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中学校英語の帯学習について

私は中学校で英語教師をしています。
知り合いの先生から、「帯学習ってどんなことしてますか?」という質問をいただきましたので、今回は中学校での帯学習について私の実践を紹介いたします。

帯学習って?

帯学習とは、授業の冒頭に5〜10分程度行う活動です。

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歌や単語のインプット、チャットなど毎時間同じような活動をするのですが、授業を並べるとその部分が帯状になって見えるので、帯学習といいます。
語彙を増やす活動をしたり、コミュニケーション活動をしたりと、様々です。

コミュニケーション力を育てる帯学習

コミュニケーション活動に重点を置いた帯学習の流れです。導入時期はあくまでも目安です。

・ QA100(QA→QAA)  1年2学期〜3学期
・ QA Bomb(QAA)  新出文法導入時
・ こうかん日記  1年3学期〜
・ What am I?→QA  2年4月
・ Show and Tell→QA  2年5月
・ Who am I? →QA  2年6、7月
・ チャット→1分間スピーチ→QA  2年8月〜
・ 簡易ディベート→5分間ライティング 2年11月〜

中学1年生

鹿児島の園元恭子先生に教えていただいたQA100は、英語でやりとりする力の育成には持ってこいの活動です。クラスサイズが大きい時はやり方を工夫しなければなりませんが、前任校では1年生で現在完了の質問くらいまではやってました。

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QA Bombとは、二人1組で消しゴムを一つ持ち、相手に質問したら消しゴムを渡すゲームです。会話を継続させる力をつけます。QAAとは、質問されたらその答えにプラス1文を加えるものです。BGMは「Mission Impossible」や「踊る大捜査線」がおすすめです。

2、3年生の帯学習

2年生は過去形や未来を表す表現、接続詞(if, when, because, etc.)など使える表現が増えてきます。
過去形の定着には、畑中豊先生考案の「こうかん日記」がおすすめです。(「こうかん」には「交換」だけでなく「好感」の意味も込められています)
家庭学習で3〜5文の英文日記を書いてきて、4人グループで回し読みします。
読んだらその内容について、質問やコメントを色ペンで書きます。(自分の名前も書かせると後で分かりやすいです)
生徒は静かに、ひたすら読んだりコメント書いたりしてますが、頭の中はアクティブです。

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まれに、毎日同じことを書いてくる男子(こういうのはなぜか男子に多いのです)がいますが、それはそれでほっておきます。教師が注意しても変わりません。しかし、同じグループの友達(特に女子)に注意されると態度を改めます。笑
こういうのを、ピアプレッシャーといいます。

また、チャット簡易ディベートもいいです。
チャットのトピックとしては、

What did you do at(on) the weekend? 
 What food do you like?
What are you going to do during the summer vacation?
What would you do if you had one week holiday?
(新学習指導要領では仮定法過去が入ってくるので、こういった「もし〜だったら」系はやりやすいですね。)
When do you feel happy/excited?
My favorite TV program
My favorite place
My favorite season

などがあります。

簡易ディベートは、あるトピックに対して賛成か反対か意見を述べるペア活動です。単純に、ジャンケンで勝ったら賛成、負けたら反対とサイドを決めています。

構成はOREO(またはPREP)で

ディベートに入る前には、話の構成を教えておくと良いです。

英語で話をするときに流れです。
「テンプレか〜」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは馬鹿にできません。話す流れを知ってるということは、聞いていてもその流れで聞けばいいので、理解しやすいということ。
これはOREOと言われています。

Opinion(意見、主張)
Reason(理由)
Example(例え)
Opinion(再主張)

また、生徒には以下のフレーズをプリントで渡しておきます。

I think (that) ~.  (私は〜だと思う。)
There are (   )reasons. (理由は(  )つあります。)
First, ….  (はじめに〜。)
For example, …. (例えば〜。)
Second, ….  (次に〜。)
For instance, ….  (例えば〜。)
Because of all the reasons above(So), I think …. 
(以上の理由から、私は〜だと思います)

ディベートのトピックは

School lunch is better than box lunch.
Summer is better than winter.
We all have to study English.
We all have to go to universities.
Love is more important than money.
Living in the countryside is better than living in a city.

などです。文法的に見ても、中学2年生から十分できます。
逆に、コンテキストからわかりやすい文法ですので、未習事項でもやってしまえば理解も定着も早いと思います。

1分間スピーチ

簡易ディベートとも関連しますが、1分間でどれくらい話せるかを数値的に測定することで、生徒の意識を量に向けることができます。
話す内容(質)はもちろん大切です。しかし、質を上げるには量を稼がないといけません。量質転化の法則です。また、タイムを1分間に制限することで、処理速度が上がります。英語が話せても、ある程度の速さで英語が出てこないと、コミュニケーションが滞ってしまいます。

1分間スピーチでは、広島の西先生が考案した「ワードカウンターシート」を使用しています。

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このシートを使うと、アイコンタクトがしづらくなるので、野鳥の会などが使用するハンドカウンターを使っている先生方もいらっしゃいます。

私は、中学3年生は70語以上話せるようにしたいと思っています。
ここ数年の取り組みで紆余曲折あり、この数字に落ち着きました。

語彙を定着させる帯活動

語彙の増強には、以前はビンゴを活用していました。やらなくなって10年くらい経ちますが、ビンゴは生徒に人気の高い活動でした。

現在は単語シートを用いたペア活動や単語テスト(これについては賛否両論あるかと思いますが)を行っています。

ペアチェック(40 Seconds Challenge)

