見出し画像

社会は外向型の人たちを求めている!?

これから、「内向型人間のすごい力」から得られた知見を、複数の記事に分けて詳しくご紹介します。

シリーズの第1回目では、「内向型が直面する社会環境」及びその時代的背景に焦点を当てて解説します。

なぜ多くの内向型の人々が生きづらさを感じるのでしょうか?

これは、社会が求める人物像と内向型の特徴の間にギャップがあるからではないでしょうか。

この回では、「内向型人間のすごい力」を参考に、この問題を深掘りしていきます。

前の記事はこちら↓


求められている理想像

一つ、重大なことを自覚しましょう。

社会は、評価しやすく、親しみやすい特徴を持つ人物を求めています

たとえば、目立つ人や面白い人、第一印象が良い(外見が魅力的な)人、エネルギッシュで、当意即妙なやりとりができる人、そして自信があり説得力のある話し方ができる人が該当します。

これらは、しばしば外向型の人々の特性として挙げられます。

一方で、内向型の気質が強い人々は、これらの特徴を発揮することに苦手意識を持つことがあります。

いかにして外向型は社会から求められるようになったのか

外向型の人間が求められるようになったのは背景にには以下の要因が挙げられます。

  1. 農業社会から工業社会への変遷

  2. 広告業界による「劣等感」の商業化

それぞれ詳しくみていきましょう。

1. 農業社会から工業社会への変遷

まず最初に、外向型の人々が社会から称賛されるようになった背景には、産業の変遷が大きく影響しています。具体的には、1900年代に農業中心の社会から工業社会へと移行したことが挙げられます。

農業が主な仕事だった時代、人々の交流は家族や近隣住民に限られ、その数は非常に少なかったです。これにより、長い時間をかけてじっくりと関係を築くことが可能でした。

しかし、産業化の進展に伴って、仕事の中心が工業へと移り、コミュニティの範囲が広がりました。そして、より多くの人々との関わりが必要とされ、短い時間の中で効果的に意思疎通を行う能力が求められるようになりました。

この変化の中で、他者からどう自己を提示するかという能力が重要視され、特に外向型の人々のこの能力が高く評価されるようになりました。

例えば、「内向型人間のすごい力」においては、「人を動かす」の著者であるデール・カネーギーの話が引用されています。農家出身のカネーギーは、自らの「伝える力」を鍛え、名声を得ました。そして、その能力を広めることで、社会的地位を不動のものにしました。

現代社会でも、「短い時間で相手に自分の思いを伝える」能力は、引き続き高く評価されています。

外向型の人々の特性は、このような状況において彼らがその能力を発揮するのに非常に適してます。その一方で、内向型の人々は、自らの特性を発揮するには、非向きな環境を強いられるようになりました。

2. 広告業界による「劣等感」の商業化

次に、外向型の人々が社会から特に求められるようになった一因として、広告業界の役割が考えられます。

産業の中心が変わるにつれ、求められる人材像も変化しました。この変化の中で、広告業界は外向型の特性を持つ人々を魅力的として推し進める一方で、異なる価値観を持つ人々を劣るかのように描くキャンペーンを数多く展開しました。

例えば、映画やテレビの広告では活発で自信に満ちた俳優が多く起用され、これらのメディアを通じて外向的であることの魅力が強調されました。同時に、化粧品やファッション関連の広告では、見た目を変えることでの自己改善を促すメッセージが頻繁に発信され、外見に対する社会的な期待値が高まりました。

これらの広告は、人々に「いかにして相手に魅力的に見えるか」という価値観を植え付けました。さらに、これに対照的な「寡黙」「思慮深い」「引っ込み思案」といった特徴は、しばしば否定的なニュアンスを含む言葉で表現され、社会的な劣等感を生み出す原因となりました。

専門家、そして、親たちまでも外向型を求めている

20世紀の産業の変遷は、社会が求める人材の理想像にも変化をもたらしました。

1920年代、子育ての専門家たちは、変化する環境に適応できないとされる個性、特に内気な子どもたちを問題視し始めました。

これらの専門家は、内気な子どもたちが将来、アルコール依存症や自殺などの深刻な問題に直面する可能性があると警告しました。しかし、これらの主張は、当時の研究や統計に基づくものではなく、一般的な偏見や誤解に基づいていた可能性があります。

それにもかかわらず、専門家たちの助言に基づき、多くの親と教育機関は、子どもたちをより社交的な人間に育て上げることに注力しました。

1940年代後半には、この傾向はさらに強まり、ハーバード大学のポール・バック学長が公に、「繊細で神経質」や「頭でっかちな」学生よりも「健康的で外向的な」学生を優先して入学させるべきだと明言しました(引用:『内向型人間のすごい力』)。

この発言は、教育機関における外向型人材の優遇がどの程度まで進んだかを示す鮮明な出来事です。

考察

現代社会では、多様性を重視する一方で、変わらぬ理想像に私たちは直面しています。この状況では、内向型の私たち自身が適した環境を見つけるか、あるいは自ら作り出す必要があると感じます。

例えば、「当意即妙なやりとり」に目を向けると、日常やテレビでの会話では、迅速な対応が求められ、「頭の回転が早い」と評価されることが一般的です。しかし、このような状況では、内向型の私たちは発言する前に思考を整理したいと考えがちです。その結果、速いペースの会話に追いつくのが難しく、戸惑いを感じることがあります。

これはほんの一例ですが、外向型の特性が好まれ、評価されやすい社会環境が依然として存在します。

それでも、多様な個性が認められ、かつては見過ごされがちだった特性が評価され始めています。社会全体の視野が広がり、多様性の受容が進んでいる現状は確かです。

にもかかわらず、現行のシステムは依然として外向型の人々が活動しやすいように設計されています。これを変えるには時間がかかるでしょう。

内向型の私たちが持つ、深い思考、集中力、洞察力、そして静かながらも強い影響力などの独自の強みを最大限に発揮するためには、現在の社会システムが必ずしも適していないことを認識することが重要です。

私たち内向型が自身の強みを活かし、充実した生活を送るためには、自ら適切な環境を求めるか、または創造することが必要です。

まとめ

「内向型が直面する社会環境」とその時代的背景に焦点を当てて解説しました。

今回のポイントをまとめると以下の通りです。

  • 外向型が求められる背景には産業の移り変わりが大きく影響している

  • 商業、学問、そして家庭がその流れを助長した。

  • 現代にもその名残は根強く残っている

内向型の人々が直面する環境は、まだ完全には理解されておらず、サポートされているとは言い難い状況です。

しかし、今回共有した内容が、現在の状況を理解し、どのように対応すればよいかを考える第一歩となれば幸いです。


私のコンテンツでは、内向型の人々に関する話題を引き続き取り上げていきます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

よろしければ別の記事もご覧ください。前の記事はこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?