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株式投資型クラウドファンディング2019年振り返り(アメリカ)

こんにちは。マシューです。

前回の発信からしばらく時間が空いてしまい、気付けば2020年も既に3週間を過ぎようとしていました。

2019年、日本の株式投資型クラウドファンディング業界では業界内で事業譲渡、買収など業界再編の動きがありました。
海外においては2019年どのような状況だったのでしょうか。

今回は、アメリカにおける2019年の株式投資型クラウドファンディングの動向を振り返りたいと思います。

※記事の中では、1ドル=110円で換算しています。
※ソースが海外サイトであるため、内容に誤りがある可能性があります。間違い箇所などがあれば、ご指摘いただけると幸いです。

株式投資型クラウドファンディングの制度について

アメリカの株式投資型クラウドファンディングでは、JOBS(The Jumpstart Our Business Startups)法の中のクラウドファンディング条項と呼ばれる条項(Regulation D)に記載の要件に準拠する企業が、事業者として株式投資型クラウドファンディング事業を行うことができます。

詳細はこちらをご覧ください。

アメリカと日本の投資家に対する制度は上限金額が設定されている点は似ていますが、アメリカが一投資家の行う12ヶ月間の投資への上限に対して、日本は会社ごとに上限を設定しているので、似て非なるものと言えます。

2019年の実績

アメリカにおける2019年の株式投資型クラウドファンディングの実績は、
調達総額約116億円、調達企業数約735社となっています。

事業者別の調達総額、調達企業数は以下になります。

事業者別調達金額
事業者別調達企業数

アメリカの株式投資型クラウドファンディング市場には51社もの事業者が存在しており(2019年12月時点)、競争環境は激しくなっています。そのため、他社と異なる料金体系の採用や領域の特化など、独自戦略をとることで差別化を図る事業者も登場しています。

現時点で日本においては事業者の数は10社にも満たないですが、今後アメリカ同様に事業者の数が増加し、多様化していくかもしれません。

2020年以降の動向

株式投資型クラウドファンディングを後押しする制度変更がいくつか進む可能性があります。
1つ目は、認定投資家の定義変更です。現在のアメリカの制度では、以下のように個人の収入および純資産に応じた制度が設けられています。

・投資家の条件に応じて年間投資可能額を制限。
①年収/純資産額の両方が約1,100万円以上の場合
年収/純資産額のいずれか少ない方の10%が年間投資可能額となる。
※ただし、12ヶ月の期間中に約1,100万円を超える投資はできない。

②その他
年収/純資産額のいずれか少ない方の5%、もしくは約22万円の多い方が年間投資可能額となる。

2019年12月に証券取引委員会は、投資へのアクセスを増やすために、上記の認定投資家の定義修正を提案しました。修正案では、専門知識・経験・資格証明書に基づいて認定投資家として認められる新しいカテゴリを設けることで、より多くの投資家が投資に参加できるようになります。

2つ目は、クラウドファンディング条項の修正です。2019年10月にクラウドファンディング修正法案が下院で可決され、現在上院で審議中です。

現状の制度下では「12g 問題*」や「SPV問題*」が課題となっています。この課題を解決することで、より多くのベンチャー企業が資金を調達する現実的な手段として株式投資型クラウドファンディングを選択するようになると期待されています。

※12g問題:証券取引法のセクション12(g)に関連しており、非上場企業は、純資産が11億円を超え、さらに1種類の有価証券を2000人以上が保有するもしくは500人以上の非認定投資家が保有する場合、証券取引委員会に報告しなければならないルールになっています。

※SPV問題:SPVとは、Special Purpose Vehicle(特別目的会社)の略称です。SPVを通じての投資は、SPVを率いるリード投資家への相乗り投資が可能で、投資先ベンチャー企業の窓口を一本化できる等のメリットがあります。ただし、現在の制度ではSPVを使用することは許可されていません。

最後に

2019年のアメリカにおける株式投資型クラウドファンディングの実績を見てみると、日本以上に競争環境が激しく、その中でベンチャー企業に選ばれる事業者は徐々に明らかになっています。
さらにアメリカは制度変更の動きが早く、市場環境の整備にもしっかり着手できているように思われます。

もともと日本で金融商品取引法改正で制度化された株式投資型クラウドファンディングは、アメリカのJOBS法が参考にされました。
スタート時点で参考にするだけではなく、今後の市場拡大に向けた法整備においてもアメリカ含め海外の株式投資型クラウドファンディング制度を参考にできれば、より良い環境作りができるのではないかと思います。


今後も定期的に情報を発信していきます。


参照:
2019年アメリカの株式投資型クラウドファンディング実績
https://crowdwise.org/funding-portals/2019-equity-crowdfunding-stats-data/

アメリカの株式投資型クラウドファンディング事業者一覧
https://www.finra.org/about/funding-portals-we-regulate

認定投資家の定義修正
https://www.sec.gov/news/press-release/2019-265

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