わりに雇用が保障されるというのは、例えばある事業所がなくなったら、ある事業部がなくなっても、人事異動によって次の仕事が確保されるということであり、一般的な中小企業ではある事業がなくなったら解体です。仕事もなくなります。

もしくは、僕が昔勤めていた30人くらいの一流ブラック企業なら、そもそも雇用契約は定年までありますが、社長に嫌われたらとてもじゃないけど勤め上げることはできません

何を優先させるかを考えて、仕事を選ぶべきという話で、決して中小企業やスタートアップ企業がダメと言っているのではありません。

(むしろ僕は大企業で働く方よりスタートアップ企業で働く方のほうがイキイキしていてかっこいいイメージを持っています。)

ただ、いわゆる安定した正社員というのはその定義がゆえに、一般的な大企業にしか存在していないということは意識しておいた方がいいと思います。

また、その安定と待遇を求めるにあたって、人事権を企業が持つ無限定スタイルのために、事務職を指定することは原則としてできません。

また、さきほどの事務職がなくなっていく問題とも隣接した内容ですが、事務職が続いていくことを保証しているのではなく、事務職がなくなったとしてもよほどの経営難でない限りは他の仕事が用意される、場合によっては事務職がなくならなくても他の仕事への異動があり得るがゆえに安定が保証されているということでもあります。

つまり、事務職で正社員という言葉はそれだけですでに矛盾や無理を抱えている表現なのです。

かなり単純化して説明してしまっていますが、このことも理解したうえで自分が何を優先して、これから何をしていきたいのかも含めて、希望の職種や働き方を考えていくのが良いと思っています。


正社員は安定しているのか?

これは非常によく言われることですが、企業の寿命は30年無いのです。

↑の記事では2018年で企業の寿命は23.9年とのこと。

これについては当然、設立後すぐに倒産する企業も含まれますしそのまま30年も同じ会社で雇用が続くわけがないとまで言い切ってしまうのは短絡的かと思います。

ただ、企業の平均寿命が30年もないという事実に加えて、超大手電機メーカーの凋落や、大手ゼネコンのリストラなど少し前でも予測できなかったことの起こる、変化のスピードの速い時代であり、さらには、終身雇用の難しさや企業のメリットのなさに経団連会長や自動車メーカートップが言及している今の時代に、正社員が安定しているという認識そのものがかなり怪しいものと捉えるべきではないのかなと考えられます。

ただ単に定年まで勤められる会社を見つけるだけでも難しい上に、その中でも安定して雇用し続けてもらえる会社やポジションを狙って就職することなんてはたしてできるのでしょうか。


非正規雇用と呼ばれる働き方

僕は働く人の選択肢を増やすことができたり、色々な価値観が認められるべきという意味で派遣などの非正規雇用と呼ばれる働き方も推奨しているので、ポジショントーク感は否めませんが、ここで非正規雇用の現状についても触れておきます。

働き方改革のなかの、「同一労働同一賃金」というものを皆さんは耳にしたことがありますでしょうか。

同一労働同一賃金とは、非正規雇用と正規雇用の不合理な格差を解消するという概念です。そして、そのための法律として、「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」において2020年4月から(中小企業は2021年4月から)企業には非正規雇用と正規雇用の不合理な格差を解消することが義務付けられています。

派遣法だけでも非常に複雑ですし、必ずしも同じ仕事を今していれば同じ賃金とも限らない部分、賃金だけではない待遇に言及される部分などもあり、その解説はとっても時間をかけないと記事にまとめられる自信がないのですが、2つ覚えておいてほしいことがあります。

①大枠の社会の流れは正規雇用の非正規雇用の不合理な待遇差をなくそうとしている=正社員が恵まれているという状況の解消を目指している

②待遇差を解消しようとすると給与の原資に限界がある以上、正規雇用の待遇が何らかの形で下がり、非正規雇用の待遇が上がる可能性が高い

あなたが仕事に求めるものは安定でしょうか。それとも事務職という職種?はたまた正社員という立場でしょうか。

改めて考えるとそれ以外のことを優先したり大事にしたい方もいるかもしれません。

どこでも通用するスキルを身に着けたかったり、無限定に会社の都合を受け入れる雇用形態ではなく大事にしたいものが他にあったりする方は、少し視野を広げて、非正規雇用と呼ばれる働き方も視野に入れるのも良いかもしれません。

もちろん雇用されるだけではなく、独立開業だって選択肢ですよね。



最後に

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僕が良く事務系希望の求職者の方にお話しする内容をまとめてみました。

改めて文字にしてみると、やっぱりちょっとウザいな・・・と思います。

これを求められている時ならまだしも、求められていないときにも話し出すのが僕の悪い癖であり、同時に売りでもありますのでwもう少しコンパクトに説明できるようにトレーニングしていきたいです。

ただ、一つ間違いなく言えることは、

「安定して働くにはどの企業でも通用する市場価値の高いスキルを身につけなければいけない」

ということだと思います。

ちなみに、人間の機微を感じたり、AIにできない情報収集をできるような営業は100年だって必要な仕事ではないかと僕は考えているのですが、今度はそのことについても書いていきたいなと思っています。

では、また明日!



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