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[ショートショート]

夜中になると必ず目が覚める。

しかもきまったじかんにだ。誰かに促されるでも支持されるわけでもなく自分の意思である事は間違いない。潜在意識に潜り込んでいるのかもしれない。

「今日も目が覚めてしまった。」

デジタル時計を見ると1:27を表示していた。ここ2週間毎回同じだ。そう思いながら重い頭を振りながら起き上がる。また目を閉じても寝れないのは最初の3日間で学んだ。もう同じことはしない。

いつものように適当な服に着替える。黒の上下のスウェット。これも2週間変わっていない。

いつものように玄関の扉を開けて外へでる。ひんやりとした寒さが心地よかった。

そのまま階段を降りて右に曲がる。これも変わらない。しばらく真っ直ぐ進むと自販機がある。接触が悪いのかわからないが夜になるとチカチカ光っている。別に昼間は普通なのに。

その自販機を通り過ぎたら左に曲がる。その先には小さな公園がある。3歳児くらいまでしか遊べなさそうな廃れた小さな公園だ。

そこのベンチに腰掛ける。そうするとどこからともなく野良猫が出てくる。どこかで見てたのか自分が座るまでは絶対に出てこない。

猫が足に頭を擦り出して甘えてきた。とても可愛い。ただ、野良猫だから毛が汚いのかふわふわとまではいかない。それでもこっちを見つめてくる目は綺麗だった。人間の汚い眼なんかより100倍マシだった。不意にポケットに手を突っ込むと何故か煮干しが入っている。もちろんいれた覚えはない。

煮干しを差し出すと鼻先で匂いを嗅ぐ。その動作も愛おしく感じる。そのあと頭から少しずつ食べていく。猫ってほんとに煮干し食べるんだーと何回目かもわからない気づきを繰り返す。

お腹が膨れたのか煮干しを食べ終わったら猫はいなくなってしまう。薄情なやつと心の中で思いながら明日も会えるかな〜なんて考えながら帰路に着く。

接触の悪い自販機を通り過ぎて階段を登って玄関を開けて家に入る。その時いつもと違うなとなんとなく思った。でも気のせいだろうと特に気にすることもなく布団に入る。そうするとすぐに深い眠りについた。

よく朝何かが頭の周りでウロウロしてる気配を感じた。もちろんペットなど飼っていない。

眠気が急に引いてパッと起き上がった。すると頭の上に居たのはあの公園の猫だった。

「いつも煮干しをくれてありがとう。」

ん?猫が喋るわけ…

「猫が喋るわけ無いとでも思ったか?」

一気に全身の感覚が研ぎ澄まされた。今なら皮膚に着いたホコリでさえ気がつけるくらいに逆だっていた。

「なんで喋れるの?てかどうやって入った?」

「あなたのうしろをついてきただけですよ。」

そう言って猫はこっちを見上げてきた。

訳が分からない。だって後ろつけられたら気づくでしょ普通。てかそっちじゃなくて

「なんで喋れてるの?」

「それは私は死んだ猫の霊だからだよ。」

「…一人称私なの?」

「…………そこじゃないでしょ!!!」

「いやもう霊って言われたらはいそうですかって受け入れるしかないじゃん。それに普通に言葉喋れる猫とかいてたまるかだし。それなら別に鍵閉めたとか気にしなくて済むじゃん。霊ならすり抜けられるでしょ?よかった〜戸締り忘れてたのかと思った。その後に一人称私でしょ。そっちの方が気になるって〜」

そこまで一気に捲し上げた。元々霊感は昔からあった。だからそこまで驚きもしなかった。ただ猫は初だったので少しだけ戸惑ってしまった。

「あなたって変人なのね。」

「よく言われる〜そんなつもりは無いんだけどね笑」

その後もたわいもない会話が続いた。その後猫ももう長くはないことを教えてもらった。とは言えもう死んではいるのだがそこは触れないようにした。

猫は最後に煮干しを食べたいと言った。なのでポケットに手を突っ込んだ。そしたら煮干が出てきた。それをいつものようにあげた。鼻先で匂いを嗅いで頭からそっと食べ始めた。猫ってほんとに煮干しを食べるんだねって聞いた。

「それは人間がそうゆう猫を求めているからね。私たちだって演技してるのよ。そうすれば狩りをしなくて済むからね。」

ちょっぴりイタズラっぽく笑って猫の姿は消えていった。

なんだったんだろーなーと思いながら布団に横になった。まだ朝だが今日からはゆっくり眠れるような気がした。そんな事を考えていたら夢の中に誘われた。

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