単元に出てくる単語の中で覚えさせたいものを25個選び、Word Sheetを作成します。

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日本語が左、英語が右となっていますが、これは靜哲人先生の影響を受けています。
やり方は、

1 ペアでジャンケンをする
2 勝った方は英語を隠し、日本語を見て英語を言う(40秒)
3 負けた方はチェックボックスにチェックする
4 交代する

チェックボックスは4つありますので、4時間連続で行います。生徒には、

「昨日の自分に勝とう!」

と常に言っています。これは次に紹介する単語テストでも同じです。
他の人と点数を競うのではなく、少しでも以前よりできるようになったら成長していると考えたいですよね。

これはすべてのテストに共通することです。そうでなければほとんどの生徒が劣等感を抱くことになります。自尊感情は高まりません。

25問テスト

これは岐阜大の瀧沢広人先生に教えていただいたものです。
ペアチェックで覚えた単語をテストします。ペアチェックのように、テストは4回あり、3回目までは練習、4回目が本番テストで成績を評価に入れます。

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テストは

2分練習→2分テスト→自己採点

という流れです。
2分練習では、プリントの裏面を利用して単語練習をします。学校で練習の時間を確保するのがいいと思っています。

「25問を2分でやるのはきつい!!」
と生徒はいいますが、そのご意見はさらっと流します。笑

継続していると、2分で25問解けるようになってくるからです。スピーチのところでも書いたように、処理速度が上がります。授業で大切なのはタイムマネジメント。時間が余るよりは短い方がチャレンジングだし、それだけで楽しさが生まれます。

面白いのは、これを導入して3ヶ月くらいしてからクラス平均が上がってくること。平均が80〜90点になります。クラスの半数は100点を取るようになります。勉強の仕方を身につけるからでしょうか。先輩の先生からは、

英語力は「文法」「語彙」「音声」

と言われましたが、学習者にとってみれば手っ取り早く英語の力がついたと思えるのは語彙です。語彙力があれば、その他の活動にも自信を持って取り組めます。

ペアチェックや25問テストの詳しいやり方については、以下の本で解説していますので、お読みください

帯学習を有機的に(コミュ活動編)

以上、帯学習の活動をいくつか紹介しましたが、それぞれを単発にやるよりは、有機的に組み合わせる(話したことを書く、書いたものについて話す、何度も触れるなど)ことで、効果的に力がつきます。

以下は私が発表でよく使うスライドです。
帯学習でコミュニケーション力をつけるコンビネーションです。

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チャットやディベートは、同じトピックを1週間使います。
次々とトピックを変えてしまうと、苦手な生徒はやる気をなくしてしまいます。

Day1では準備なしでチャットやディベートをするわけですが、これはいわゆる「無茶振り」です。生徒はうまく話せず脳内カオスの状態で、なんとか自分の知っている語句を使って表現しようともがき苦しみます。
でも、これが大事なんですね。

「無茶振り」が人を成長させるとは、茂木健一郎さんが言っていました。

英語が苦手な生徒はどうするかですが、私はスピーキングの活動は「出川イングリッシュ」で良いと伝えていますので、英語日本語ごちゃ混ぜのやりとりになってます。
それよりもコミュニケーションする上で大事なことは、沈黙を続けないこと。日本語でも身振り手振り混じりでも良いので、とにかく話してみることが大切です。
そして1週間同じトピックでやるので、最期には英語で言えることが増えてきます。

それぞれの帯学習の終わりには「文法に目を向ける」と書いてあります。
活動をしていて「これ英語でなんて言うんだろうな〜」と言う表現を、私やALTの先生が板書し、クラス全体でシェアします。
そうすると、次の回でその表現を使うことができるわけです。これはTask-Based Language Teaching(タスク中心教授法)の一つです。

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帯学習を有機的に(語彙活動編)

40 Seconds Challengeや25問テストなどの語彙活動も、一度にやるわけではありません。これらの構成についても、以前発表で使用したプレゼンを用いて紹介します。

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下の図はエビングハウスの忘却曲線です。
学習してもそのままにしていては忘れるだけですが、その後何回か復習の機会を持つことで定着は高まります。
一度に5問ずつの小テストを毎時間やるよりも、一度により多くの単語を与え、ペアチェックや25問テストで何度も復習する方が、理にかなっています。

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間違えたものだけでなく、全て再テストする効果については、池谷裕二先生がおっしゃっています。

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この件については、内田樹さんがブログで書いておられますので、そちらもご覧ください。

最後に

帯学習はスポーツで言うと基礎練習に当たります。基礎練習は大事ですし、毎日コツコツやって力をつけていく必要があります。
しかし授業全体が基礎練習ばかりでは、授業で一体何を学んでいるのか分からなくなりますので、あまり長くならないように気をつけましょう。(と言っても、20分くらいやってる時もありますが、、、笑)

研修やセミナーなどにいくと、力がつきそうな、楽しそうな活動をたくさん学びます。そして自分のクラスですぐに使いたくなります。まずやってみることは悪くないです。しかし、生徒にどんな力をつけたいのかよく考えて取捨選択し、有機的に組み合わせていきたいものです。

おまけ(英語の歌)

英語の歌もずっと歌ってますね。
以前の定番はBackstreet Boysの「I want it that way」やAerosmithの「I don't want to miss a thing」。
ここ数年はOne DirectionやTaylor Swiftなどを歌っておりましたが、ここ最近になって、J-Popのカヴァーが良いことに気づきました。(メロディーや内容を知っている歌はとっかかりやすいです)

邦楽をカヴァーしている方はたくさんおりますが、その中でもAnonymouzさんのカヴァーが秀逸です。


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